第9話生活費の為に頑張る10歳


 あれから俺達は順調に移動し七日かかる所を五日で移動した。

 今では国境を超えて、近くにある大きな町に滞在している。

 早く着いた理由は単純に狩りをするのに丁度良い狩場が一つしかなく、馬を休ませるのに必要な時間以外のすべてを移動に当てたからだ。


 色々と順調と言える日々を送っているが、一つ問題が出来た……アデルの事だ。

 あの語り明かして秘密を教え合った夜、女神から貰った魔法とスキルを経験値消費で得られるという能力を彼女に話したのだが、最上級回復魔法を取るのに否定的なのだ。

 

「フェル様が目的を達成するには、回復よりもテレポートや純粋な力、レベルの上昇が必要なのです。

 もし取るならハイヒールで十分です。

 理想はパーティーメンバーに回復魔法を使える者を入れる事ですね」


 と、こんな感じだ。

 確かに間違いは無い。それは何故か……

 前回の狩り場が余裕があり経験値をレベルに一切振らず貯めて、5万まで貯めてみたのだが、スキル取得欄の剣スキルのレベル1が明るい色で表示された。

 おそらく取れるのだろう。


 だが魔法の初級はそれでもダメだったのだ……


 最上級はとてつもない経験値を必要とされるはず。

 それならばレベル次第で一騎当千が出来てしまう世界なのだから、間違いなくレベルにあてるべきだろう。

 魔法はまだ確認していないが、相手よりもどれだけ高いレベルになれるかが重要なのは確かだ。


 最上級魔法を取った場合で考えてみても戦場で部位欠損なんてしてしまったら回復の暇など無い方が多いだろう。

 回復が出来たとしてもおそらく相当のMPを持ってかれるだろう。


 そんな状況に陥るよりもその分をレベルに当て攻撃を喰らっても切り傷で済む程度を目指し別の手段で他の者に回復をさせた方が効率的だ。

 

 だが俺は考えたのだ。

 ここでネットゲームの廃人達に相談したらどう言うだろうかと、きっと『そんなん一日20時間狩りすれば済む話じゃん。それだけ状況に恵まれてるのに甘え過ぎじゃない?』と言われると思ったのだ。


 俺は社畜と廃人にだけはならない様にしようと思っていたのだが今回は廃人プレイをやってみようかと思っている。

 だが、当然お金の事も忘れてはならない。

 この世界はお金をドロップなどしないのだから。


 そのためにギルドに登録をしたのだが、聞いていた通り討伐系は異常にレベルが高いものしか無く、意味をなさなかった。


 だから俺はギルド職員に聞いてみた。150レベルまでの魔物から取れる素材で一番金銭効率がいい魔物はどれだろうかと。


 職員は親切に教えてくれた。

 ジェイルエルダーという魔物で魔道具の材料であり、需要が高く供給が追いついていない為、買い取り価格も高く設定されていて常に買い取りがされているらしい。


 職員は「だからおすすめだ」と言って置きながら、小馬鹿にした様に笑い「140レベルだけどな」と言いそこから付け加えた。


「こいつはレベル以上に厄介だぞ」と。  


 単純に魔法を使ってくるというだけの話だった。

 だがここは魔法の国と言われる場所、その場所で厄介と言われるのだ。

 相当なものがあるのかもしれない。


 ならばと目標設定を140レベルにして、アデルには150を目指すよう言いつけた。

 今はまだ貯めていた経験値もレベルに割り振っても54レベルにしかなって居ない。


 だから遊んでいる場合ではないのだ。


 町に入った次の日の朝からずっと週一の休みの日以外、一日14時間、アデルと共に俺の適正より10レベル上の狩場で狩りをしてきた。

 最初の考えでは18時間くらいを想定していたが、移動時間に多くを取られ、他に食事や休憩も取らないとやって居られないほどきつかったので、14時間となった。

 そんなこんなで四苦八苦しながらも、ひたすらに彼女と二人で魔物を狩る日々を続けて行く。  





 あれから四年と5カ月が過ぎ目標のレベルを達成すると同時に俺は10歳になった。

 70レベルを超えてからの必要経験量の上昇具合が半端じゃ無かった。

 これは厳しいものがある。

 だがそれでも俺達は、アデルによるとハードスケジュールを組んでいると言われるパーティーの五倍に相当するそうだ。


 そこに在る差の理由としては、まず人数差による個人討伐数のアップ。

 要は時間効率の差だな。固まって行動するのであれば人数が少ない方が個人で倒す羽目になる数は増える訳だ。ちなみに平均人数は5人くらいだそうだ。


 それと時間だよな。

 普通は大体3時間から5時間、頑張っても7時間程度らしい。

 単純に頑張っている奴の倍狩りをしている訳だ。


 んで最後に相手にする魔物のレベルだな。

 装備が新調されてからのアデルは物凄かった。

 女神の加護無しに格上を普通に相手をする様になったのだ。

 そのおかげで俺がアデルのレベルに近づいても20レベル上をキープ出来た。

 

