第16話

終章


 翌朝、洋次は病院の別途で目を覚ました。ここ最近、見慣れた天井だ・・・そんなことを思いながら起き上がる。

 昨日、病院に行った洋次は医者と警察と親、その他多数の人からお叱りを受け念のために病院に泊まることになった。幸いにも手の傷も浅く。頭の傷も開くことは無かったようで夏休み明けのテストが免除されるほど脳細胞は死んでいなかったようだ。

 病院のベッドの上でその後どうなったかは速水たちから聞かされた。

 志々見と後藤は当然ながら逮捕となった。しかし後藤は未成年者と言うこともありすぐに出てくるのではという話もあるが彼は警察に引き渡すときこう言っていたらしい。{飽きた・・・』なのでそれほど心配することは無いだろう。この事件のもう1人の協力者だった宝石店の店主は経営難で悩んでいるときに後藤に話を持ち掛けられたと話しているそうだ。実際そうだろうが後藤のことだ主犯にされてしまうだろう。山口と財前については事情聴取を受けたものの厳重注意で済みそうだとのことだった。主犯ではないとはいえこれだけ甘いのは志々見と後藤に冷と洋次がきつい脅しを掛けたからだろう。もっともこれを言い出したのは速水だが。茂みで見たことを話さない条件でこれを持ち掛けてきたあいつの適応能力には驚かされた。

 そんなこんなで全ての問題はあっという間に解決した。洋次の宿題の残り以外は・・・



 「お姉ちゃんのお古だけど冷ちゃんとっても似合ってるわね」

 「ほんと洋次には勿体ないくらいかわいいわ。こんな子がうちに来てくれるなんて感謝しないとね」

 「そうだな。洋次、大事にしてやるんだぞ」

 今日は花火大会だ。母親に浴衣を着せられ嬉しそうな冷を見ながらある疑問を思い出す。

 「ちょっと冷」

 手招きして近くに座らせる。

 「そう言えばお前、人の記憶を弄れるんだよな?その力を志々見たちに使えば良かったんじゃないのか?」

 「何言ってるんですか?そんな魔法みたいなことできる訳ないじゃないですか」

 「だってうちの家族みんな・・・・」

 「あぁそれは・・・・」

 冷が何かを話そうとした時、姉が話に割り込む。

 「あんた馬鹿でしょ。あんた以外家族みんな冷ちゃんが雪女だって知ってるわよ」

 「「はぁぁぁぁぁぁ!!!????」」

 思わず両親の顔を見る。顔を伏せる父親と不思議そうにこちらを見る母親。

 「あら、あなた覚えてないの?昔、あんたが小さい頃に迷子になっった時があってね。その時にあなたを家まで送ってくれた女の人がいるんだけどその子が『この子のことを気に入ったから大きくなったら旦那さんに貰って良いですか?』ってあんまりにも綺麗な女性だったから思わず『はい』って答えちゃったわよ。それにしても全然、変わってないわね」

 母親が話しかけた方を見るとニコニコと冷が笑っている。

 確かに迷子になった話は親からも聞いている。洋次自身も微かに記憶にあるが

 「まてその当時すでにいい年の女性だったってことは・・・冷・・・今、何歳だ?」

 「女の子に年齢を聞くのはどうかと思いますけど・・・・そんなことより花火大会、送れちゃいますよ。みんな待ってるんですから。今日はたくさん洋次さんにご馳走にならないといけないんだから」

 駆け足で外に出て行こうとする冷を追いかける。

 「確か当時で300超えてるって話したわよね。ほんと綺麗なままで羨ましいわ」

 「ちょっと待て冷!300ってどういうことだ説明しろ!」

 「嫌ですよ!そんな細かいこと気にしてるから真奈美さんに叱られるんです!言いつけますよ!」

 「いや300はおかしいだろ!」

 祭りの始まりを告げる太鼓の音が聞こえる。夏はまだ終わらない。宿題も終わらない。



 洋次と冷の物語もこれからだ・・・・・・「300はおかしいだろ!」

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あいす 無色不透明 @nnasineet

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