雑談

本庄の好きなコナン映画について語る回

 本庄はコナンを非常に愛しており、コナン映画も物心ついた頃から毎年劇場に見に行っていて、愛してやまない人間である。

 しかし一方で本庄は(自称)ミステリ書きでもあり、ミステリ読みでもある。その観点から、愛してやまないコナン映画にランキングというか、創作者としての評価について語りたいと思う。

 辛辣なことも書いてあるが、トータルとしては全部好きである。個人的な好みがかなり入っているので、これがおすすめ順というわけでもない。皆さんには好きなものを好きなように見て、好きなようにご評価いただきたい。


【総評】

S〜Cで分けた(上映順・順不同)。

個人的な癖として、他が良くても一つ難点があるとドカンと評価が下がり、逆もまた然りという癖がある。異様な評価の作品があったら、各評で何があったか見ていただきたい。


S:世紀末の魔術師、瞳の中の暗殺者、ベイカー街の亡霊、迷宮の十字路、探偵たちの鎮魂歌、戦慄の楽譜

A:天国へのカウントダウン、水平線上の陰謀、純黒の悪夢、銀翼の魔術師、紺青の拳、ハロウィンの花嫁

B:時計仕掛けの摩天楼、14番目の標的、水平線上の陰謀、紺碧の棺、天空の飛行船、異次元の狙撃手、から紅の恋歌、ゼロの執行人、黒鉄の魚影

C:漆黒の追跡者、沈黙の15分、絶海の探偵、11人目のストライカー、業火の向日葵、緋色の弾丸


【各評】

第1作:時計仕掛けの摩天楼(B)

 絵柄が古くて時代を感じるのは難点なんだけど、よくもまあコナン映画というジャンルを一から開拓してくれたな……という感謝が全ての作品。演出にミステリ要素が多めで、アクションももりもりに盛ったのが、今後のコナン映画の良い指標となっている。赤と青のコードはグレースケールにすると似て見える演出や、心理的ハラハラも大変素晴らしい。


第2作:14番目の標的ターゲット(B)

 数字に目をつけたアイデアがとても良い。目暮警部などの名前後付けキャラはともかく、小五郎おじさんや妃弁護士、新一など、既存キャラを数字に絡めるアイデアは本当に有能。蘭との間接キスもいいよね! あとは拳銃のシーンね。過去との絡みが重厚感を出していて大変な好み。


第3作:世紀末の魔術師(S)

 歴史ミステリとして大変評価している。当時は発見されていなかったロマノフ王朝の三女のマリアの遺体に目を付けた着眼点が最高。キッドがひたすらかっこいい。

 犯人のかっこよさ、火災の中での対決など、素晴らしい点を挙げたらキリがないので割愛。素晴らしい点が割愛できるほどあるというのが素晴らしい。


第4作:瞳の中の暗殺者(S)

 ストーリー、構成、謎、キャラ、全てが完璧。佐藤刑事が撃たれて、蘭が記憶喪失になるという一行だけで観客の興味をめちゃくちゃ惹けるパンチのある設定に拍手。そして山ほど出てくる容疑者たちもキャラが立っていていい。


第5作:天国へのカウントダウン(S)

 音楽が最高にいい。初めての組織回であり、組織の出てくるバランスも大変良かったし、組織の恐ろしさの演出も効いていた。個人的には組織の絡みはこれくらいの方が好きかもしれない。

 事件もいいよね。ちゃんとミステリしてて、オーソドックスながらハズレのないコナンしてて最高。

 車での脱出に際しても、灰原さんの物理の計算がリアリティを出していて、突飛なのに非現実感を薄れさせている憎い演出。最高ですね。


第6作:ベイカーストリートの亡霊(S)

 名作と呼ばれるだけある。本当に名作。どうにかしてコナンと19世紀のホームズを絡められないかと考えた結果、AIというアイデアになったんだろうけど、その発想がバケモン。バーチャル世界だからこそできる、キャラクターが消えていくという演出には震える。現実世界とバーチャル世界の絡みがうまく、世界観の表現が完璧。動機も最高。


第7作:迷宮の十字路クロスロード(S)

