第19話 炎上

 月曜日。


 怪獣になってから、この曜日が大好きになったのは今に始まったことではない

が、昨日はある意味では充実して悪くない日曜日だった。


 それはさておき、俺は期待していた。


昨日の今日で、何かが変わっているのではないだろうか、と。


SNSのタイムラインでエゴサーチをする。


今回は、ヒーローのアカウントを介したエゴサーチではなく、始めたのだ。『怪

獣』のアカウントでタイムラインに何かを投稿し世間の反応を、応援してくれる少

数派の存在を確認したかった。黒音の気持ちを理解するためでもある。


端的に言うと、結果は凄まじく酷いものだった。


フォロワー数八人の、非難の内容が書かれたリプライ・メッセージ数あわせて五百

件以上。ちなみに非難の方は通学時間をさかいに秒単位で増え続けている。


『お前みたいなもんがSNSに来るな』


『不快』


『キモイ』


 こういう内容ばっかりだ。


 しかも、『いいね』の数は俺の投稿よりも、俺への中傷リプライの方が多いとい

う悲しみ。


 今いる教室にも、『怪獣』に非難を送ってくるやつは何人かいる。


 「こんなのにフォローしたやつ、みんな捨て垢じゃん」


 クラスメートが俺に怪獣の話題を持ち掛ける。


 捨て垢。


捨てアカウントの略。


 本来持っているアカウントとは別に、何らかの目的で作られたサブのアカウン

ト。アイドルとかアニメのファンであることをリアルの友人に知られたくないから

作る場合もあるが、問題を起こしたり炎上した芸能人を攻撃するために作る場合も

ある。ちなみに、『怪獣』に成りすましたアカウントもたくさんある。


 そして『怪獣』のフォロワーは、ムカデか何かに不倫問題で炎上したアスリート

の顔を合成した画像や、画像未設定のアカウントがほとんどで、『ネットの闇』と

か、『クソを叩く人』とか、ほとんどがそんなのばっかりだ。


 「ヒデとは大違いだな。こんな人から憎まれるようなクズみたいなの」


 「これって成りすましじゃないの?」


 「いや、これは本当だろ。自撮りしてるんだから。昨日ヒーローにボコられた公園の時計も映ってるし」


 「なんで自撮りするんだろう。あの外見で自分のことかっこいいとか思ってんの

かな、吐きそう」


 「ほんっと気持ち悪い。『怪獣』の正体って誰なんだろう。気持ち悪すぎてかわい

そうになる」


 「…」


 俺なんだよあ…。





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