非現実的な状況

「は?なに言ってんだお前。単に道に迷っただけなんじゃないの?」

 俺は、少しの動揺を必死で隠し、冷静を装いながら言う。

 いや、まじで、なんか変な迷宮に迷い込んだてきなのやめてくれよ?


「でも僕さ、昼くらいからここにいるんだけど、どれだけ歩いても気がつけばここにたどりついちゃうんだよ」

 そう言った香月は、どこか心配そうな面持ちを浮かべる。

 その姿に、いつもの中二病な香月の姿は見られず、誰が見ても普通の女の子……いや、普通の女の子よりは綺麗な顔をしているか。

 

「お、お前って普通に喋れたんだな……」

 ここにて、衝撃の事実発覚。いや、そんなことより、もっと衝撃な事実がそこにはある。

「さすがに、僕だって普通に喋ることくらいできるさ、こう見えても普通に授業受けてるんだから」


「そんなことより、香月……だっけ?今の話は本当なのか?」

 そう言って、割って入る一ノ瀬。


「本当に決まってるだろ。僕はちゃんと授業を受けている」


「いや、そっちじゃなくて。何回もここに戻ってくるって言ったろ?」


「ああ、そっちの方ね。それは本当だよ、それに君たちも多分、もう既に何回もこの道を通ってるはずだよ」

 それまじ?俺らが気付いてなかっただけ?そんなに周り見てなかった?


「確かに……言われてみれば」

 一ノ瀬は、俺と違いどこか違和感を感じてたらしく、何か思い出すように頭をひねりながら言う。


「でしょ?そんでもって、スマホも圏外で使えないし」

 そう言って、香月は着ているパーカーのポッケからスマホを取り出し、ホーム画面を見せてくる。

 すると、そのスマホの左上には、本来ならば電波の状況などが書いてある場所にはっきりと圏外と表示されている。

 それを見た俺は、慌てて自分のスマホを見る。すると、やっぱりそこには圏外と表示されている。

 隣にいた一ノ瀬も、スマホを確認している。すると、どうやら一ノ瀬も圏外だったらしく、一つ大きなため息を吐いて見せる。


「なあ、これ……どうするんだ?」

 一ノ瀬はスマホを持ちながら、顔だけを俺の方に向けて言う。


「どうするって言われても……。そんな、非現実的なこと、体験したことないし……」


「まあ、僕は幾度の試練を乗り越えた真紅の女王だがな」

 そう言いながら、右手を顔にかざす香月。


「頼むから、今はそういうの忘れてくれ」

 俺は、間髪入れずに香月に言う


「おっと、ごめんごめん。つい癖で」

 そう、言いながらえへへと手を頭の後ろですりすりしながら謝る香月。

 すると、香月は俺たちの後ろの方を指差して、こう続ける。

「そんなことよりさ、その人は大丈夫なの?」

 俺と一ノ瀬は、ほぼ同じタイミングで指差された方を見る。

 そこには、あまりの怖さに気絶していた真彩がいた。




 

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