 最高最高と言われ、実際最高だと思うが、世間の持ち上げっぷりと比べると個人的にはやや冷めている。平次好きなのに何でなんだろう……。

 しかし元がいいため、トータルとしての個人的評価は超高い。本作の良さは平次を主眼に置くという、このころには珍しいキャラクターへの振りと、京都の世界観であり、このころのコナンで重要視されていたミステリ性とテーマ性のクオリティが異様に高い。

 こないだ家族旅行で聖地たる京都および鞍馬に行ったのだが、それがとても良かった補正も入っている。


第8作:銀翼の魔術師マジシャン(A)

 DVDで見た、地味に初期に見た作品。キッドのキザ感を押し出したチャラさが、飛行機とマッチしていたように思う。チャラい映画だからこそ、飛行機で着陸という派手な演出が映える。

 個人的には、犯人が自分のビジネス用具で人を殺すのが犯人としての格が下がるとは思わない。一生に一度の殺人を計画する時には、自分が一番詳しい道具を使うのは当然であり、殺人計画に真摯に向き合う姿勢はむしろ犯人として評価できる。


第9作:水平線上の陰謀ストラテジー(A)

 ミステリとしては大変レベルが高いが、トリックがやや複雑で地味になってしまった辛さがある。おっちゃん補正が割とあると思う。

 しかし犯人がとにかく良い。動機、頭脳、度胸、どれをとっても素晴らしい。地味で複雑なトリックは絵面としては合わないが、犯人の格を明らかに上げている。強い犯人、魅力的な犯人というのが、これほどまでに作品の評価を上げるのかと感動すらする。

 時々でいいので、たまにこういうテイストでやってほしい。


第10作:探偵たちの鎮魂歌レクイエム(S)

 初めてテレビで見たコナン映画。明らかに思い出補正だが、個人的に異様に評価している。ただ思い出補正だけではなく、オールキャラ登場というワクワク感、爆弾を利用したサスペンス性が高評価。あまり言われていないが、最も評価しているのはミステリ性であり、最後の犯人のどんでん返しの美しさはミステリとして一級品。撃たれてるのに被害者が逃げないのは既に殺されていたから、という着眼点は美しさすら感じる。


第11作:紺碧のジョリーロジャー(B)

 巷で言われているほど低評価ではない。海賊や海というテーマ性、アクションは非常に評価している。ただ、全体的に小さくまとまってしまったのは擁護のしようがない。最高のコナン映画から、事件を引いた搾りかすの映画といえる。コナン映画はそもそもミステリ要素が薄いが、だからといって完全になくすと、それはそれでボコボコにされて当然である。

 個人的には、被害者がセリフもろくにないまま死んでしまい、視聴者にとって「お前誰?」になってしまったところに問題があると思う。そんなに同情できない被害者の割に、犯人の動機も自己中心的で、ヤクザの抗争をニュースで見ている気分である。殺人事件が起こったという感覚がゼロの映画。人死んでない映画じゃんとか言ってる人もいるよね。死んでますよ。


第12作:戦慄の楽譜フルスコア(S)

 初めて劇場で見たコナン映画なのと、アメイジンググレイスが個人的に好きなので思い出補正が入って個人的に非常に評価が高い。音楽が苦手なコナンというコンセプトもキャッチー。また音楽の美しさが高評価。地味に謎解きらへんの爆破シーンのアクション性、サスペンス性が高いのも良い。電話のギミックの着眼点の良さは、コナン映画どころかミステリ全体でも上位に入る。


第13作:漆黒の追跡者チェイサー(C)

 ここらへんから暗黒期に入る。予告の夢オチの期待外れ感もある。てかそれがめちゃくちゃでかい。予告の夢オチがなければだいぶ良かったのに……。当時は自分もガキだったので、そのガッカリ感が大変強かった。

 このころはコナンだからミステリをやらなければという義務感があったのか、組織と事件をばらばらにしてしまった構成を取ってしまった。これが全ての元凶で、どちらも中途半端になってしまった。事件の方は、七夕や平次など肉付けがあり、個人的には評価が高いが、やはりストーリー的に組織とクロスしなさすぎる構成がさみしい。DAIGOが棒読みと言われているが、当時はあまり気にならなかった。動機が非常に好みのため、キャラクターとしてはむしろ好き。蘭ねーちゃんの拳銃の弾丸避けも好き。


第14作:天空の飛行船ロストシップ(B)

 キッドと飛行船の自己主張が互いに激しく、やや中途半端になった印象はあるが、評価は高め。飛行船のスケールがバカでかいわりに、本当の目的が仏像の窃盗という、あまりにも地味な動機も、一周回ってネタになって良い。個人的に押し切れない理由は、ここらへんからキッド回がコメディ枠になってしまったから。キッドは王子様であってほしい。後輩はこれが一番好きだと言っていた。正気か?


