七話 望み
真明は助七と行動を共にしている。
助七は山を越えた先に行きたいと言っていた。
なんでも、山を越えた先に病気の母親がいて、その母親に薬を届ける途中で茶屋に寄ったそうだ。
「母は病気がちで、薬を昔から飲み続けているんです。でも山を越えないと、薬はなくて…」
「そうだったのですか…。しかし、あなたは先ほどせきをしていましたが、大丈夫なのですか?」
「水を飲めば落ち着くので、大丈夫です!」
「ならいいのですが…」
真明は助七が無理をしているように見えた。無理に笑ってごまかしているのではないか。そんなことが脳裏によぎった。
真明と助七の二人は道を歩いている。助七は真明の少し後ろを歩く。
真明は助七がさっきより足取りが重くなっているように感じた。
「早く、母に薬を、届けなくては…」
「少し休みましょうか」
「いえ、母が待っているので、休むわけには」
「そうですか…」
真明と助七は砂利道を行く。
歩きづらいのか、他に要因があるのか分からないが、助七は顔色が悪く辛そうだ。
真明は助七を無理やり休ませた。
しかし、またせきが出てきてしまった。今度は水を飲ませても治まらなかった。
不治の病、という言葉が真明の頭に浮かんだ。この病状はそれにそっくりである。
「やはり、あなたは病気だったのですね」
「す、すいません。黙っていて…でも、どうしても自分で届けたくて…真明さんが一緒に来てくれた時は嬉しかったです!」
「そうですか…。しかし、あなたはもう…」
真明は助七がもう長くないと悟った。
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