第15話 護衛依頼?

「私は、その先の街に住んでいるシェラード辺境伯が三男、ラインハルト・フェン・シェラードと申します。私達を助けて頂き、感謝したします」


マジか・・・、辺境伯のご子息かよ・・・しかも、三男??。

じゃ、じゃあ・・・この人がフィオナの婚約者なのか!?

俺達は、慌てて一歩下がって挨拶をする。


「あ、あの、私はアルと言います。近くの街で冒険者をしております。こちらは、私のパーティの仲間になります」


「初めまして、貴族様。あたしは、猫人族のエメルダと言います」


「お初にお目に掛かります。私は・・・ダークエルフのリオノーラと申します。」


今まで貴族になんて会ったこともないから、礼儀作法なんて当然分からない。なので、自分の出来る最も丁寧な物言いをしてみたが、大丈夫だっただろうか。


彼女達も無難に挨拶をこなせたと思うが・・・、リオノーラは流石に自分の種族を言うのが少しためらった。

しかし、彼らの対応は意外なもんであった。リオノーラを見ても、特におかしな感情を読み取ることは無かったのだ。流石、名家だなと感心してしまった。


「申し遅れました、私は護衛隊長のドゥカティと申します」


「そして私はシェラード家の執事、モトロウラと申します」


俺は、改めて頭を何度も下げた。

これだけ丁寧な対応をして貰ったことが殆ど無い為、対応に苦慮して困った。


「皆さん、畏まらないで下さい。私は貴族と言っても、三男ですからね。堅苦しいのは苦手なんです。自由が好きなもですから、ははは」


そう言って苦笑いするラインハルトは、想像していた貴族像とは少し違って、何というか接しやすいと感じた。歳も俺と大して変わらなそうなのに、この落ち着きといったら・・・


しかも、シェラード家と言えば幼馴染のフィオナの嫁ぎ先だが・・・でも、ラインハルト婚約者の人柄を見ると心配する事無さそうだな・・・。


やはり貴族に平民が嫁ぐとなると、色々問題が起きるって噂でも聞くが、彼ならフィオナを悲しませることは無いだろう・・・。


しかし、どうしてフィオナが見初められたのか分からない。確かに彼女は村一番の美少女と俺は思っている。


いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。目の前の貴族様に粗相のないようにしないと。

貰える物も貰らえない。ん?フィオナの嫁ぎ先なのに、金を貰うのかって?。

それはそれ、これはこれだ!。


「とにかく、ご無事で安心しました。しかし、護衛の方には・・・御気持ちお察しします・・・」


俺達は愁傷に頭を下げた。


「いえ、貴方達が来られなければ私達は全滅し、ラインハルト様は殺されるか人質に取られたのを考えると・・・。それを防げたのは、貴方達のお陰です。本当の感謝致します」


執事の老紳士がこちらに頭を下げる。

こちらは、そんな事されたことがないからおろおろしてしまう。


「あ、あの、頭をお上げください。ただ、私達は自分の為すべき事をしたまでです!」


「そ、そうですよー!。私達は決して助けた御礼が欲しくてしたわけじゃなく・・・あ、あわわ」


エメルダは、慌てたのか緊張の為か余計なことを言って、自分で焦っている・・・

俺は内心、あちゃ~・・・と頭を抱えたが、相手は気を悪くしたようなところは無さそうだ。


「ふふふふ、素直なお嬢さんだ」


ラインハルト様は、そう言って屈託の無い笑顔で微笑んだ。

俺はもう、ヒヤヒヤもんで苦笑いしか出来ないのに、当のエメルダは一緒になって、エヘヘと笑ってる。


お前、笑われてるんだぞ?、何がそんなに面白かったんだ・・・?謎である。

場が少し和やかになったところで、まず亡くなられた護衛の方達の遺体を、馬車の中にあった防寒用の毛布に包み、馬車の中に乗せた。


本来、馬車の中は貴族が過ごすために作られている為、普通は護衛とはいえ中入る事はまず無い。

が、ラインハルトは何の躊躇もなく護衛の遺体を中に乗せた。


御自分はどうされるのですか?と聞くと、私は歩いても良いし疲れたら御者台に乗ります、と事もなげに言った。俺はこの時点で、かなりこの人物を気に入っていた。


そして、殺した盗賊は近くの森に穴を掘って埋めた。

捕縛した盗賊は、街まで連れていく。勿論、後ろ手に縛って3人とも一本の紐で一列に繋いである。

盗賊は捕まえれば、ギルドから多少なりとも褒賞金が出るのだ。


「ところで、アル様達はこの先のデボネアまで行かれるのですか?」


「ええ、そうです。取り敢えず、依頼があるのでそちらに向かいます」


「では、もしご迷惑でなければ一緒に同行して頂けないでしょうか?」


「おお、そうですね!。もし貴方がたに同行して頂ければ、我々も助かるのですか・・・」


ラインハルトとドゥカティが頼み込んでくる。

まあ、実はそうなるのではないかと思っていたが、そんな事はおくびにも出さずに、


「え?、私達でよろしいのですか?。私達は、強いとはとても言えないパーティですよ?」


「何を言いますか!。先程の手際の良さ、なかなかの腕前と見ましたよ」


ドゥカティは、そう言って俺達3人を見た。

俺は照れながらも、どうするか二人に聞いてみた。


「あたしは、リーダーのアルさんが決めてくれれば良いと思います」


「うむ、私もそれで構わない。目的の街までそんなに時間もかからんしな」


そうか~、俺も護衛として同行するのはやぶさかではないが・・・大丈夫かな~

そんなことを考えていると、ラインハルトがを呟いた。


「無事届けて頂ければ、報酬をお出しできますが・・・」


「行きましょう!!。私達にお任せ下さい!!」


俺は、彼女達からジト目で見られたんだが、何でそんな目で見られなきゃいかんのだ?、解せぬ・・・。

仕方ないじゃんか、お金は大事なんだぞ・・・?


そして、俺達は早速移動を開始した。

こんな所でモタモタしてたら、夜には着けなくなるし他の盗賊に見つかったりでもしたら、また厄介だからだ。


俺はラインハルト様が心配で絶えず目配り気配りをしていたが、疲れると不平を言うわけでもなく、キチンと付いて来ている。

やっぱ、凄い人だわ、この人。ある意味、貴族らしくない貴族だ。


道中、無言で歩くのも逆に疲れるので、こんな時でしか貴族と話す事は無いと思ったので、色々聞いてみた。


「ラインハルト様は、どこからかのお帰りだったのでしょうか?」


「はい、私は父の使いで、密書を二つ向こうの街に届けた帰りだったのです。ただ、ここら辺は比較的安全が確保されていたはずなので、警護の者も最小限にしておいたのが裏目に出てしまい、襲われてしまいました」


「なるほど。で、そこに自分達が通りかかったと・・・」


「はい、その通りです。本当に助かりました。貴方達にお会いできたのは、きっと神の思し召しでしょう」


「そ、そうですね・・・私もそうだと思います・・・」


俺は無神論者なので神など信じてはいないが、ここは敢えて合わせておいた。

ここでそんな議論をする気もないし・・・




そうこうする内に、目的の街デボネアに近づいてきた。

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