すまん、温かいんだが

代に告白された日の翌日。

昨日と同じように、代は女子の制服を着用していた。

それマズくね?

俺はもう見ちゃってたからいいけど、他の生徒や教師に見られたらなんて言われるか・・・。

・・・と、思っていたのだが・・・。


「おはよう静別君!」

「制服似合ってるね!」

「新聖君が羨ましいなぁ~!」


みんな既にこの事を知っていたかのような口調で代に声を掛ける。

一体どういうことだ?

後、俺の事羨ましがったそこの女子、代はやらんぞ!!


「なぁ代。みんなその恰好の事知ってるのか?」

「うん!啓に告白しようって決めた日に、校長先生に許可貰ったんだ!」


いや校長もグルなんかい!!?

緩すぎにもほどがあるだろう!!

いやしかし今回の場合に限っては校長・・・ナイスゥ!!

今、校長がこちらに向けて親指をグッと立てている所が想像できた。


「よくそんな許可が下りたな・・・」

「なんかね?僕の事を疑って悪かったって、先生が一緒に付いてきてくれたよ。」


先生・・・俺アンタの事見直したよ。

まぁ代の事疑ったのをチャラになるかって言われたらそうでも無いけど。

それよりも今の話でもう一つ気づいたことがある。

昨日登校したときに通りすがる生徒が微笑んでいたり、クラスの奴らがニヤニヤしていたり、さっき俺の事を羨ましがったりしていたって事は・・・


「もしかして・・・俺に告白した事・・みんな」

「知ってる///」


やっぱりだ!!!

どうりでこいつらやたら温かい眼差しで俺らを見てくるわけだ!!

いいや見てくるって言うより見守ってるって言い方の方がしっくり来る。


「代が言ったのか?」

「ううん。何となく気づいてたんだって。僕が・・その///、啓の事好きだって事///」


なら俺に言ってくれよぉぉぉぉぉ!!

何で俺は気づかなぃぃぃ!!

バカバカバカ俺のバカぁぁぁ!!

あれか?距離が近すぎて気づかない事もあるって事か?

勉強になりましたよえぇ!!


「けどみんな優しいよね!啓との事応援してくれるって!」

「・・・あぁ。そうだな。」


緩すぎて大丈夫なのかって思ってた学校も教師も、そこに通ってる生徒もみんな・・・意外と温かいやつらなんだな。

あぁそうだ、温かいと言えば・・・


「代」

「なぁに?啓」

「もうすぐホームルームが始まるんだけど・・・いつまで俺の腕に抱き着いているつもりなんだ?」


すみません、俺もう5回くらい心臓飛び出てるんですけどぉ!!

代の体温と柔らかさと匂いともう何か全部が俺の右半身を包んでいるかのような感覚なんですけどぉぉ!!

すごいなぁ代は。

実際には右腕だけなのに、右半身全部持っていくんだもん!!

褒めて。

こんな状態でみんなの前で頑張っていつも通りを演じている俺を全力で褒めて!!


「もうちょっとだけ・・・ダメ?///」


オーケー!!!

分かった理解したぁ!!

もう俺は何も言わないから好きなだけ抱き着いてるといいさ!!

むしろ抱き着いて!!


「じゃ、じゃあ本当に・・・もう少しだけなら///」

「うん///ありがとう啓///」


あぁ~~天国じゃあ~~・・・。


「あのね啓///」

「な、何だ?」

「この恰好・・・一番最初に見せたのは、啓だからね///」


んんんんんんっっ!!!

控えめに言って天使!!!

おいそこ、やっぱり新聖君てホモだったんだとか言うな。

本当にまだ付き合ってないのかな?とか詮索するな。

ホモなのは認めるが口にはせんぞ!!

付き合いたいのは俺だって同じだよ!!

でも仕方ねぇじゃん、あんな大口叩いちゃったんだからぁ!!



そんな事を思っているなんて俺以外の誰も知る由もなく、ホームルームが始まるまで代は俺に抱き着いたままで、そんな俺達二人を教室に入って来た教師を含め、みんなが温かい眼差しで見守っていた・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る