第15作:沈黙の15分クォーター(C)

 すげえランクの付け方をしているが、一般的に言われているよりは評価している。事件のスケールのデカさ、アクション、冒頭の電車の事件もうまく回収しているし、十年前の事件も上手く使ったミステリ的評価ポイントもある。ただ犯人がクソすぎるわりに小物なのがどうにもならん。冷酷非道でもいいのよ。小物なのがダメ。弟は全コナン映画の中で一番好きと言っていた。それは流石に過大評価。


第16作:11人目のストライカー(C)

 中盤、特に電光掲示板が落ちそうになるシーンらへんまでは良かったのに、クライマックスの棒読みと動機のクソさがどうにもならない。ボールを受け渡すのも、受け渡すのをしたかったんだろうな……という意図が見えてしまい、目的と手段が入れ替わってる感じがある。犯人がおっちゃんを勘違いして逆恨みするという構図、確かに犯人を神聖視する形にはならないけど、あまりにも犯人の格が落ちて、ひいては勘違いする行動を取ったおっちゃんの評価も下がるので、個人的にはやめていただきたい。

 分かんねぇ……サッカーを題材としてるから期待しすぎたのかもしれん……。


第17作:絶海の探偵プライベートアイ(C)

 暗黒期の象徴のような作品。海上自衛隊がかっこいいという補正に全てを頼り切っている。海自呼んでその程度か? 評価が上がらない原因として、リアルに寄せすぎて地味にまとまってしまったこと、コナン自体が大きいコンテンツのために国防的な意味で攻めた描写ができなかったことにあると思う。リアルさを捨てて、遠いところにある架空の第三国を敵にした方が良かったんじゃないか? 犯人も「お前誰やねん」って感じだしな。スパイミステリ、専門知識ミステリにしたかったのは見えるが、ノウハウがなさすぎた。

 今やったら予算も時間もあるし、めちゃくちゃ良くなるんちゃう? 今度は空自とかとコラボしたら?


第18作:異次元の狙撃手スナイパー(B)

 暗黒期の中ではかなり評価が高い。「了解」を原作を差し置いて取り込む勇気と決意には拍手喝采を送りたい。ゲスト犯人の英語能力、サイコロのギミックもオシャレで、オシャレポイントで評価を稼いだ一作。世良ちゃんの使い方もうまい。

 不可がなさすぎて語ることがない……。不可がある方が長くなるのよねこれ……。


第19作:業火の向日葵(C)

 動機で全部ぶち壊しになった。こうするしかなかったのではなく、もっと何とかなった感がなおさら辛い。キッド登場回特有のオシャレさ、スポンサーの名前が露骨に出てくるシュールさ(大好き)、鈴木財閥を利用したスケールの大きさ、芸術ミステリ、アクション、歴史要素、どれも良かったのに、動機で全部ぶち壊しだよ。動機、動機が全て。しょぼいとかじゃなくて許せない。だから勘違いで逆恨みってのは、いろいろ格が下がるから本当にダメだって言ってんじゃん。あ、主題歌が非常に好き。


第20作:純黒の悪夢ナイトメア(A)

 暗黒期を脱出した。大変良かった。漆黒の反省を生かし、黒の組織に絡まない事件を大きく削った決断が功を奏した。ここからコナン映画は舵を切り始める。キュラソーが大変良かった。

 組織回で登場したオリジナルキャラは死ぬ運命にあるけど、それに深みを出すために視聴者に思い入れを持たせてから殺すという演出が効いた。ライバル的ポジションに置かないという勇気が素晴らしい。声もいいしね。


第21作:から紅の恋歌ラブレター(B)

