第17話 嘘!? その考えはなかった。

「ヤマシタとは何もないし、私はなんとも思ってないんだから」

 なにを慌てて言い訳がましい事してるの私。

「俺、高校の時からずっとノリの事好きだった」

 おっと突然の告白。

 あ、いやずっとってリュウあんたバツイチだよねぇ。

「バツイチになった経緯、聞いて貰って良い?」

 嫌とは言えないし、やっぱりちょっと気になる。

 で、リュウの話を箇条書きにしてみると


・大学の同期

・告白されて若気の至りで

・でも一緒にいる所を私に目撃されたらと気になってた

・大学四年、卒業間近になって彼女が妊娠

・卒業と同時に結婚


 やっぱりリュウに子供居るんだ。

 しかも、だいぶ大きな子供が。

 もしかして一人じゃないかも。

「でも、妊娠はうそだった」

「えっ? うそ?」

「そう。就職が決まらなくて、永久就職しようとしたらしい」

 永久就職、懐かしいな。今はそんな風に言わないよね。

 嘘の妊娠なんて、すぐバレるだろうに。

「結婚してから直ぐ妊娠すればバレないと思ったって」

 なんて策士!!

「でもまぁ、妊娠したって言われてから、そう言う事がなくてさ」

 それは……、妊娠しないよね。

「いつまで経ってもお腹大きくならないし。で、白状して別れて欲しいって言われた」

 なんと……。

「で、もうこれでいつノリに再会しても大丈夫だ! と思って今に至る」

 はい?

 その間、彼女とか居なかったってわけ? 

 そんな事ある?

「そりゃ、友達とか知り合いの紹介でちょっとお付き合いとかはあったけど、やっぱりノリの事が気になってた。多分ノリのお陰で香織が変わったのが大きな要因だと思う」

 人を事件の原因みたいに言うな。

 でも、申し訳ないな。私、約束忘れてたんだよ。

「良いんだ。再会できたし、思い出してくれたし」

 どんだけ都合のいい男よ。

 私、リュウの気持ち受け入れて良いのかな……。

「卒業式の日の事」

 それなら香織ちゃんから聞いたよ。

「あいつ人の事追い込んでおいて、自分はさっさと我が道歩くんだから、参るよ」

 強いよね、香織ちゃん。

「いや、そうでもなくてさ。離婚した相手の親から子供寄越せって言われてて悩んでる。医者何かと結婚するからだよ」

 リュウが昔と同じ、お兄ちゃんの顔になってる。

 そう、リュウのこんなところも好き、だったんだよね。

「でも、この前ノリと呑みに行って時は久しぶりに楽しかったって言ってた……。ん? ノリ、酒飲めるの?」

 あ、バレちゃった。

「ほら、仕事上お酒の席も多いんだけど、呑んで失敗する訳にいかないからね。飲めないことにしておけば、今の時代はやり過ごせるから」

「何か、ノリも色々大変だな」

 まぁね。

 女一人で生きていくのは、あ、シッポが居るけど、何かと大変なのよ。

 そう言って笑って見せようとしたんだけど、ちゃんと笑えなかった。

「ちょっと、待ってて」

 リュウは車から降りると、何処かへ歩いて行った。


 ☆ ☆ ☆


 暫くして戻って来たリュウの手にはコンビニのビニール袋。

「ほら」

 車に戻って来ると、ビニール袋からビールを取り出し私の手に押し付けた。

「俺の前でだったら飲めるだろ」

 そう言って、車をコインパーキングから出して走り出した。

 酔わしてどうする気?

 ってビールの1本や2本でそんな酔わないか。


 プシュ

 流れる窓の景色を見ながら、リュウの買って来てくれたビールを飲む。

「じゃ、あの会社の後輩とかいう男もノリが酒飲むの知らないのか?」

 そうだよー。

 アルコールの仕業か、ちょっと返事が軽いな私。

「ふ~ん」

「何よ、その満足そうな顔は!」

 と、運転してるリュウの頬をツンツンしてしまった!

「ノリ、もう酔ったのか?」

 んー、そんな筈はないんだけど。でも、ちょっと浮かれた気分なのは認める。

 一人だけ飲んじゃってごめんね?。

 なんて言いながらぐびぐび飲んじゃって……。

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