帰り道

 俺の家は学校から徒歩で30分くらいかかる。

 バスで行けよとか自転車で行けよとか思う人もいるかと思うが、俺は歩いて通っている。

 それがなぜかと言うと、まず近くにバス停が無いのと俺の学校は、自転車での通学が禁止されている。

 なぜ禁止なのかと言うと、俺も詳しい理由は知らないけれど、昔自転車で事故にあった生徒がいたと言う話を聞いたことがある。

 そういう理由なら仕方ないのかもしれない。


 そして、俺の家は一軒家で今は姉貴と二人で暮らしている。

 姉貴は去年に高校を卒業していて今は大学生だ。

 俺が子供の時から母は世界中飛び回っていたので大体のことは姉貴に習った。

 簡単に言えば、母生まれの姉育ちみたいな感じだ。

 まあ、生まれてはないのだが

 母は、正直今どこで何をしているのか分からないけれど、いっつも世界中を飛び回っている。

 生活費等はちゃんと振り込んでくれている、しかも額が凄すぎる。

 これだけあれば、あと5家族くらいは充分に養えそうな気がするくらい。

 まあ、それも愛情の表れなのかもしれない。


* * * * * *

 

 ヒューと肌寒い風が吹いている帰り道、俺は真彩と二人で帰っていた。

 風に飛ばされた桜が舞い散っていてとても綺麗だった。

 ここまで、10分くらい歩いてきたが会話は特になく、なんとなく気まずい空気が流れていた。

 学校だったら普通に話せるけど、帰り道となれば話は別だ。

 全く会話が進まないっていうか始まらない。

 いや、別に俺が何か会話を始めれそうな話題をふればそれであとはとんとん拍子で行くとは思うけど、何故か何も浮かばない。

 俺はお前から話を始めてくれと言わんばかりに真彩の方を向くと、真彩は俺の方を見ることなんてなく、進行方向ばっかり向いている。

 その横顔は、この気まずさを苦に感じてはいないと思えるほどに上機嫌さを伺えた。

 真彩のこんな顔はじめて見たぞ……。

 それ故に、どこか怖さを感じなくも無い気がしなくもなかった。

 いや、どっちだよ。

 と、俺が一人で訳のわからんことを思っていると真彩がこの気まずさに終止符を打つべく俺に聞いてきた。

「天谷ってさあ、好きな人いるの?」

 恋バナかよ!?なんでだよ、なんでここで恋バナなんだよ。

 なに、まさかこいつもすきあらば恋バナをする女子高生なの?SKJK(すきあらば恋バナ系JK)なの?

「いない」

 俺は素直に答える。

「あっそ」

 俺の答えを聞いた真彩は少し俯き、そう呟いた。

 その横顔から見える表情は少し嬉しそうな気がした。

 そして、またもや沈黙である。

 俺の耳に聞こえてくるのは二人の足音と通り過ぎる車の音や公園で遊んでいる少年たちの楽しげな声だけだ。

 俺は再び真彩の方を見ると、やはり見えるのは横顔。

 その光景は、後ろに見える桜とも絶妙にマッチしてとても綺麗だった。

 こいつ、黙ってたらすごい美人だな。

 なんて思うほどに。ってかなに思っちゃってんの?いやいや、なに俺はラブコメとかにありそうなことを思っちゃってるの?いや、そりゃあ俺の個人的感情だったりその他諸々を差し引けば可愛い部類に入ると思うし、実際その手の噂を聞いたことがある。

 聞いたというか聞こえたって方が正しいのかもしれない。

 いやはや、今の時代別に聞いてないことでも勝手に耳に入ってしまう。

 これが、良いことなのか良くないことなのかはわからない。

 世の中には知らない方が良かったってこともあるしな。

 

「あのさあ、一ノ瀬静音って知ってる?」

 俺は真彩に問いかけた。

 今日、校舎裏でたまたまあった人物。

 特に理由があったわけではない。ただの興味本位。

「一ノ瀬静音?ああ、一ノ瀬さんのこと?」


「一ノ瀬さんってお前知り合いなの?」


「いや別に、一年の時に同じクラスだったってだけ」


「あっそ。で一ノ瀬ってどんな人なの?」


「私も詳しいわけじゃないけど……クラスではいっつも静かね、喋ってるところを見たことがないわ」


「まあ、それはなんとなく分かるが」


「それに、めっちゃ可愛いっていうか美人で男にめっちゃモテてる」


「それもなんとなく分かる」

 今日告白現場見ちゃったし。


「私はそんくらいしか知らないけど……って言うか、なんで一ノ瀬さんのこと聞いてきた

の?」


「別に……ただ気になっただけ」

 気になっただけ、本当にそれだけだろうか?その答えは俺にはわからない。

 そして俺は、真彩の方を見ると真彩は俺の顔をじーっと見つめて、ニヤニヤ笑っていた。

「へー、もしかして天谷って一ノ瀬さんのことが好きなの?」


「は?んなわけないだろ」

 なんだ?もしかしてこいつも気になる=好きな人に直結させちゃうタイプの女子高生なの?KSTJK(気になる人を好きな人に直結させちゃう系JK)なの?

「はあー、まあ、それもそうよねー。天谷の脳には人を好きになる機能入ってないんじゃない?」

 真彩は大きなため息を吐きながら俺にいってくる。

 いや、流石に俺にだって人を好きになる機能はついてると思うよ?多分。知らんけど。

 ってか機能って俺はロボットかよ。

 そんなこんなで話していると、あっという間に家の前まで着いた。

 やはり、時間というものは過ぎるのが早い。

 退屈な時間を除いて。

 

「それじゃ」

 そう言い、真彩は自分の家に帰っていく。

「またな」

 俺も一言そう返し、自分の家に帰る。



 


 


 

 

 

 

 

 

 

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