第9回書き出し祭り 感想置き場

第一会場

1. 赤と白のポインセチア

**

 学園ものとは思わず。ザ・学園ものという書き方で、非常にわかりやすい。微妙な心情の機敏が婉曲に表現されているのが個人的にすごく好きです。これぞ青春やなぁ。四千字でちゃんとキャラ立ってるのがいいですよね。書き出し祭りを始めて読む自分にも、第一会場のトップとしての実力を見せつけられました。


2. 転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~使いすぎにはご用心!!〜

**

 冒頭めっちゃ好き。実力があると思う。典型的な異世界転生ものの冒頭なんだけど、す~~っと入ってきて読めます。その後の展開もすんなり入ってきて、綺麗な引き方。もうお手本のような文章ですよね。自分は異世界もの苦手ですが、これなら読めそう。主人公の語り口調がシンプルなんだけどギャグも入ってて好き。


3.復讐を誓う奴隷少年は薔薇の魔女に拾われる

**

 序盤がいわゆるポエム系なんですね。実はポエムじゃなくて言い伝えなんだけど。自分はポエム系あんまり好きじゃないんですけど、ポエムポエムしてなくて好き。こういうマイルドポエム(?)なら大歓迎。

 全体的に描写が良くて、お母さんを探す描写とか無駄がないのにすごく感情が入りやすい。四千字で三シーンは難しいんだけど、無理なく入ってるのは無駄がない描写だからだと思います。


4.異世界で飛行少年やってます 〜天空都市の自由人〜

**

 世界観にジブリ系を感じる。というのも、世界観の作り方と出し方が丁寧なんですよ。説明口調じゃないのに、少しずつ情報が出ていて、読者に入ってくるつくりがうまい。キャラもゴテゴテしてなくて、それも世界観にマッチしていて好き。

 あと大事なセリフを噛んじゃう幼女、かわいいですわ~~。


5.神待ちサクラと枯れた俺

**

 神待ちってそういうことかな~と思ったらそういうことだった。二十二歳って、本庄と同じなのに本当に枯れてやがる。ここらへん、タイトルでの情報の出し方が読者に優しくてすごくいいですね。

 はい引きがすごくいい~~。こういうのを待ってたんだよ。こういうやつ。タイトル本当うまいな。好き。


6.悪役令嬢に拾われた俺が攻略対象ってなんの冗談ですか!?

**

 卯月って四月では。というのは置いといて。

 結構文字が詰まってるのに読みやすいんですよね。文章力だなぁ~。どんどん窮する様子がスムーズに描かれているので、内容が猛スピードで入ってきてハラハラさせられます。

 あとこういう高慢お金持ち系幼女もいいですね~。幼女に弱いので100点満点で10000点差し上げます。で、最後でタイトルをちゃんと回収しましたね。4000字丸ごと使ってタイトル説明する小説よりも、情報が多いのですごく好きなんですよ。


7.英雄、疲れに取り憑かれ

**

 タイトル駄洒落か~い。でも駄洒落好きなのでこういうのに弱いんだよなぁ。悔しいけど。最初の三行で、舞台と主人公の立ち位置が分かるの、すごくうまい。さすが第一会場。タイトルから薄々ギャグかなって思ってたけど、もう名前とスキルでめっちゃ爆笑しました。こんなのずるいよ~。

 と思ったら引きが強いですね。さすが第一会場(二回目)。


8.盗作マトリョーシカ

**

 めっちゃタイトルが気になってました。予想通りの展開だったら最高に面白いだろうなと思ったので。で、いざ読んでみたらやはり予想通りでめちゃくちゃ面白い。最後までぐいぐい読まされるんです。なぜなら、ストーリーだけじゃなくて書き方がすごくうまいから。内容の捻くれ感(褒めてます)とぴったり合う文体で書けるって才能ですよ。めっちゃ好きです。推してます。


9.時が空を救うまで

**

 タイトルの時点からファンタジーだろうなと思ったらやはり綺麗なファンタジー。タイトルと中身をぴったり一致させるって実は難しいので、これができる能力すごいと思います。途中から会話文だけになる技法とかが凝ってて、その細かいギミックで読ませながら最後のうまい引きに持っていく方法がめっちゃ綺麗。


10.たったひとつの冴えない証明

**

 こういう、既存有名タイトルを引っ張ってくる系のタイトルに弱いです。めちゃ好き。冒頭一文もめっちゃいいですよね。さばさばしているキャラもうまいし、ギャグの入れ方も綺麗だし、めっちゃ好き。

 最高なのが途中からどんどんミステリめいてくるところで、ミステリ好きな自分にはすごく好みだし読むスピードがぐんぐん上がるし引き方もよい。ほんと最高。


11.最凶忌み子の護り神

**

 タイトルだけだとファンタジーかと思ったんですが、まさかの現代もの。こういうギャップもすごく好きなんですよね~。いやファンタジーと言えばファンタジーなんですけど、冒頭に現代を持ってくるのが上手いですね。あと単純に、いわゆる現代ファンタジーと違って、現代の世界観に和風ファンタジーをぶち込んでくるのすごく好きなんですよ。陰陽道とか。

