第18話 幼馴染のみどりの日

「バッタ捕まえたからウチで飼おうよ」

「小学生か」

先程。

『虫かごってあったっけ?』との連絡に、『物置にあった気がする』とうっかり答えた結果がこれだ。

玄関にそこそこ大きなバッタを持った流季が待ち構えていた。

トノサマバッタではないが、サイズはそれほど大きい。

昆虫採集でもしていたのだろうか。

「草むらに行ったら飛び出してきてさ、肩に乗ったから思わず捕まえちゃった」

わんぱくな子供か。

大体、ウチで飼おうよというけれど、“ウチで”というのが流季の家か俺の家か分かりにくい。

なんで俺の家が流季のウチになるのかと言われたら、たしかに不思議だが、そういう気がしてしまうからしょうがない。

まあ、流季の家なら俺の許可いらないし。

「バッタのホッパーくんだよ」

無駄にカッコいい名前までつけてる。

……というか。仮に俺の家なら、シンプルにやめてほしい。

そこまで苦手というわけじゃないけど、昔ほど得意でもない。

俺も小学生の頃はあんなに追っかけ回してたのに……本当に不思議だな。

これが、歳をとるという事か。

まだ高校生なのに。

「戻してきなさい」

「ええー」

しかし、なんだ。

すでに流季はホッパーくんを手のひらに乗せているだけだが、まったく飛んでいかない。

もう虫かごいらないじゃないか。

「バッタってなに食べるか知ってるのか?」

「カマキリとか?」

ホッパーくん、今すぐ逃げて。

頑張れ、流季とカマキリの魔の手から脱するんだ。

「何か失礼な事考えてない?」

俺はバッタを応援しています。

あ、できれば玄関で逃げないで、ちゃんと外に出てから逃げてくれ。


説得の末、どうにかホッパーくんを野に帰すことに成功した。

ただし俺の家の庭に放たれたが。

カマキリと出会わずに、穏やかな日々を過ごしてくれる事を祈るばかりだ。

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