第11話 匂い


「それで、千崎。何故お前が居るんだ!」


「先輩〜。何言ってるんですか〜。昨日は居なかったかも知れないんですけど、今日からは先輩の部屋に居るのは当然じゃないですか〜〜」


「当然じゃないだろ」


「えへへ〜。これから一週間よろしくお願いします」


ギャルゲを一晩中やって以来、千崎が俺の部屋に寝泊りすることは当たり前なことになっていた。

以前はこんなことなかったのにな。精々夜遅くまでゲームをやって帰っていたんだが。もう仕方なく受け止めるしかない。


「千崎は週に一回しか学校行かないんだよな」


ちなみに俺も千崎に付き合って週に一回登校が多くなってきている。このままでは成績がやばいかも知れない。俺がそんな懸念を考えていると千崎が口を開いた。


「今日、雨宮瑠衣先生のサイン会ですよ!まさか忘れていたなんてことはないですよね〜??」


千崎のヲタ活の一生懸命さを見ると、そんなことはどうでも良くなる。

ってか千崎は雨宮瑠衣先生のファンだったな。新作の「彼女の友達と一緒にやる」がそこまで良くなかったが、前作、前々作が神ゲーなこともあり、もちろん俺も忘れているわけではない。


「当然知っているぞ。俺も雨宮ファンだからな。サイン会にいくのは当たり前だ」


「良かったです!先輩も抽選当たったんですね!」


「ま、まーな」


ちなみに千崎がサイン会の抽選に当たったのを見たので、こっそりオークションサイトで買ったことは秘密にしておこう。


「それじゃ行く準備するか!」


「その前にです先輩。この部屋入った時からなんか匂うんです。どこか刺激的な匂いが。まさか先輩昨日私が居ないからってー」


待ってくれ、ちゃんとファブリーズはしたはずだが、もしかしたらまだ匂うのか!?


「な、何のことだよ。俺はやってないぞ」


俺がそう答えると何故か千崎は口角を上げた。


「先輩〜〜??なにをやってないんですか〜〜??」


千崎はこの言葉を狙っていたのか...。


「い、いや。まぁ、あれだ。あれ」


「先輩焦ってる〜〜。それに顔赤いし、あはははは。やっぱりまだ先輩は私に慣れていないんですね〜」


「だからからかうなって」


「それに私に慣れては困るんですよ!だって...先輩の照れている顔が見れないじゃないですか。私は先輩の照れ顔好きなんですから...」


何故か千崎も頬を赤らめる。


「困るって...」


「それで先輩?なにをやってないんでしたっけ〜〜??」


「うっっ、、、えーと...」


「部屋に残った私の匂いで昨晩は激しかったに違いないです!」


「お、、、」


「お??」


「お、、、って言えるかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「先輩??なにと勘違いしていたんですかー??先輩がやっていたのは私とのイメージトレーニングですよね〜??」


「だから紛らわしいんだよーーーーーーーーーって違うわーー!そっちの方が過激だろーー!!」


いつもの癖で思わず、毎度のセリフが溢れる所だった。それにしても、千崎の匂いで激しいことが千崎とのイメージトレーニングって色々やばすぎだろ。


「先輩可愛いっっ」


その後、千崎とサイン会の準備をした。

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