 会話もカッコよくてめっちゃ好きです。好き。はい、好きです。


12.陰キャは恋の作法が分からない

**

 序盤がタイトルに負けず劣らずの陰キャっぷり! 真面目に書いてるのに面白すぎてスイスイ読める。キモいキモいと言われつつ、陰キャ大爆発(褒めてます)する文章がすごくうまい。めっちゃうまい。それで最後の引きもうまい。これ続きがすごく気になります。


13.新米教師ユリカの四十九日間戦争

**

 タイトルから予想もつかないSFっぷり、というか特撮っぷり(?)にはすごく驚かされました。ギャップ好きにはたまらないやつです。ゲロゲーロとか典型的な感じなんだけど、だからこそ分かりやすくて、貴重な4000文字を別の描写に割けるのですごくいいんですよ。あと悪役って一発でわかる良さ。

 あとちょくちょく入るエロ?というかお色気ギャグも好き。要するに勢いが好きですこの作品。


14.陽当たり良好吸血鬼

**

 吸血鬼が出てくるのに主人公がリアルな法律とかにすごく悩むのが面白い。あと他の小説でも言ってますが、偉そうな幼女は可愛いので10000点差し上げます。

 個人的に好きなのが細かいギャグで、いちごパンツとかレディに年齢の下りとか、とにかくハイテンポなギャグが散りばめられてるのが面白いし読みやすい。ツッコミがキレッキレなのもいい。


15.第一印象◎なせいで逆に生きづらい

**

 これも面白いタイトル。絶対学園ものでしょと思ってたら、まさかのファンタジー舞台ですごく驚きました。ですが何度も言うようにギャップが好きなのでとても好印象です。

 ギャップがあったのに最後にちゃんとタイトル回収してくるのがすごい。こうきたか~って感じで。ハイテンポで話が進むのも、タイトルにマッチしていてすごくいいと思います。


16.目に見える魔法薬店

**

 リリス可愛いな~と思ったら、喋り方でめっちゃ笑いました。おじさんやん。でもそれがいい。薬草でコーヒーを作るって発想が個人的に結構好きなんですよ。リアルにもタンポポコーヒーとかあるもんね、確か。

 話の引き方が急なんだけど、逆に事態の唐突さが現れていてすごくいいと思う。ていうかいちいち擬音語が可愛いのが一番好き。


17.転生エルフは厭世生活を満喫したい

**

 改行がほとんどなくて驚いたんだけど、それでもすんなり読める。文章力ですね~。何でもかんでもダルいって感じの女の子エルフっていうだけで魅力的なのに、外見はおっさんとかキャッチー過ぎる。設定がとてもうまい。

 かと思ったら、母親との確執がすごくリアルで驚いた。タイトルのほんわか感とはかけ離れている文章力と内容なんだけど、タイトルをきっちり回収してくるのがすごすぎる。強い。


18.妹になった幼馴染が猫に取り憑かれて甘えてくる

**

 幼馴染が妹展開、悔しいけど好きなんですよ。タイトルから分かってはいたんですけど。

 絶対ラノベ的展開来るでしょと思ってたら、イロリちゃんとの微妙な距離感を描ききっていて、すごいと思った。かと思ったら急にイロリちゃんが猫になって、読者としてはある意味置いて行かれるんだけど、その置いてけぼりを楽しめるようになってるのがすごい。あと絵面がえっちい。


19.課金石で殴……れない!? ソシャゲ世界に転生したらデフォルトでハードモードでした

**

 思ったよりかなりハードモードだった。典型的なゲーム転生ものなんだけど、ストレスなく読めますね。ゲーム転生ものはあまり読んだことがなくて、これがほぼ初めてなんだけれども、運命にあらがえないという絶望などを書くのが上手いと思った。

 あと個人的に好きなのがルビ芸で、何故かというと、ルビ芸にはセンスが必要だから。やっぱ、必殺技名に大量のカタカナを振るのはロマンだよ。


20.僕の最後の14日

**

 一行目からタイトル回収してくるのすごいな。

 死神を見てから14日後に死ぬという残酷な運命を背負った少年が、幼いころからその運命とずっと向き合ったというのがすごく伝わってくる、非常に丁寧なキャラづくりがすごい。あと16歳らしい筆致を書くのがすごくうまい。これで作者16歳です☆とかだったら、納得はするけど驚きでひっくり返るぞ。

 死神同士がギャンドラーをめぐって争うという設定が斬新なのも好き。面白い。


21.俺と彼女の星間無双〜空から降ってきた少女にINする物語〜

**

 星を扱う作品って自分はすごく好きなんですよ。絵面が綺麗だし、ロマンがあるし、なにより物語のエッセンスにした時すごく深くなるんですよね。

 つまり何を言いたいかというと、星を見るシーンが、SFチックな世界観にすごく合ってて綺麗だと思った。でもこれ最後はバトルものになるのかなぁ。なったとしても、時折星を見たりしてほしいなぁ~。


