第15話 万能スキル疑惑


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 >【リサイクル】スキルがLVアップしました。

 >LV4→5

 >解放:☆の成功率1%上昇

 >解放:☆の廃品合成が可能になりました

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 スキルステータス


 パッシブスキル:☆成功率上昇4%上昇


 アクティブスキル:☆廃品合成


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 経験値が貯まりLVアップしたことでまた何かが解放されたようだ。


 廃品合成って何だろうか。


 何かと何かを合わせると別の物に再構成されるってことかな?


 ラディナさんが解体した廃品の中から、組み合わせられそうな物を物色していると、触れていた廃品の中で同じ光を帯びた物が二つ出た。


 ガラス瓶としなびた薬草が光ってるよな……。


 俺は光っているいる二つを両手に持ってみる。


>右手:ガラス瓶(廃品) 左手:薬草(廃品)


>廃品合成可能品がセットされました。


>この二つを廃品合成しますか?


 神の声に促されるまま了承をしてみた。


 すると、リサイクルスキルが発動した。


―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:5

  経験値:0/36

  対象物:☆回復ポーション小瓶(分解品)


 >回復ポーション小瓶(普通):94%

 >回復ポーション小瓶(中品質):74%

 >回復ポーション小瓶(高品質):54%

 >回復ポーション小瓶(最高品質):24%

 >回復ポーション小瓶(伝説品質):14%

―――――――――――


 発動したリサイクルスキルから回復ポーション小瓶を普通品質で再構成を選択していく。


>回復ポーション小瓶(普通品質)に再構成に成功しました。


>回復ポーション小瓶(普通品質)

 

 HP回復量:100 資産価値:一〇〇〇ガルド


「ちょ、ちょっと! フィナンシェ君!? どうしたの!」


「なんぞ、いつもと違う光が手に宿っとるでぇ!」


「いやちょっと、廃品合成とかいうのができるようになったみたいで、試してみたんですけど……えっと、回復ポーションできちゃいました。ほら、これ」


 再構成され手に収まった回復ポーションをみんなに見せていた。


「ちょ、ちょ待ていやっ! フィナンシェ、お前のスキルは再構成や鑑定だけでなく合成スキルまで付いてくるんかいっ! こりゃあ、フィナンシェのスキルは、どえらい複合スキルやぞ!」


「フィナンシェ君! やっぱり君はとんでもなくすごい人だったわねっ! あたしの運命の人なだけのことはあるわ」


 回復ポーションを合成したことに感動したラディナさんが、俺に抱きついてきていた。


 ずっと馬鹿にされてきていた俺は、褒められることに慣れていないので照れてしまう。


「そ、そんな……俺のスキルなんて大したことないですよ。ほらラディナさんいないと発動できないですし」


「あほかっ! 廃品はそこの凶暴女が作るかもしれんが、それから再構成、鑑定、合成できるフィナンシェのスキルはどう考えても生産系スキルの中で最強に位置づけられるやろ」


 俺のスキルが最強クラスって……それはほめ過ぎでしょ……。


「ラビィの言うことも一理あるわね。それにフィナンシェ君のスキルは成長するし、まだまだ新しい発見があるかもしれないから」


「フィナンシェ、他にも合成できるもんがこの中に埋もれとるかもしれんで! 探してみようや!」


「は、はい! 他にもできるか探してみます」


「あたしもフィナンシェ君が合成できそうな物を探せるようにもっと廃品いっぱい作るからねっ! 待ってて、フィナンシェ君」


 ラディナさんがとってもやる気を出して廃品を量産し始めていた。


 俺もラディナさんのやる気に触発されて、その中から合成できそうな物を探した。


 触れるだけで、合成可能な物が分かるとかすごい便利だよな……。


 しかも、合成できる物が同じ色で光ってくれるし。


 ラディナさんの作り出した廃品の山から、同じ光を宿した品物を両手に持つ。


>右手:荒縄(廃品) 左手:木材(廃品)


>廃品合成可能品がセットされました。


>この二つを廃品合成しますか?


 了承し、リサイクルスキルを発動させる。


>レシピが複数あるので選択してください。


 ん? レシピって何さ?


―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:5

  経験値:1/36

  対象物:☆木製の弓(分解品)


 >木製の弓(普通):94%

 >木製の弓(中品質):74%

 >木製の弓(高品質):54%

 >木製の弓(最高品質):24%

 >木製の弓(伝説品質):14%

―――――――――――


―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:5

  経験値:1/36

  対象物:☆木の棒(分解品)


 >木の棒(普通):94%

 >木の棒(中品質):74%

 >木の棒(高品質):54%

 >木の棒(最高品質):24%

 >木の棒(伝説品質):14%

―――――――――――


 選択肢が二つ提示されたけど……これがレシピってことかな。


 これは、木製の弓と木の棒のどっちかを再構成できるってことかだろうね。


 確か武器屋だと木製の弓の方が高く売れたはず……。


 俺は普通品質の木製の弓を選択していた。


>木製の弓(普通品質)に再構成に成功しました。


>木製の弓(普通品質)

