第22話 つった腰と内示 馬に蹴られてしまうかも

 未読スルー。

 まさか自分がするなんて思ってもみなかったし、リュウって結構マメなのね。

 びっくりして思わず既読付けちゃったから、何か返事しなきゃとは思ってる。

 でも、何事もなかったように「おはよう」スタンプで良いのか、既読付けるのが遅く成った理由を言った方が良いのか。

 いや、理由って言っても「気が付かなかった」だけなんだけど。

 あぁ、LINEの通知切るんじゃなかった!

 ふぅー。

 思わず大きな溜息をついてしまった。

 もしかして、これがSNS疲れってやつ!?

 スマホをバッグに戻そうとしたら、この間リュウに見せた修学旅行の写真がまだ入ったままだった。

 仁美ちゃん、SNS疲れ何て知らないんだろなぁ。

 いや、疲れてる場合じゃなかった。

 迷わず「おはよう」と吹き出しついた猫のスタンプを送った。



 昼休み。

 私の送ったスタンプに既読はついたけど、それっきり。

 何かちょっと寂しい。

 この前までLINEなんて姪っ子に無理やり登録させられて、姪っ子を通じての実家とのやり取りとか企業のアカウントフォローした程度だったのに。

 昨日の舞い上がった気分との落差に出るのはため息ばかり。

 遠隔操作のできるカメラで部屋の様子を見ると、シッポがベッドの上で伸び切って寝ていた。警戒心ゼロ。あ、寝返り。やっぱりシッポの可愛さは期待を裏切らない。

 朝から座りっぱなしで書類仕事をしていたので、腰が痛くなってきちゃった。

 うーん!

 思い切り後ろに伸びをしたら、腰がつった……。



 午後一で、社長から呼び出されて告げられたのは新しい部署への移動と昇進。

 昇進って言っても、新しい部署で肩書が付くだけ。

 多分ヤマシタとのバランスを保つためかな、って。

 まだ内示で、受けるかどうかは私次第。

 現在40歳。誕生日が来れば41歳。いわゆるガタが来始める年齢。

 これから新しい事を始める気力と体力、私にあるのかなぁ。

 さっきなんて、伸びしただけで腰がつった。

 返答は一週間以内。

 何人か部下は付けてくれるみたいだし、一人で孤軍奮闘なんて事はないだろうし、任せてもらえるのは嬉しいけど、やっぱりゼロからのスタート何て自信がない。

 これヤマシタだったら、やりがいとか感じちゃって、即答するのかな。

「ねぇ、今日ちょっと時間ある?」

「六時には帰社できるんで、その後で良かったら!」

 そう言ってヤマシタは颯爽と、取引先に向かっちゃった。


 六時って言ってたのに、ヤマシタのやつ五時ちょっと過ぎに帰社したかたと思ったら

「先輩! 飯行きましょ! 飯!」

 なんて大声で言うもんだから、ほら、若い事務員が物凄い目でこっち見てる!

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