第24話 幼馴染の折り紙

「百均にさ、こんなのあって。もうテンション上がってつい買っちゃった」

流季が妙にキラキラした折り紙を持って来た。

「確かにすごい……」

小学生ぶりかもしれない。

ただ俺が知っているのは、赤や青など、いわゆる普通の折り紙。

特別感があったのはせいぜい金と銀だった。

そういえば、金だけ10枚くらい入っているやつとか夢のようだったな。

「ホログラム?とかキラキラしすぎて、模様がどうなってるのかよく分かんないな」

「でしょでしょ?」

「なんだこれ。ザラザラしてんだけど」

「お目が高い!ちなみにお値段も一番高い!」

流季が販売員みたいになった。

しかし、確かにそうなるくらいすごい綺麗な折り紙だ。

「こんなに綺麗だと、ただ折るの勿体無いな」

「ねー。特別なのやりたいよね」

調べてみると、ドラゴンとか折れるみたいだ。

俺がクワガタムシで止まっている間に、世界はそこまで広がったか。

「じゃあドラゴン折ろうよ」

出来上がりの画像を見る限り、なかなか難しそうだ。

でも、折り方さえちゃんと見ればできるはず。

折り方を調べよう。


「「………」」

ドラゴンを折ろうとして出来上がったのは、線がやたらと入ったしわしわの折り紙。

これでも俺たちは、書いてある指示にできるだけ従ったつもりだ。

……ただ、途中に出てくる『ここをねじる』って何?

俺たち、折り紙折ってたんだよな?

はっきり言って、もうできる気がまるでしない。

心が折れた。

「ね、鶴折らない?」

流季も同意見のようだ。

「それがいいな」

時として、鶴はドラゴンにも勝てるのだ。

おもに手軽さで。

「……なあ、鶴ってどう折るっけ?」

「ええー、そこから? こうだよ、こう。そんでそこをあーして……あれ?」

しっかりと手順を踏んで、大きな正方形が小さな正方形になった。

どうやらはじめから、この綺麗な折り紙に俺たちがしてやれるのは、なるべく丁寧に角と角を合わせることだけだったらしい。

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