 

 攻撃力:+5 必須道具:矢 資産価値:二〇〇〇ガルド


「できた……。ラビィさん、ラディナさん、どうやら合成品によっては複数の選択肢が提示される物もあるみたいです」


 俺は完成した木製の弓をラビィさんに手渡すと、懐から出した手帳にレシピを書き込んでいった。


「合成できる品物が複数あるやつは選択肢が出るとは……マジモンですごいスキルやぞ。神官たちがレアスキルに指定しとる『合成』スキルでも、できるもんの指定なんぞできへんでぇ」


「で、ですよねー。俺もこのリサイクルスキルが未知のスキルだったんで、この街の神官にスキルことは色々と聞いてたんですよ。もちろん、『合成』スキルのことも聞いてました」


「フィナンシェ君の持つリサイクルスキルは、再構成で廃品を新品にできる上、鑑定もできて、合成もできて、その上合成の指定までできる万能スキルってことね。すごい、すご過ぎるわ」


 ラディナさんと出会ったことで解放された俺のスキルは、本当にとんでもないレベルのレアなスキルだったようだ。


 これはもっといっぱいリサイクルして、スキルを成長させていかないと。


 自分に与えられていたスキルがゴミではなく、すごい物だと分かるとどんどんとやる気が溢れてくる。


「ラディナさん、ラビィさん、俺はもっともっといっぱいリサイクルしてスキルLVをあげますね! よーし、やるぞ!」


「フィナンシェ、期待しとるでぇ!」


「はいっ! 頑張りますっ!」


 俺は他にも見えている合成品を次々と再構成していき、レシピの数を手帳に書き留めていった。


 以下、俺が書き留めた合成品のレシピ一覧である。


 ・荒縄×木材=木製の弓

 ・荒縄×木材=木の棒

 ・糸×木材=つりざお

 ・ガラス瓶×薬草=回復ポーション小瓶

 ・ガラス瓶×毒消し草=毒消しポーション小瓶

 ・布×薬草=包帯

 ・布×荒縄=布のバッグ

 ・鎌×木の棒=大鎌

 ・斧×木の棒=戦斧

 ・釘×木材=タンス

 ・釘×木材=椅子

 ・釘×木材=机

 ・釘×木材=木の柵

 ・羽根×木材=矢軸

 ・尖った石×矢軸=石の矢

 ・鉄の矢尻×矢軸=鉄の矢

 ・革ひも×革=革のバッグ

 ・革ひも×革=革の服

 ・革×木の盾=革の盾


 完成品より、素材系を廃品にした方が合成できる幅が広がりを見せるみたいであった。


 そして、スキルレベルは大量に廃品を合成再構成したため、LV9まで上昇していた。


「おっしゃ、今日はこのくらいにしとくか。今日の話が街に広がって、明日はもっと廃品が集まると思うでぇ。ぎょーさん売りもんを集めて、フィナンシェの借金をチャラにしてあのうざ男に吼え面かかせてやろうや!」


「そうね。フィナンシェ君を馬鹿にしたあの男は許さないんだから! 明日からもいっぱい廃品集めを頑張ろうっと! フィナンシェ君、あたし頑張るからねっ!」


 ラディナさんの鼻息が荒い。


 フィガロが俺を馬鹿にしていたことを根に持っているようだ。


 実際、俺はフィガロに借財があるし、彼には冒険者として迷惑もかけてしまったから馬鹿にされてもしょうがない。


 けど、優しいラディナさんは、こんな俺のために怒ってくれていた。


「あ、ありがとう。ラディナさん、俺ももっともっとこのリサイクルスキルの力を引き出して借金返すの頑張るから!」


「フィナンシェ君、その顔かわいいっ! 可愛すぎるわ!」


「あぁ、ラディナさん。ここ、街中ですから……」


 ラディナさんは抱きすくめると、自分の大きな胸に俺の顔をうずめていた。


「ラディナさん、フィナンシェさん、イチャイチャはお家でしてくださいねー」


「お盛んな二人だこと」


「あれがお色気攻撃というやつね?」


「……フィナンシェ君も大変ねー」


「ラビィさんはわたしの胸にどうぞー」


「おまえなぁ。まぁ、ええか。おおぉ、なかなか軟らかいやんけ。ええぞ、おぉ」


「はいー、こっちもイチャイチャはダメー」


 村の娘たちが、俺たち二人を見て囃し立てていた。


 街の人たちが俺たちのことをジロジロと見て、ヒソヒソと喋りながら通り過ぎていく。


 俺はラディナさんのためにも、この街に住むことになったラクサ村の女の子たちのためにも、底辺冒険者で『ゴミ拾い』のフィナンシェという二つ名を返上しなければいけないと思った。

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