 そんなこんなでアデルの見立てだと頑張っても22年程はかかる所を、4年と半年くらいで達成する事を可能にした訳だ。


 そうして俺達はドキドキしながらギルドに来ていた。

 その緊張の理由はお金が無いからである。

 この町に長く滞在すると決まったその日に家を年単位で借りて、出来る限り出費を抑えながら生活していたもののほとんど収入が無いのだ。

 お金が無いのは仕方が無い事である。


 本当にアデルの言ったと通り100レベル超えてからやっと普通の生活が出来る程度しか稼げなかったのだ。

 採集は異常に危険な物しか依頼されないし、討伐は朝から何時間も入場口に並びダッシュで向かい、運が良ければという始末。


 アデルに5倍だと言われた時に気が付いたのだが、22年頑張った奴は140レベルに到達するのだ。

 じゃあある程度でも真面目に狩りしたやつは40歳には100レベルは越すはずだ。

 それがパーティーを組めば90レベルなど余裕だろう。

 そういう奴らも日々生きる為に依頼を受けている考えると当然の状況なのだと、俺が間違っていたのだと気が付いた。


 100レベル超えてからは休みに設定した日に俺達二人はギルドに来て

 討伐依頼を受けてお金を稼いでいたのである。要するに休みなど無かった。


 だが今日ギルドに来た理由は別である。


 そう、あのジェイルエルダーだ。


 今日からようやく狩りと同時にお金を稼げる様になる予定、なのだ。


 その魔物の情報の収集と、現在のジェイルエルダー一体の相場を調べに来た。

 それ次第で俺達の休日は約束された物となる。

 額次第では贅沢も出来るだろう。

 アデルも『噓だったらその職員殺しましょう』とやる気満々だ。

 俺も強く同意した。


 そして緊張の面持ちでギルド職員の一人に尋ねた。


「すいません、相場をお聞きしたいのですが。

 ジェイルエルダー一体の買い取り相場は今どれくらいでしょうか?」


「ええと、ジェイルエルダーの骨一キロで今大銀貨で6まいですね。

 もしかして挑まれるのですか?」 


 と、聞かれた事にも応じず俺はアデルと無言で抱き合った。

 アデルは泣いていた。

 俺もウルウルしたが、大銀貨一枚しか入っていない財布を強く握りしめ、上を向いて堪えた。


「ああ、殺る。絶対にだ。ああ、絶対にだ」


「ええ、絶対によ」


 とギルド職員を見つめ力強く答えた。


「ええと、そちらの方は獣人とお見受けしますが、魔法抵抗装備はお持ちなのでしょうか?

 レベルが適正でもステータスの知識が低いと魔法抵抗も低くなってしまうので、抵抗装備をお勧めします」


 アデルは絶望に打ちひしがれがっくりと四つん這いになり、カウンター越しのギルド職員の前から姿を消した。

 俺は職員に「装備に抵抗値がどのくらいついているか調べる事は出来ますか?」と一路の望みに賭けて問い掛けた。


「ええ、ギルド職員にも鑑定スキルを持っている者はおりますので。

 銀貨一枚かかりますが、お調べになりますか?」


「はい、是非。彼女の装備をお願いします」


 そう、彼女の装備は総額で金貨230枚相当なのだ。

 付いていてもおかしくない。

 いや付いていて然るべきだと。


 そしてギルド職員に銀貨一枚を渡すと調べてくれる


「おお、これは凄いですね。

 全属性抵抗がすべての装備に付いてますよ……」


 それを聞いた瞬間、アデルがシャキーンと立ち上がり


「すべてはフェル様のおかげです」と再度抱き着いてきた。


 俺は身長がアデルの胸を追い越してしまった事を残念に思いながらも、生息地の情報と一撃の予測ダメージ量などを教えて貰い俺達は現地へと全速力で急行した。

 町を出て1時間もかからない所にあり俺達は再び歓喜した。


「フェル様、取り合えずこの袋が一杯になったら帰って換金しましょう」

「随分と大きな袋じゃないかアデル。相変わらずいい仕事をするな」

「はい、今日は自分を褒めてあげたいです」


 と二人はにや付きながら頷き合い一心不乱に索敵を始めた。

 そして一体だけの魔物と出会った。骨だけの外見でローブであったであろう布切れを纏い、杖を持ち明後日の方向を向いている。

 確信があったにも関わらず即座にステータスの確認をした。


 種族 ジェイルエルダー

 性別  不明

 年齢  不明

 レベル 131


 なんと、御誂え向きだろうか。

 俺達はいつもの様に気配を消して近づき攻撃を開始した。

 魔法を唱えようとした瞬間、杖を持った腕の骨を切り落とし、アデルはそのまま肩から脇にかけて真っ二つに叩き切った。

 そして魔物は動かなくなった。

 

