3

 というわけで、俺は久里原が用意したクルマに乗り、プライヴェーターとしてLVSに参戦することになった。


 しかし……


「なあ、ほんとにこれで戦うのか?」


 久里原の店のサービスピットの前で、俺は呆れ顔でヤツに言う。しかし、ヤツは全く意に介した様子もなく、さも当然、といった顔でうなずく。


「ああ。LVSはとにかく小さくて軽いクルマが有利なんだ」


 ……。


 今、俺たちの前にあるのは、シルバーボディのやたら小さなオープンカーだった。


 スズキ・カプチーノ。


 もうとっくの昔に製造中止になっている、軽のFRスポーツカー。


「ほんとはF6Aエンジンの初期型の方がトルクが出てんだが」久里原が言う。「さすがに程度のいい個体がなくてな。これはK6Aエンジンの最終モデルだ。一応オーバーホールしてタービンはハイレスポンスタイプに交換してある。マフラーとエアクリもスポーツタイプにしたし、ECU(エンジンコントロールユニット)もフルコン入れてセッティングし直した。これで80馬力は余裕で出るぞ。ミッションはクロスレシオに組み直したし、リアデフはノンスリップ、足回りはジムカーナ仕様に締め上げた。ブレーキは前後ともキャリパーもパッドもアフターマーケット物に交換。ボンネットはカーボンファイバーだ。本体より改造費の方がよっぽど高かったよ」


 ……うーむ。


 とりあえず、ボンネットの上にでかでかと貼ってあるアニメキャラの超巨大ステッカーは、剥がさせてもらうからな……


 ---

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る