檸檬が遅れて来た恋を思い出させてくれた

あいる

第1話 久しぶりの再会

【檸檬が遅れて来た恋を思い出させてくれた①】


部活の練習試合の時には必ず作った「輪切りしたレモンの蜂蜜漬け」

疲れた身体にクエン酸が効くのか、リフレッシュ出来るのか分からないけどその頃の部活女子の定番だった。

 水筒に冷たい氷のはいった水を一緒に持って行きレモン味の蜂蜜を入れて飲むのだ。もちろんレモンも食べれるしいつもメンバーの為に作ってたっけ。


 二十歳をとっくに過ぎて部活動の事を思い出すなんてどうしてなんだろうとおもった。

 きっとさっき仕事帰りに立ち寄ったコンビニで見掛けた男子を思い出したからだと自宅に戻って気がついた。


 話したこともないし、好きになった訳でもないのにどうして「レモンの蜂蜜漬け」を思い出したのだろう。

「卒業アルバムを見たらおもいだすかも」


 きっとあそこにあるはずだと押し入れを探した。

 懐かしい高校の卒業アルバムは押し入れには見つからなくて、最後に探した天袋に入っていた。卒業証書と一緒に入っていたアルバムは埃と少しのカビ臭さをまとっていた。

 ページを開くと広がったのは今は新しく建て替えられたけど私たちの知る懐かしい校舎、そしてあの日のままの先生たちの笑顔と友達の顔。

 クラスごとのページを1クラスごとゆっくり眺めたが気づかなかった彼の顔は部活動のページで微笑んでいた。


「そうだ!山口君だ!」

 無くしたものを見つけた時みたいに少しだけ気持ちが弾んだ。

 私はバレー部に所属していて、彼はバスケ部だった。練習試合以外は体育館を半分づつに分けて使うからたまにバスケ部と同じ時間を共有していたのだ。


 その頃の学校は学年ごとに5~7のクラスがあったし、1度も同じクラスにならない人とはあまり接点もなかった。


 山口君はコンビニでバイトをしているみたいだったけど、私の学年だったらすでに大学を卒業しているはずだし、いくら留年したからといってもすでに社会人なのではないかと不思議に思った。


 仕事帰りによく利用するコンビニの中でも一番足を運ぶのに今まで気が付かなかったのは、この頃始めたのだろうか?


 だめだ…気になりだすと止まらない自分の性格に呆れながらも、連絡先を交換している友達の中でも比較的仲のよかった、しおりに連絡してみた。



『しおり!久しぶり、元気だった?

こんどまたご飯でも食べに行こうね。

 あのさぁ、しおりは女子バスケ部のキャプテンだったし男バスにも知ってる人いるよね?』


 しおりは男子バスケ部の松原君と付き合っていたはずだった。大学生になってから別れたと聞いていたが数年は付き合ってたはずだった。


 すぐに返事は返ってきた。

『優香?久しぶり!同窓会以来だね、どうしたの?』



『男バスにさぁ、山口君っていたよね?今何やってるか知ってる?』


『どうしたの?身辺調査か何か?

 山口君は関西の大学に行ってさ、そして今は確か保険会社で働いてる筈だよ。元彼と仲良かったから覚えてるけど、山口君がどうしたの?』


『そうなんだ、ありがとう!ちょっとこの間知り合いと一緒にいたから気になっただけ…また今度会おうね。また連絡するから。』


そう言ってスマホを閉じた。



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