「「……」」


「もっと早くこれましたね。」

「言うな。俺達は今最低でも大銀貨六枚儲かった。それでいいじゃないか」


 と、俺達は一キロは楽に超えているジェイルエルダーをばらして袋に詰めた。


「はい、先を急ぎましょう」

「ああ、今夜はごちそうだ」


 やっとアデルにお腹一杯おいしい物を食べさせてやれると万感の想いを込めてニッと笑いながら俺は言った。だがしかし。


「フェル様、早くして下さい。置いていきますよ?」


 いつものアデルならここでお礼を言ったであろう。

 いつもの俺ならここでアデルを優しく言葉攻めにしたであろう。

 だが今は大事の最中である。

 俺は無言でアデルの後に続いた。


 そうしてすぐに二回目の遭遇を向かえる。ある程度の距離の所で袋を置いた。

 今回は3匹の様。レベルも140付近で抜けた奴はいない。

 そしていつも通り近づき一人一体ずつ叩き切った。

 そして残りの一体が魔法を放ち、辺り一面に炎が広がった。

 即座に後ろに引き範囲外に出る。

 少し炙られて痛かったが軽傷だ。火傷すらしていない。

 

 三体までの相手なら残り一体を注視しておけば余裕だと分かった瞬間、ニヤリと笑い嬉々として残った一体に近寄り即座に倒した。

 そしてそこで俺達から笑顔が消えた。

 倒したはずの二体の死体が消えていた。

 アデルは唖然とながら言い放った。


「まさか、あの程度の炎で灰に? この根性無しの骨めっ!」

「ええと、アデルさんそろそろこのノリは止めよう、危険な気がする。

 それと考えてみるんだ。

 この短時間で最低でも金貨一枚と大銀貨2枚稼いだって事を」


「はっそうでした……確かに危険ですね。こんな重要な事を見落とすなんて」

「お前口調を戻しただけで全然抜けてないぞ?

 と言うか抜けてる……間が……」

「すいません。もうお金の心配をしなくていいと考えたら嬉しくて」 

「ああ、気持ちは一緒だ。だからいつもの様に狩り早く一杯にして換金しよう」

「そうですね。この袋まで燃やされない様に注意しながらやりましょう。

 もしこれが燃やされでもしたら私、発狂しそうです」

「いやだから、もうそのノリはいいと……」


 ノリじゃないのか? というか戻ってすらこれないほどガチなのか?

