第2話 脱出

 勇者と魔王は言いたいことを言い合うとゼーゼーと息を乱しながら疲れていた。


「やっぱ元には戻せないんだな?」


 勇者は魔王の答えを待つ。


「さっきから何度も言っているが、余のレベルも1になったことでほとんどの技が使えなくなっている、使おうとしても、しかしMPが足りない、状態じゃ」


 勇者は拳を握りしめて自分の努力はなんだったのかと後悔していると、魔王城謁見の間の門が開いて無数の魔物たちが現れる。


「ふはははは!、勇者よこれで形成逆転だな!、レベル1のお前に奴らを倒す力はあるまい!」


 急に強気になる魔王に腹がたつが、実際ピンチなことに変わりはない。

 勇者はチョンチョンを持とうとするがレベルが足りないので装備することができない。


「ここまでだな!、さあ皆の衆、勇者を血祭りに上げてしまえ!」


 魔王の号令とともに勇者に飛びかかって行くがなにやら様子がおかしい。

 戦っている様な雰囲気ではない。

 不思議に思ったので魔王が近づいてみると。

 女体化した勇者に求愛している魔物がたくさんいたのだ。


「お前ら!なにしとんねん!それ勇者やぞ!」


 魔王は思わず部下にツッコミを入れる。

 だが、魔王の部下達は、魔王の言葉に聞く耳を持たず女勇者に気に入られようとしているが。


「いや、魔物と結婚とか無理だから!」


 と勇者は断り続けている。

 魔王は、勇者は人気なのに自分は全然人気ではないことに劣等感を覚えて魔物の1匹に聞いてみる。


「勇者はなぜ人気で余はなんで人気ないの?」


「そりゃあ、見た目幼女だし、魔物勢にロリコンが少ないだけだろう、嬢ちゃんも後10年したらいい感じに成長するんじゃない?」


 一つ目の魔物に精一杯のフォローを受ける魔王。


「幼女はダメなのか...、てか嬢ちゃんって...、これでも余は5000超えてるぞ!」


 魔王はちょっと悔しい気分になる。

 勇者がなんとか魔物の群れから這い出してきて魔王の手を握り駆け出す。


「とりあえずラストバトルはお預けだ!、お前には俺を性転換した責任を取ってもらう」


「責任とるだなんて...、そんな...」


 魔王は恥ずかしそうに頰を赤める。


「そう言う意味じゃねーから!」


 (くそ、今の魔王の赤面が地味に可愛いのがクソ腹たつ!)


 今のレベルでこの終盤の魔王城にいるのはまずい。

 チョンチョンをここに置いていくことになるが、他に方法がない。


「脱出呪文!カエレール!」


 勇者はダンジョンから脱出するための呪文を唱えるがかき消される。


「な、何故だ!」


 魔王は笑いながら答えを言う。


「あっはっはっ、魔王謁見の間で脱出呪文が使えるわけないだろ!、バカか貴様w」


「クソっ!、変なところだけラスボスらしいことしやがって!、おかげでピンチだぞ!」


 周りには魔物の群れが勇者を襲おうとしている。

 ハァハァと息を荒げていて、明らかに勇者の貞操が危ない。


「お前の部下だろ!、なんとかしろ!」


「え、でも余が勇者を助ける義理なくね?」


「お前わかってんのか?、お前のレベルは今1なんだぞ!、そんな状態で魔王の位置にいてみろ、一瞬で部下どもの裏切りにあって死ぬ!」


「大丈夫、余は人望厚いから、な、皆!」


 魔王が魔物の群れに道を開けろと言うが誰1人聞いてくれない。

 むしろ我こそが魔王にと意気揚々と魔王に刃を突き立てている。


「誰の人望が厚いって...?」


 魔王は一度息を吸い、苦笑いをしながら顔に人差指を当てて勇者の方を見て出来るだけ可愛らしく言う。


「勇者様♡、助けてください!」


「可愛くねーは!、お前の人望どうなってんだよ!」


(嘘、本当はめっさ良い、俺の彼女より可愛い!)


 本心と言っていることが違う勇者だった。

 とはいえ、このままだと魔王の命と自分の貞操がマジで危ない。

 せめてチョンチョンが使えれば...。

 勇者は考えているが、レベル制限を解消する方法など思い浮かばない。

 魔王が死ねば、下手したら自分は一生このまま過ごすことになる、それだけは絶対に御免だ。

 今までの旅の経験からこの場を切り抜ける方法を模索する。


(考えろ、俺は勇者だ、こんな盤面いつもひっくり返してきたじゃないか...)


 しばらく考えていると魔王が勇者の裾を掴み本気で震えているのがわかった。

 それを見た勇者は、勇者としての本来の役割を全うすることだけを考える。

 たしかにこいつは今まで悪逆非道を繰り返してきた魔王だ。

 しかし、今無力なこいつを守ってやれるのは勇者である俺だけだ。


(いつかツケは払ってもらうからな)


 俺の人生を乱した魔王は許せないが、それ以上に無力な者を八裂きにしようとする魔物供はさらに許せない。

 道具一覧を見て使えそうな物を投げつける。

 爆弾ゴーレムのカケラを投げつけて初級の爆発系呪文と同程度の火力を出すが、やはり道具だ。

 終盤の位置あるこの場の魔物達にはかすり傷程度のダメージしか与えられない。

 それで十分だった、爆発に気をとられた一瞬に隠れマントを装備する。

 隠れマントは周囲の背景に溶け込み姿を透明に出来る便利アイテムだ。

 今までに数々の伝説を残して入るアイテムだ。

 主に犯罪でだが...。

 勇者と魔王の姿が見えなくなった魔物達は、自分たちの中に魔王が紛れ込んでいるのではないかと考えたらしく同士討ちを始める。

 その間に勇者と魔王はカサカサとゴキブリのように這いずってテラスへと向かう。

 謁見の間から離れたので脱出呪文が使えるようになる。


「脱出呪文!、カエレール!」


 こうして勇者と魔王は魔王城から脱出したのでした。


the end(嘘)

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