第二章

第13話 彼女の魔法

ギルドから戻ってきた俺達は、一旦俺達の定宿に戻ってきた。

そして、俺の部屋に移りさっそく作戦会議を始めた。


「さて、ではこれからの俺達の行動に関して、準備や行動等を詰めていこう」


「そうね、準備はちゃんとしておいた方がいいわよね」


「我々の装備やアイテム類も確認だな。これから遭遇する敵は、今までの奴等より確実に強いはずだからな」


「だな。装備は俺も考えていた。手持ちの資金も多くはないから、装備は新しいのを買えるか分からないけど、十分な手入れは出来そうだよ」


「回復薬や解毒薬、逃走時の閃光玉、匂い玉とかも必要ですね」


「リオノーラには魔法を使ってもらうと思うから、魔力ポーションも必要か?」


「いや、私の魔法は精霊魔法なんだが、中級までしか使えないのでそんなに魔力消費は多くないのだ。だから、余程のことがない限り魔力切れを起こすことは無いはずだ」


今出てきた魔力とは、魔法使いが魔法を使う際に消費する精神力みたいなものだ。これを全部使いきると、魔力切れと言って死ぬことは無いが、気絶してしまい行動不能になる。その際に殺されてしまう事もあるので、やはり気を付けなければならない。


「それに、そこまで資金がないだろう?。回復薬よりも遥かに高価だからな。今の私に必要は無い」


「そっか・・・、だがくれぐれも気を付けてくれよ?。強敵が出たら、リオノーラだけが頼りだからな」


「分かった。肝に銘じておく」


「もぉ~~、アルさん!私にも期待をかけて下さいよ――――!。盗賊シーフの力も必要でしょ!?」


「分かっているよ、エメルダ。お前にも強くなってきたし、たくさん頼っちまうだろうけど、頑張ってくれよ~」


俺は、そう言って微笑みながらエメルダの猫耳をナデナデしてあげた。


「ふみゅ~~~~・・・うにゃん♡」


ホントは尻尾もモフりたいが、さすがにマズいだろうと自重した。だが、いつか思う存分モフモフしたいぞ!。


「そうだ、リオノーラ・・・時間がある時でいいが、その精霊魔法ってのを見せて貰っていいかな?」


「それは構わんが・・・精霊魔法を使う際は、契約している精霊が多い場所では威力が上がるから、下手なとこでは見せられんぞ」


「なるほどな・・・、中級じゃなくて初級でも良いから見せてくれないか?」


「なら、まだ時間があるから準備が終わったら、どこかで見せよう」


「助かる。どんなのが使えるかで、戦い方も変わってくるかもしれないしな」


俺達は必要なものをリストアップした後、買い物をするために街に出かけた。

道具屋に行ってポーション類を、武器屋では俺とエメルダの防具を補修してもらい、剣は研ぎ直してもらった。やはり、さすがに新しいのは買えなかったからだ・・・


一通り揃えると部屋に戻り荷物を置いて、俺達はそのまま街を出て少し歩いた先の森の中に入って行った。

あてどなく彷徨い歩いていると、少し開けたところを見つけた。


「ここで良いか・・・。ここなら大事になりそうもないし、ましてやそれほど強い威力の魔法でもないしな」


「おぉ、じゃ~いよいよリオノーラの魔法が見れるのか―――!」


「楽しみですねぇ~」


「おいおい、遊びじゃないんだぞ?。何かあってもいいように、用心だけはしておけよ」


「分かった分かった!。だから、はよはよ!」


「ったく・・・。では・・・」


そう言って彼女は、一歩前に出ると右手を胸元まで上げて詠唱を始めた。


「我と契約せし風の精霊シルフたちよ、今ここに集いその叡智を示せ・・・【風の嵐ウィンドストーム】」


すると、冷たい風がどこからともなく吹き寄せてきたと思ったら、あっという間に俺の身の丈の3倍程の竜巻になり一帯の草木などを巻き上げていく。


時間にして1分程だっただろうか、竜巻はリオノーラの手の動きに同調シンクロしながら動いていたが、徐々に小さくなっていき最後はつむじ風のようになって掻き消えた。


「おおおおおおおおおおおお!!!。すげ―――――――――!」


「・・・・・・・・・・・す、すごいです!」


「今のは風の精霊魔法で中級ではあるが、少し威力を落としてある。さすがに全力でやると魔力の消耗も大きいし疲れるから、何かあっても困るのでな」


俺もエメルダも称賛の声を上げた。

これが魔法か・・・、俺には絶対に使えないもの・・・。俺は驚きと共に、嫉妬さえ覚えた。


風魔法でこれなのだから、火魔法はどうなるんだろうか・・・

さすがにあれを見て、次は火の精霊魔法を見せてくれとは言えなかった。下手したら、山火事だ・・・と思ったら、


「ここは火の精霊が殆どいないからな、初級の火の精霊魔法さえ精霊使いでは出せるか分からん。自分の魔力だけで火属性魔法を使える魔術師ソーサラーとは違うのだ」


「いやいや、それでも凄いよ!。十分だ!!」


「ホントですよ!。魔法が使えない私達から見れば、神ですよ、神!」


「おおげさだな~。褒めても何も出ないぞ?」


といいつつも、リオノーラは少し耳まで赤くして照れている。それがまた、美しさを際立たせて思わず見惚れてしまった。


俺は初めて見た魔法に感動したが、これが使えれば今回の依頼がかなり楽になるんじゃないか?と考え始めた。

火の精霊魔法はまだ見てないが、それでも使えるシチュエーションをシミュレーションしてみた。


「い、行けるかも!」


「へっ?、何がですか~?」


「いや、今回の依頼にリオノーラの魔法が使えそうだって言ったんだよ」


「何か考えがあるのか?」


「いや、まだ構想中だけど使える場面はあるかもよ」


「そうか、なら使う場面はリーダーのアルが考えてくれ。私はその指示に従うよ」


「ああ、任せてくれ!」


さて、いつまでもこんな所にいるとモンスターや獣が出てくるかもしれない。ここで戦闘になって無駄にケガしたり、所持品を消耗しても勿体ないので俺達は宿屋に戻ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る