 俺は今も親と手紙のやり取りをしているし、最終兵器親のすねという心の拠り所があったが、アデルにとっては相当苦痛だったのだな……


 そんなやり取りをしながらも三体以下の魔物を狙い狩りを続け30分で全部で七匹分の骨を集めた。

 帰りも何故か全速力で今度は45分で着いた。

 どうやら全速力は時と場合で変わるようだ。


 そしてギルドの買い取りカウンターに行き袋を置いた。


「これを換金したいのですが」

「こ……これは助かります。

 最近は持ち込んでくれる人がおらず買い手が殺到していて困っていたんですよ」

「そうかですか。では頼みます」


 そんな事より早く現金をくれ。

 いくら何でも全財産が二人合わせて9千円はきついんだよ。

 実家に居る訳じゃ無いんだから……


 そうしてギルド職員は秤を持ってきて計量を始めた。

 そして図り終えて結果を告げられた。


「ええと17.5キロですね。金貨10枚と大銀貨五枚になります」


 カウンターに並べて差し出された。

 たった30分、移動含めても2時間半程度で100万円を稼いでしまった。

 当面の生活費はこれで大丈夫だろう。だが……


「アデル……これから何をしたい?」

「聞かなくては分かりませんか?」


 最近のアデルはうぶな可愛さが無いな、ちょっと寂しい。

 きっと昔ならもじもじしながらも素直に言ってくれただろう。


「取り合えず安心できるまで繰り返したいよな」

「はい、当然です」

「と言う事なので、職員さん……

 買い取りってどのくらいまでしてくれるんですか?」

「ええと、買い予約が5000キロ入っていまして、買い取り上限は一万キロまでを予定しております」

「一万……そんなに足りてないんですか?」


「はい、今現在あの魔物を討伐しているパーティはあなた方だけだと思います。

 ここ数カ月でも売りが入ったのは10キロほどでして、生活に必須な魔道具すら真面に作れない状況に陥りそうだったのですよ。

 そろそろお貴族様に上申するしかないという話しが出てた所でして」


 危なかった。これ以上遅かったら国が動いて解決していたかもしれない。

 最高のタイミングで俺達の独壇場となった訳だ。


「では、沢山取ってこようと思うので魔法の袋をレンタルさせて貰えませんか?」


 魔法の袋とは転移魔法付の魔道具で一杯になったら発動させる事で袋の中身を登録した場所に移せると言う優れものだ。

 上位の物は取り出しも出来るらしい、が今回は送れれば十分だ。

 だが一番安い小ぶりの物でも金貨50枚からなのだ。


 ギルドでは状況によって貸し出す場合があるのだ。

 それなりに高位の者にしか貸し出されないが俺達なら十分だろう。

 最近週一回は来ているし多少の実績はある。


「はい、あなた方なら大丈夫ですよ、ですが注意してください。

 紛失等をして損害賠償を致しませんと、ギルドの利用が出来なくなります」


 そう、これなのだ。高位の者がギルドを利用できなくなると言う事は金貨50枚程度では釣り合わないのだ、だからそこで悪事を働く者はまず居ない。


「フェル様、もし燃えてしまったりしたら大変です。

 借りるにしてももう少し稼いでからにしませんか?」


 と、アデルは心配そうに進言する、がギルド職員がそれを否定する。


「そこは安心してください。

 燃えにくい素材で作られた上に火抵抗を組み込んだ魔法の袋がありますので」


 アデルも安心出来た様でそれならばと俺達は借りる事にしてそのまま狩場へと逆戻りをした。

 そこから10時間、俺達は狩りぬいた。

 5匹以上いる場合は撤退していた為にいつもより効率は悪いが、それでも結構な数を狩れる事が出来た。

 そうして夜も更けて来た頃、俺達はギルドへと帰って来た。

 

 ギルドに入ると人はほとんど居らず、わずかにいる職員が居るくらいだ。

 俺は買い取りカウンターの前まで行くとこちらに気が付いた職員が立ち上がり居なくなった……

 どういう事だ。まさか買い取り出来ないなんて事は……


 アデルと見合いながら首を傾げていると奥から人がやって来て俺の前に立った。


「この度は貴重な素材収集に多大なる貢献をして頂きました事、真にありがとうございます。

 私はこの町のギルドマスターをして居りますエイブラムと申します。

 金額も金額ですし、お伺いしたい事もございますので、よろしければ客室の方にご案内させて頂きたいのですが……」


 と、ギルドマスターと名乗るエイブラムさんという方が声を掛けてきた。

 彼はヒョロっとしていて身長も低めだ、何より覇気のなさそうな顔をしている。

 俺の予想していたギルドマスターという人物像からかけ離れていた。

 だがそんな事はどうでも良い。

 問題はお金なのだ。

 確かに人が居ないとはいえ、個室で貰ってしまってしまった方が安心だ。

 なのでそのままついて行くことにした。


 そうして社長室の様な場所に案内される。

 そこには、対面テーブルの他に、大きく威厳のある机と装飾を施された椅子がどんと置いてあった。


「どうぞ、おかけください」


「では」と座り心地の良い椅子に腰かける。

 長椅子を指し座りなよと合図したが、アデルは少し斜め後ろに立ち座る事を拒否した。


「では、まず今回の素材の買い取り金額をご用意させて頂きました。

 合計183キロ、金貨109枚と大銀貨8枚になります。お納め下さい」


 手元に10枚ずつ積み上げられた金貨と端数を分かりやすく並べ、どうぞと差し出された。

 俺は少し緊張しながらも財布にしまい、話を振る。


「それで、伺いたい事があるとか?」

「ええ。そう思っていたのですが、どうやら高貴な身分のお方のご様子。

 不躾なお願いになってしまうかもしれませんがよろしいでしょうか?」

「えーと、おそらくですが、このまま素材の供給を続けて欲しいと言う事ですよね?」

「えっ……あ、はい。

 端的に申しますとそういう事ですね。話の早いお方で助かります」

「そういう事なら安心してください。

 私共としましてもまだまだレベルを上げねばなりません。

 お金も稼げた方がいいので狩る魔物は適正値を超えるまではジェイルエルダーがメインになるでしょうから」


 と、余りがっついて居てもみっとも無い気がするのでレベル上げを強調して伝えた。


「あっ、ありがとうございます!

