お守り

「はぁ……あの子は元気かしら……」


 ある日の教室で、エルラルが普段はしないペンダントをいじりにゃがらため息をついていた。


「どうしたんにゃ?」


 あまり見にゃい彼女のその様子が気ににゃって訊ねてみると、エルラルは窓の向こうに視線をやった。


「今日ね、中学の友達の夢を見たのよ。それで、懐かしくなっちゃって」

「ふーん」

「何その反応」


 中学というから日本に来る前の話にゃんだろうね。つまり、それはニャアの知らにゃいエルラルで……


「どんにゃ人だったんだに?」


 そういえばエルラルの昔の話とか聞いたことにゃかったから、少し掘り下げてみようとニャアは思った。


「そうね……活発で明るくて、コミュ力が高くて可愛くて、とても愛されるタイプの子って感じかしら?」


 顎に手を当てて、エルラルは思い出しながら一つ一つ友達ちゃんの特徴を並べていく。


「ふーーん」

「だから何よその反応」

「きゃっきゃしてたのかにゃ?」

「は?」


 見た目の特徴は皆無だったから、イマイチ想像できにゃいんだけど、ニャアにとって一番大事にゃのはやっぱりこの部分である。

 だって高校ではニャアがエルラルの一番の友達だと勝手に思っているけれど、それ以前の友達だって気ににゃるものでしょ?

 え、重過ぎるって? そんにゃことにゃいに。


「だからその子とはきゃっきゃしてたのかにゃ!?」

「はあ?」


 エルラルの視線は冷たいけど、こんにゃことではへこたれにゃい。

 良いから答えるにゃ! 答えるにゃ!! と、圧をかける。


「そ、そりゃあ、まあしてたわよ……友達なんだし」


 ニャアの気迫に気圧されたエルラルが、ドン引きしにゃがらも話してくれた。


「一緒に遊んだりお泊まりしたり、お風呂に入ったり……そうそうこのペンダントもね、日本に来ることが決まった時に貰ったのよ! お守りなんだって、素敵でしょう?」

「ほーーーん」

「……あんたねぇ、さっきから何なのよ! その反応まるで──」

「そうにゃっ、嫉妬にゃ!」


 エルラルとのっぺらぼうの友達ちゃんがきゃっきゃっしてるところがイメージできたにゃ! お陰様でにゃ!!

 これは自分で聞いておきにゃがら逆ギレしていくスタイル!!


「ニャアだって活発だし? 明るいしコミュ力めっちゃあるし、エルラルより女子力あるしそれにゃりに可愛いし、一緒に遊ぶし……お泊まりとかお風呂はちょっとにゃいけど、でも愛されタイプの猫だにゃ!!」


 前の友達相手にこんにゃこと言うとか大人気にゃいことこの上にゃいけど、モヤッたから言っちゃった。

 この浮気を責める彼女のようにゃ台詞を!


「ニャアという者がありにゃがら、他の子の事を考えるにゃんてっ!」


 しかし、エルラルの反応はにゃんともぞんざいにゃものだった。


「あーはいはい、レディの嫉妬は見苦しくてよ?」

「酷いにゃ。ここはちょっと修羅場みたいにゃ感じににゃるとこにゃ。

 あと、ニャアはレディじゃにゃいから良いんだにゃ」

「あんたの茶番に付き合ってたら、元気がいくらあっても足りないもの」


 絆故の塩対応! くっ、もう既にニャアの扱いはお手の物って事だに?

 ニャアとエルラルの信頼関係があってのコミュニケーションだけど、今日ばかりは異議を唱えさせていただこう。


「ニャアだってエルラルと仲良しだにゃ!」


 そう言うと、ニャアはエルラルとほっぺをくっつけてパシャっと自撮りを一枚とった。


「エルにゃんに送信っと! これをその友達ちゃんに送りつけて、新しい友達ができたのよ! ってアピールしてくるんだ!」

「はい、削除」

「酷いにゃ!?」


 まさかの容赦にゃい仕打ち!

 鋼メンタルを謳っているニャアでも少し涙目になっちゃうにゃ?


「バカね、今のは準備できてなかったから変な顔になってたじゃない! 撮るなら可愛く撮りなさい」

「エルラルぅーー!!」


 ここに来て突然のデレに、ニャアも思わずエルラルに抱きついた。

 このっこのっ、ツンデレさんめ〜信じてたにゃん!


「はいはい、ありがとうねマオ。こっちではあんたがいるから寂しくないわよ」

「にゃんの事かにゃ? ニャアはただ過去の女の影に嫉妬していただけだにゃ?」

「ツンデレ乙」

「エルラルにだけは言われたくにゃいにゃー!」


 エルラルともう一度ほっぺをくっつけて、今度は「はい、チーズ」の掛け声でシャッターを押す。

 画像フォルダーにはバッチリと、カメラ目線で可愛く映ったニャア達の写真が保存された。


「えへへへへ」

「嬉しそうね?」

「そりゃあね! ニャアとエルラルの愛の証だからっ」

「バカなの?」

「にゃはは! ツンデレ乙」



▽▲▽▲▽



コミニュケーションアプリ『WAVE』にて


リズ「あははっ、エルちゃんは随分と個性的な友達を作ったのね」


エルラル「まあ、そうね。騒がしいくらいだけど、退屈しなくてちょうど良いわ」


リズ「良かった良かった。エルちゃんってばつんけんしてるから、ちゃんと友達できるか心配してたんだよ?」


エルラル「……まあ、うん」


リズ「あはははは : )」


エルラル「でもあれじゃない? リズがくれたお守りの効果よきっと。だってこれ、良い出会いがありますようにって事なんでしょう?」


リズ「あれ、言ってなかったっけ?」



 

──そのお守り、恋愛運アップの物だよ。

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