7.火の番と周囲の警戒

 歓迎会も終わり、火の番と周囲の警戒に就く順番をジャンケンで決める事になった。


 結果は、最初がハシュードさん、2番目がカイト、最後が僕という事になった。


 これぞ、ザ・異世界って感じだなぁと思いながら、僕は眠りについた。


 それからしばらく爆睡していたら、カイトに起こされ目を覚ました。


 「おーいハルトー、起きろよー、ハルトの番だぞー。」


 「おはよう、カイトー。」


 「おはよう、ハルト。 そういえばこういうのは初めてだよな。 まあ、ここは街道だから大丈夫だろうけど、モンスターが来そうだったり、夜盗なんかが来たら、起こしてくれてもいいし、倒してくれてもいいからな! じゃ、おやすみー。」


 「分かったよ、おやすみー!」


 こうして、異世界ならではの任務を初担当する事になった。

 まあ、異世界に限らず、戦地やそういう所では、現実世界でもあるかもだけど。


 「と言っても、何も起きなきゃやる事無いんだよなー・・・。」


 もちろん、ここは異世界だ。

 スマホも無ければ、ノートパソコンだって無いし、そもそも電波なんて無いだろう。


 なので、結局僕は、剣術の鍛錬をしてみる事にした。

 いくら魔法が使えたって、自分の目の前で炎を放つわけにもいかんだろうし。


 「とはいったものの、一体どうやればいいのか? 取り敢えず剣代わりのビックウルフの牙を手に取って、思いのままにやってみるかな。」


 そういって僕は、ビックウルフの牙を手に取り、頭上から振り下ろす動作をしてみる。


 「型は全然違うかもだけど、いざという時に練習してるとしていないだと、全然違うだろうし、今日はこれをひたすらやるぞ!!」


 というわけで、頭上から振り下ろす素振りをひたすら練習した。


 そして気が付いたら、日が昇り始めていた。


 結局、モンスターや夜盗なんかは現れなかった。


 まあ、現れていても、夜中中素振りしてるやつをわざわざ襲わないかもしれないけどね。



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 太陽の日差しで目が覚めたのだろう、素振りしていた僕に、ハシュードさんが話しかけてきた。


 「ハルトくん、おはよう! 素振りの練習かい? 朝から精が出るねぇ。」


 「おはようございます、ハシュードさん! 剣術は全くですから、いざという時の為ですよ。 でも、これで合っていますかね?」


 僕は一振りしてみる。

 時代劇とか舞台とか、そういうものを真似たのだがどうだろう。


 「うん! もう少し腰を落とした方がいいかもしれないけれど、悪くないんじゃないかなぁ、今度弱いモンスターと遭遇したら、カイトに補佐させるから戦ってみなよ。 練習もそうだけど、実戦での経験も大切だからさ。」


 「ありがとうございます! はい! 頑張ってみます!」


 そんなこんなで、今度弱いモンスターと遭遇したら、剣術で戦ってみる事になった。

 大丈夫かなぁ、ちょっと不安だ。


 それからしばらく僕たちが話していると、朝日が朝だというぐらいの高さになったので、ハシュードさんがカイトを起こしに向かった。


 「カイトー! 朝だぞー、いい加減起きろよー。」


 「兄さんか、ムニャムニャ、おはよう。」


 「兄さんかとは何だよー、ほら、起きた起きた!」


 まだ眠そうだ。

 1回寝て、起こされて監視任務に就き、また寝る、こんなもんだから深く眠れないんだろう。

 真ん中で任務に就くのは大変そうだ。


 眠そうに眼を擦っているカイトにも朝の挨拶をして、朝食を取る準備をする。

 といっても、朝食は軽くパンなので、準備も何もないのだが。


 みんなにパンが行き渡ったところであの呪文を唱える。

 「いただきます!!」


 若干固いパンだが、なんせこの世界は空気が澄んでいて美味しい。

 自然とこんなパンでも、美味に思えてしまう。


 まさに自然の魔法だ。



 朝食を取り終わった僕たちは、出発の準備を始める事にした。

 この街道はあまり頻繁に人が通らないので、別段急がなくても大丈夫なようだ。


 あんまり人が通らないというか、昨日は人が通った姿を見た記憶が無いので、相当な田舎なのかもしれないな。

 まあ、いきなり大都会に行くよりはいいか!



 こうしてハルトの異世界生活3日目の幕が開けた。



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