 ではその魔法の袋はそのままお持ちください。

 いやーそれにしても驚きました。送られてくる魔物の数と速さに度肝を抜かれましたよ。

 やはり焼かれない様に上手く保管して置いて、まとめて送って下さったので?」


 今の状況なら多少、目立ってもいいだろうとちょっと自慢をしてみた。


「いや、魔法の袋に詰めて行って一杯になった所でその都度、送っていただけですよ。

 ここに居る私の従者は優秀でね。国では狂犬なんて呼ばれて居たそうです」


「狂犬……ですか。とてもそうは見えませんが……とは言えお顔も見えませんし」


 と、エイブラムはアデルの顔を見たそうにして首をかぶり振る。


「おっと、これは失礼を致しました。

 そういう事に触れるのはマナー違反ですね。

 ギルドマスターの私がマナー違反などをしては示しがつきません」


「ええ、賢明な判断です。

 彼女は150レベルを超える猛者であるだけでなく、160レベルを超える魔物を一対一で平然と倒す強者ですから」


 アデルがこっちにジト目を向けて何か言いたそうにしているが気にしない。

 俺はずっと自慢したかったのだ、俺の最高のパートナーを。


「それは素晴らしい。ですがそのレベル帯でその能力ですと、そろそろジェイルエルダーの適正レベルから外れてしまうなんて事は……」

「ご心配なく、私がまだ140ですからね。当面は外れる事は無いでしょう」

「えっ、ええ? とてもお若くお見受けられますが140レベルですか……?

 と私はまた……」


 いや、そのくらいは良いのでは無いだろうか?

 だが彼はどうしてもジェイルエルダーの骨を集めてきて欲しいのだろう。

 多分に気を使っても当たり前かと思っていると、アデルが何故かドヤ顔で口を開く。


「フェル様は今年で10歳になられました。私は10レベル上が限度ですが。

 フェル様は30レベル上の相手を三体同時に出来ます。私の自慢の主様です」


 ふふ、アデルよ……それは盛りすぎと言うか事実でも異常すぎて信じて貰えないだろう。

 現にエイブラムさんは『はぁ、それは……』と懐疑的だ。

 もう少し考えて発言するべきだったな。


 っておい、ちょっと待て、何故そこまでガチな殺気を放つ……

 エイブラムさんが冷や汗をかいて青い顔をしているじゃないか。

 これは助け舟を出さなくては……


「この様に大変、愛されてまして……

 そのおかげでこの歳でこのレベルまで上がれる事が出来たのですよ」


「いやぁ、それでもそのお歳で140レベルなんて聞いた事がありませんよ。

 私などには、計り知れない能力がおありになるのでしょう」


 とエイブラムさんはアデルをチラチラと見ながら何とか言葉を返す。


「話はもう終わりの様ですし、帰りましょうか。フェル様」


 殺気は解いたが話をぶった切り帰ろうと提案してくるアデル。


「おいアデル、俺に恥をかかすのか? いくら何でも失礼だぞ」


 余りの対応にお説教モードに入りそうになったがエイブラムさんがそれを遮る。


「いえ、私は大丈夫ですよ。私の方も失礼な事をしてしまいましたから。

 確かに要件ももう終わっておりますし、拘束しすぎてしまいましたね」

「そうですか、では今日はこの辺で失礼しますね」

 

 と俺とアデルはギルドの裏口から表に出て借家の小さな自宅へと帰宅した。

 アデルは俺に恥をかかせたと言う言葉が衝撃だったらしく、しょぼくれていた。

 なのでもう怒ってないよと、告げてブラッシングをしてやった。

 

 そうして俺達は眠りについた


 今日の討伐数79匹


 獲得経験値 1422000


 現在のレベル140 変動なし


 フェルディナンド・アルフ・ミルフォード


 種族:獣人

 性別:男

 年齢:10歳


 レベル:140   次のレベルまでのExp26284542 

 取得経験値:残1422000


 HP:8195

 MP:8195


 力 :1639

 体力:1639

 敏捷:1639

 知力:1639

 知識:1639

 魔力:1639


 スキル:言語理解 ステータス上昇量向上 魔力量上限無し

     魔力感度Max 肉体資質Max 思考速度上昇


 スキル取得ページへ移行


 魔法 :無し   


 魔法取得ページへ移行


 称号:純潔を守りし者 転生者 異世界人 王子 強者




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る