第18話 揺れ動く 気持ちふらっふらなんですけど

 そもそもよ、そもそも!!

 シッポを抱き抱えて頭の中を整理しようと思ったの。

 こうするといつも建設的に物事を考えられる。

 きっと気持ちが落ち着くからだろうね。

「私がリュウの事を好きだったのは、二十二年前の高校生の時よ?」

 好き、って言葉に思わず身体が反応してシッポをギュッと強く抱きしめてしまった。

 いつもだったら、不満気に一声鳴いて逃げ出すのに今日はやたらと大人しい。

 なのに、逃げ出すどころかピクリとも動かさない。

 え……。

「シッポ!!」

 慌ててシッポをゆすった、ら。

 バサー

 シッポの中身何かが一気に膝の上に散乱した。

 え?

 シッポの中身?

「ノリ、何やってんの」

 え? リュウ?

 気が付けばそこはまだリュウの車の助手席で、自分のバッグを持ち上げて中身をぶちまけてた……。


 ☆ ☆ ☆


「全部あった?」

 車を止めて、助手席の足元に散乱したバッグの中身を絶賛捜索中。

 最初は座ったまま探してたんだけど、部屋の鍵がどうしても見つからない。

 仕方がないので、車を降りて助手席周辺を徹底捜索。

 リュウは強力な懐中電灯を背後からかざしてくれてる。 

「部屋の鍵だけ見つからない……」

 仕事用の大きなカバンから、必要最低限の物だけを詰め替えてきたので物はそんなに多くなかったハズ。

 後は鍵だけ。

 まさか、寝ぼけるとは不覚。

 ビールなんか飲むから。

 寝言なんて、言ってないよね?

「私寝ぼけて何か言った?」

 振り返ると、懐中電灯をかざしながら首を伸ばして覗き込んでいたリュウの顔が直ぐ近くにあった。

 おっと。

 そんな感じで少し私からリュウが離れた。

「あー、いや。別に」

 こりゃ、何か言ったな私。

 鍵は……、見当たらない。

 ちょっと痛い出費だけど、鍵屋さんに来てもらって開けてもらおう。

「鍵見当たらないけど、いいや。もし見つけらた連絡して」

 やれやれ、そんな感じな私にリュウが呆れた顔をした。

「今夜どうすんだよ。シッポが待ってんだろ?」

 どいて、と私を押しのけてリュウが探し始めた。

 もしよ?

 これ、私がわざと鍵を隠して「今夜は、か・え・ら・な・い」とか言い出す状況だったりとか考えない訳?

 指輪をお断りしたり、期待したり忙しいな私!

「あった!」

 あったんかーい!!

「ありがとう!」

 鍵を受け取るとき、指と指が触れた。

 やだ、何どきどきしてんの私。

 不整脈?

 ほら四十過ぎると身体に色々出てくるから。

「いててて」

 リュウが肩を回しながら運転席へと戻って行った。

「四十肩でさ」

 とリュウが笑った。

「もう、お互いトシだもんね」

 笑うしかないじゃない。


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