 キャラクターに振り始めた最初の回。今のコナン映画を作り上げた功労者。明らかに迷宮の十字路を意識しているが、人気作を研究していいところを吸収している。和風の世界観、動機の狂気、個人的には、競技かるた経験者補正もあって非常に評価が高い。とはいえ、経験者ゆえの引っかかりがどうしても出てしまって申し訳ない気持ち。あと、死体を隠すためにあの小屋?を作り上げるという狂気およびスケールの大きさが大変好み。

 ただ、多くの人が絶賛している、平時と和葉の原作オマージュ(たとえば「その手離したら殺すで」の部分)はそんなに刺さらなかった。だってあれは原作では、永遠の命への誘惑×命の危機だから活きる演出じゃん? それを真似したって仕方ないのよ。


第22作:ゼロの執行人(B)

 事件があまりにも複雑だが、意外とアクションでカバーしている脳筋映画。動機は悪くないが地味。リーガルミステリかと思いきや、意外とそうでもない。全編通して地味だが、その地味さがいい。しかしコナンに絶望的に地味が合わないという根本的な欠点があるが、それでも地味さがいい。ひとつ気になるのは、あれ小学生ついていけるのか? 本来のターゲット層である小学生をないがしろにするのだけは良くないぞ。


第23作:紺青のフィスト(A)

 キャラクターに振る近年の流れを受けて、アクション全振りにした決断が功を奏した。海外を舞台にするという派手さも、事件にうまく活用できていい。あと個人的に京極さんがすごく好きなんですよね〜。

 個人的には、犯人が複数?いる演出、どんでん返しもいいですね。三つ巴みたいな争い、好きよ。

 マリーナベイサンズをぶっ壊す非現実性もコナンらしくていいじゃないの。


第24作:緋色の弾丸(C)

 キャラクターは完璧。赤井ファミリーに目を付けた着眼点も良かった。アクションも派手で面白い。ただ一つだけ、脚本の絶望的な齟齬がどうしても許せない。他は完璧だったのに、その齟齬で全部ぶち壊しだよ。折角の赤井ファミリー回に何やってんだ? FBIを悪者にする(冤罪を起こすという不祥事)のがNGという縛りが後からでてきたと考えたら、全てが繋がるので、たぶんそうなんだと思ってる。一年延期してこれはつらいが、時間がない中で必死で脚本を作り、齟齬が直らないながら苦渋の決断で先に進めたのだろうが、謎にコロナで一年延期になったのは本当に気の毒だと思う。もっと延期が決まるのが早かったら、絶対脚本をまともにする時間あったもんね。

 完全なる、脚本の事故です。不慮だから仕方ないけど。


第25作:ハロウィンの花嫁(A)

 評価は分かれるだろうし、実際分かれてる印象があるが、ストーリーと構成、特に伏線回収が非常によくできていて、エンタメあるいはミステリとして非常に好み。警察学校のメンバーたちは好きだけど、それで特別高い評価になったわけではない。警察学校のメンバーを出すにあたって、全員によくもあそこまで見せ場と役目を与え切ったなと思う。ただ、評価は分かれると思う。警察学校組の人数が多すぎるので、レギュラーキャラを上手く回しきれなかったのよね……。安室さんがなまじかっこよくて有能なのがコナンとしては縛りがあるのよね。安室さん回、安室さんの扱いに困らない?


第26作:黒鉄くろがね魚影サブマリン(B)

 キャラクター、ストーリー、関係性は完璧。特にサブキャラまで緻密に練り込んでいるのが強すぎる。ただ、事件の部分があまりにも手抜きすぎる。特にトリック。尺や展開、構成上仕方ないのは理解するが、限度がある。コナン映画に出てくるトリックで一番恥ずかしいトリックであることを自覚してほしい。それ以外は完璧。地味に作画がめちゃくちゃいいのも良い。あとピンガマジで良くない? 黒の組織キャラの中でも超好き。

 カップリングにヒヤヒヤさせられた回でもあったが、そこはなんだかんだ上手くまとめたのは流石。

 なんで褒めてるのにこんな評価が低いか分かるかい? 新蘭派だからです。

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本庄照の短編集 本庄 照 @honjoh

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