第39話 こだわり
適当に書こうと思って始めてみた話も気づけば変に拘ってしまって、手が止まるということはよくあることです。
人生適当をモットーにしたいんですが、性分はかわらないものでなにか目に入るととことんやってみないと気がすまなかったり、すぐに飽きちゃったりと、結局適当なような、自分のことはまあよくわからないです。
例によって先輩の話なんですが、ある別の部署の人がきて、自分と先輩に言いました。
「おい、鬼滅の刃見に行こうぜ」
マジかどうかはしりませんけど、そこで自分が、
「あ、映画ですか? 良いですね。行きましょうよね、先輩」と答えました。
先輩は鬼滅の刃を知らないようでした。
「ん? なにその鬼滅の刃」と言うので、
「え、知らないんですか? オリコンチャート総なめにして、今超絶大な人気マンガですよ」
と言っておきました。別に馬鹿にはしてないんですけどね。その誘ってきた人もモンストコラボかなんかで知って見たら面白かったと言っていました。
そこで先輩が、
「キングダムで良いよ俺は」
と言いました。
「いやいや、キングダムなんかもう(人気が)終わってるでしょ」
「キングダムとか古いもの何いってんの」
と自分たちが口々にいいました。決して馬鹿にはしてないんですけど、そんなに面白いのか? と先輩が聞くので
「まあ、面白いですよ。キングダムも面白いですけど、古いじゃないですか。今どきの人気とか流行ってるものやっぱり知っときたいですし。普通の感性だったら(とくに癖はない話)多分面白いと思いますよ。先輩の(好みの)感性がどうか知りませんけど、キングダムが面白いなら面白いと思いますよ」
と言っておきました。ええ、もちろんその()は言葉に出てないので、まあ先輩は拗ねてしまいました。今思えば言い方はどうかと思わなくもないですが仕方ないことです。
「アニメ映画など絶対見に行かん」
と仰られました。
それから何度となく鬼滅の刃の話題がでたのですが、隣の席のお姉さんの娘さんが中高校生だったと思うんですが、鬼滅の刃が好きらしく、旦那もハマって何度も読んでるよといっていました。
先輩とお姉さんは同年代で住んでる地区も近く、先輩は旦那さんを知ってるようなのでわりとそのことは衝撃をうけていたようでした。
その話のときに、先輩が最新号付近のジャンプで何話か読んでつまらなかったと言っていました。
先輩「鬼滅絵が汚い」
自分「キングダムは?」
先輩「絵は汚いけど面白い」
自分「途中から読んでも……」
先輩「名作は途中からでも面白い。キングダムも初め途中からや」
自分「それはたまたまで、羌瘣の祭のところが最初で読んでもつまらんでしょ」
先輩「やっぱり絵が」
自分「どんなのがいい?」
先輩「ドラゴンボール、北斗、スラムダンク、YAWARA」
自分「やわら、て……」
絵心もないので全部違いが正直わからんのですが、YAWARAと鬼滅の絵の上手い下手がわかりません。そもそもキングダムも絵が汚いのに面白いとか言ってるのになぁと面白いからいろいろ突っ込んじゃうんですよね。
そうこう言ってたらお姉さんが、
「娘の一巻持ってきてあげるから!」
となんともお優しい言葉をかけていただきました。
お姉さんも面白いと言ってたので、多数決をとれば今のとこ3対1なんですけどね。
翌日先輩は有給で休んでたんですが、昼休み前にちょっと職場に立ち寄りました。そこでお姉さんが「はいこれ!」と渡したのが鬼滅の一巻でした。有言実行とはこのことです。自分なら持ってくるのに最低三日はかかると思います。というか多分忘れてます。
「これ、いつ読めば良いんだ」と先輩が呟いていたので、
「今でしょ」と言っておきました。言わされた感がすごいです。
休日出勤してきた昼休み前に漫画読んでても誰も文句は言わないでしょうけれど、多少なり人の目は気になるもんですか。「漫画なんて10分くらいで読めるじゃないですか」と言っても「そういう問題じゃない」とよくわからないことを言っていました。
弁当を食べようかと思ってたら、先輩が机の中に漫画を入れようとしてたので、「ちょっと見せてくださいよ」というと「俺が借りたんだから俺が読む」と言って読み始めました。
絵が気になったので後ろで見てたんですが、気づかれて「気色悪いあっちにいけ」と言われました。
漫画を手渡された時も「あれ、絵きれいやん」とか言ってましたし、「読んでるときに絵はどうなんですか?」と聞くと「ジャンプで読んだときよりキレイだわ」と言っていました。何いってんだこいつと思わなくもないですが、美的センスのない自分にわからない世界なので、お腹も減ってましたしほっときました。
弁当を食べ終わった頃、先輩は「二人に謝らんといけない」と言いのこし、帰っていきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます