親友。ライバル。

あんな軽いノリで入部したけど、バスケ部はすごく楽しかったなぁ。ヨッシーとは今でも遊ぶぐらい仲がいい。



体験入部期間。入学してから、1週間は色々経験を積めるようにと、軽いメニューで色々な部活を巡る期間。いわゆる『お客様期間 』だ。

その期間が終わった今、俺は1年生にしてレギュラーを勝ち取った。


なんてことは無く、体育館でボールをつくどころか、校庭を延々と走っていた。

「はぁ、はぁ」

息が続かない。目の前が、白く、点滅、する。

「新入りはまずは体力作り。」

顧問の言葉が恨めしい。マツモトさんに格好いいところを見せたいのに。

走りながら体育館をちらりと見ると、吉岡くんが先輩と練習している姿が見えた。吉岡くんはバスケ経験者なので既に普通のメニューをこなしているんだと。

くそ、少しだけ格好いいと思ってしまった。

早く俺もあんなふうになりたい、と思っていると

「井上ぇ!!しっかり走れ!!」

走るからボールを触らせてくれ。クソ顧問。


陸上部よりも走ったんじゃないか、と思えるほどに走って部活を終えると、吉岡くんが話しかけてきた。

「おつかれー。井上くん、一緒に帰ろうよ。」

「おー、いいよー。」

本当は疲れきって話すのもだるいぐらいだったが、人付き合いは大切だし、仕方なく了承した。

自転車を駐輪場から押してくると、吉岡くんも自転車を押して校門まで来た。

「井上くんも、自転車で来てるんだ。家どの辺なの?」

「おれは、河津のアパートだよ。あの青いやつ。吉岡くんは?」

「え、俺もそこだよ!!」

まじか、同じクラス。同じ部活。同じアパート。ライバル1号かもな、なんて思ってると、

「いやー、俺ら気が合いそうだね。リョウって呼んでいい?俺のことも好きなように呼んでよ。」

と言ってきた。なんていい笑顔しやがる。恥ずかしげなくこんなこと言うとは。俺は、

「いいよー。じゃ、俺はヨッシーって呼ぶ。」

とだけ簡単に返した。

帰り道は吉岡くん、ヨッシーがずっと話していた。怖いのは好みが全く同じことだった。好きな食べ物、女優、はなまるうどんで何を頼むか、細かいことまで似ていた。もう1人の俺かと思うほどに。

そうこうしてると、俺の、いや俺達の住むアパートに着いた。

「じゃあこれからよろしくな。リョウ、明日も一緒に帰ろうぜ。」

と、ヨッシーに言われ、

「おう、じゃあまた明日なー。」

と、返して、別れた。

最後まで、ドラマみたいなことを言うやつだった。

ただ、ひとつ言えることは、あいつは気の合うやつだった。

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