個性の強い妖怪たちと暮らす、春夏秋冬。

とても素晴らしい作品です。
下記のような方におすすめします。

・ほっこりしたい
・人と妖怪の交流が見たい
・マニアックな妖怪が好き
・ユーモラスな話が好き
・個性的なキャラクターが好き
・生活感のある雰囲気が好き
・一人暮らしで寂しい
・季節の移り変わりを丁寧に味わいたい
・風変わりな世界観を楽しみたい


春、夏、秋、冬で1話ずつと、最終話。
5つの短いエピソードが集まってひとつの物語になっています。
そのひとつひとつを思い出すたび、胸がじんわりと温かくなります。

ひとつの季節につき、それぞれの妖怪が登場します。
妖怪たちは皆、個性的で、一癖も二癖もあり、どこかリアルな存在感があります。
最初は、人ならざる者たちに恐ろし気な気配を感じます。
どこか不気味であったり、気持ち悪かったり、煩わしかったり。

でも、季節を追うごとに、主人公と妖怪の関係が変わってゆくところがとても興味深いです。


第1話で、主人公は市役所に妖怪の「駆除」を依頼します。
そう、この作品では妖怪は駆除の対象なんです。
まずそこが個性的で面白い世界観だなと思いました。

第2話では、妖怪と関りを持つ人間が登場します。
「あ、妖怪が駆除されるようなこの世界でも、人間と妖怪が関りを持ったっていいんだな」とわかります。
そして同時に、「人間側が見方さえ変えれば、それだけで妖怪との関係性を変えることができるのだ」ということも気付かせてくれます。

第3話では、なんと人間と妖怪の利害が一致します。
最初は役所に妖怪駆除を依頼したはずの主人公が、少しずつ妖怪を受け入れてゆく。その様子がユーモラスに描かれています。
そして、触れ合いで仲良くなるのではなく、「妖怪を利用する」ところから関係が始まるところが、人間という存在の業を描いているようにも思えます。

第4話。妖怪は相変わらず不気味だし、人間の都合などお構いなしだし、その行動が人間の理解を越える部分もある。妖怪はあくまで妖怪なのだということを描きつつ、「それでも、人間も妖怪も変わらない部分がある」ということを説かれます。
胸がじんわりとする、深いエピソードです。

そして、最終話。
振り返ってみれば、主人公と妖怪の関係が大きく変わっていることに気付きます。
妖怪たちと過ごした春夏秋冬が、彼の意識を少しずつ変えていくのです。
気付けば、一人暮らしであるはずの主人公の家はとても賑やかに。
心が温かくなる終わり方です。


また、この作品は「妖怪」と「現代の人間の暮らし」を絡ませているところも面白いです。
めまぐるしく変わりゆく人間社会。そして、そのすぐ近くで生活している妖怪たち。果たして彼らが人間社会の流れに適応できているのかどうか、少し心配になります。

めまぐるしく変わる中でも、どこかに「変わらない部分」を持ち続けたい。たとえば、季節の移り変わりを丁寧に味わうような。
そんな気持ちになる作品です。

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