第19話

「さて、それでこの街に長くとどまるつもりはないんだけど、どこかいい国とか街はないかな?」


 ユウマはこの世界の地理や国について、少し本で読んだ程度の知識しか持っていないため、リリアーナへと質問する。



「そうですね……ここから西にある街なんかどうでしょうか? 独立迷宮都市グランドバイツという場所なんですが、巨大な迷宮があって、独立という名のとおり、他の国からの干渉を受けない特別な街なんです」


 リリアーナ自身もこの街でダメだったら、次はグランドバイツに行こうと考えていた。



「なるほど、迷宮都市っていうことはダンジョンみたいのがあるのか?」


 考えるように腕を組んだユウマはゲームや物語の知識から紐づけて、リリアーナへと質問する。



「すごい、よくご存じですね! その通りです。街の中央に巨大な迷宮があって、その迷宮を囲むようにして巨大な巨大都市が形成されているんです。そこならきっとユウマさんを召喚した国の手も及ばないはずです。それにあそこは多くの種族、職種、立場の人がいるので、私のようなハーフエルフでも暮らしていけるはずです……」


 リリアーナは最後の言葉を言う時だけ、少し悲しそうな表情になっていた。



「ふむ、ふむふむ! うん、いいな! ようっし、それじゃあ俺たちの目的地はその迷宮都市グランドバイツだ。俺には金があるんだけど……」


「ダメです! 私ばかりがお金を出してもらうのはいけません!」


「じゃあ……何か依頼でも受けてみるか」


「はい!」


 彼女の意思を尊重しようとするユウマの提案にリリアーナは元気よく返事をする。





 こうして二人の今後の行く道が決まる。まずは、ある程度の旅の資金調達。


 そして、迷宮都市グランドバイツを目指すこと。





 翌日、二人は冒険者ギルドでパーティ登録をすると依頼を次々にこなしていく。



 魔法への思いを断ち切ったリリアーナは二つの拳を武器に魔物を殴り倒していく。


 いわゆる殴りエルフとして生きていくことを決意した彼女は確実に魔物を打ち倒し、次々に依頼をこなしていく。



 一方でユウマも魔物との戦い方を考えていく。


 リリアーナが魔物を吹き飛ばし、その先に剣を出現させて突き刺す。



 この組み合わせで、二人は確実に魔物にとどめをさしていく。



 とどめを刺した魔物はユウマが収納後、解体をすることで全て素材に変えていく。


 その結果、二人で倒した魔物の総数は一週間で百をゆうに超えていた。



「いやあ、リリアーナは強いなあ」


「いやいや、ユウマさんのほうこそさすがです! 武器を出すタイミングが絶妙です!」


 二人は宿で互いの戦果を褒めあっていた。



「にしても、冒険者ギルドでもスキルの確認ができるとは思わなかったよ」


「あれは一部の人だけですけどね。我々が相応の実績を残したからです」


 色々な依頼をこなした二人の冒険者ランクはDランクまで上がっていた。



 そして、ギルドでスキルに関して相談をすると奥に能力確認の部屋があり、そこに案内してもらうことができた。



 そこでユウマは城で確認して以来、二度目の能力確認を行うこととなった。




*************************


名前:ユウマ=シンドウ


性別:男


職業:収納士


スキル:収納魔法


*************************




 この結果に関しては城で確認したものと変化はなかった。


 しかし、収納魔法を選択すると新しい情報が追加されていた。




 収納魔法ランク3:特大サイズの物を収納することができる。


          契約したものであれば魔物や精霊を収納することができる。収納したものの時間が停止する。


          展開範囲は三十メートル。


          収納したものの名称、簡易的な説明を見ることができる。




 大サイズというのはユウマが以前に収納した家サイズであり、特大サイズとはそれを超える物も収納できるということである。



 また、これまで生きている者は収納することができなかったが、今回のランクアップによって条件付きだが魔物と精霊を収納できるようになった。



 時間停止は初期値と変わらずだったが、展開範囲が十メートルから三倍に広がっていた。



「これって、どうやったらランクが上がるんだ? たくさん使ったら? 魔物を倒したから?」


 収納魔法の効力が目に見えて上がっているため、ユウマは成長条件が気になっていた。



「えっと、具体的なことは判明していないようですが、とにかくたくさんの経験を積むことで極稀に成長すると聞いたことがあります。これは私の考えになりますが、ユウマさんは移動中も石ころや薬草などを収納していましたし、魔物の解体も全てユウマさんが魔法で担当してくれました。普通に魔法を使う人と比べて数百倍の回数魔法を施行していたと思います」


「あー、なるほど。やたらめったら収納魔法を使ってたおかげで能力が強化されたってことか……いやあ、使っててよかったよ」


 ユウマは今も手のひらに果物を展開したり、収納したりを繰り返している。



「私もユウマさんのアドバイスで身体強化に魔力を使用していたおかげで、強くなっていました!」




*************************


名前:リリアーナ=エーテリア


性別:女


職業:魔闘士


スキル:身体強化、魔闘拳、無属性魔法


*************************




 リリアーナが持つスキルはこの三つだったが、無属性魔法はスキルとしてはあるものの実質使い物にならないため、身体強化と魔闘拳しか使っていない。


 そして、その二つのうちの身体強化のランクが一つ上がっていた。



「いやあ、俺が収納・展開を繰り返すことでスムーズにできるようになっていたから言ってみたんだけど、その通りになってよかったよ」


 ユウマの言葉にリリアーナはニコリと笑う。



 今までの自分から切り替えることができたのはユウマのおかげであり、今回の成長も彼のおかげであると考えており、成長したことで少しでも役に立てるようになった喜びがあった。

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