22.触手少女は掴めない

**

 タイトル好きなんですよ。◯◯は◯◯ない、ってタイトル、語感もいいし興味惹きつけるし、王道なんだけどクリックしちゃうんですよね。悔しいことに。

 勢いで押してくる系かと思っていたんですが、情景描写がすごく良くて、なにより豊富な描写にもかかわらず物語のスピード感はすごいんですよね。技術すごい。

 本庄はホラー苦手なんですけど、ちょうどいいホラー感で、いい感じにゾッとさせられるバランスが最強。これすごく練られてますね。


23.怪物伯の飼育係

**

 一行目であり得ないほど笑いました。こういうファンタジーの世界観にことわざの概念があって、オリジナルことわざが錬成されるっていうのにめちゃくちゃ弱いんですよ。悔しい。あと個人的に、ロシアの世界観がめっちゃ好きなんですよ~。本庄の好みを知ってるのかなってくらいの作品です。

 これも改行が少ないんですけどスルスル読めるんですよね。

 全体的に伯爵たちのキャラがすごく立ってて、会議がすごく面白い。好き。


24.覚醒の神魔駆逐監(かくせいのゴッド・デストロイヤー)

**

 自分はルビ芸が好きなんです。なのでタイトルすごくいいですよね。

 これだけ濃いバトルを書いているのに4000字で収まるのすごいです。会話がメインなんですけど、地の文も手を抜いてなくて、バランスがすごくいい。眷属が復活する絶望のシーンが個人的に好きです。


25.怪物よ、喜びの涙を流せ

**

 タイトルを見て絶対ファンタジーものだと思った。かとおもったら、どろっとした内容なんですよね。読者の心に絡みついてくるというか。本文にすごく描写力がないと、どろっとした内容をどろっと書くことはできないので、実力が高いと思う。

 ヤンデレ? メンヘラ? なのかな。どちらにしても、主人公が淡々と語っているだけなのに、狂気が迫ってくるという描写はなかなか書けない。すごい。



第二会場

1.トライアングル・ラブ

**

 放課後にくつろぐ空間の描写がうまいですね。直接的に描写しているわけではないんだけど、周囲から丁寧に描写していって、最後にはちゃんと伝えたいことが伝わっているという感じ。すごい技術だと思います。これは物語全体に言えることでもあって、情報の出し方が上手い。トライの説明、不妊ウイルスの説明、ここら辺の出し方が自然でとてもいい。


2.転生殲騎ネクロトルーパー 再生の翼と、死喰の牙

**

 かなり独特の文章が面白い。いわゆる地の文がほとんどを占めていて、会話文は非常に少ない。しかもかぎかっこを使わないで<>。これは面白い取り組みだと思う。

 まるで詩のような文章の進み方は人を選ぶと思うんだけど、これがハマったら信者続出だと思いますよ。現代ものだとキツイかもなんですけど、ファンタジーだと世界観にも合いますし。


3.暇を持て余した神々の番組「異世界人と女子高生 バカップルの軌跡」

**

 アイデアめっちゃ面白くないですか? 神が番組を見ているというギャップがすごくいいと思います。かつ、冒頭の「まずはこちらをお聞きいただこう」がすごく好き。ツボ。

 話自体は三人称神視点なんですけど、それをこんな使い方するか~と思って感動してました。すごいな。つよい。めっちゃ好き。

 正直自分はラブコメあんま好きじゃないんですけど、それでもこの作品は、このコンセプトというだけでめっちゃ続き読みたい。


4.その本に導かれて

**

 文章がめっちゃ凝ってますよね。これなんていう技法だったか忘れたんですけど、リフレインだっけ。ちゃんと使いこなせてるのがいいですよね。基本のように見えますけど難しいことです。それとギャグっぽいストーリーがかなり綺麗に組み合わさってるのがすごくいいなと思いました。終わり方も綺麗ですし。


5.前世で無敵だった勇者の機械セカイ魔法無双

**

 最初の二行で、主人公が今は囚人であるとわかる描写がいい。素早く主人公の立ち位置と話の道筋を見せることができるあたり、かなり慣れてる人だと思います。あと、翼のシーンに行くまでの流れが非常に綺麗。自然さと展開の素早さを両立するのはすごいと思いました。


6.魔法使いの師匠~スリム・ウルフは真っ赤な悪夢を蹴散らせるか~

**

 タイトルからファンタジーだとある程度は分かるんだけど、一行目からロンドンという地名が出てくることで現代(?)ファンタジーなんだなとわかる点がすごくいいと思う。自分はファンタジー畑の人間じゃないので、こんな人間にも親切。世界観がすごく個人的に好きで、ロンドンぽさを凄く感じるし、キャラの立ち具合が絶妙で、学校のシーンにもリアルさを感じた。


7.俺と幼馴染が殺し合うまで、あと七十五日

**

 征四郎と寧子のやり取りが好き。というか寧子のキャラがすごく好き。そもそもキャラの描写が、直接的表現だけじゃなくて、間接的表現も多用することですごく深みが出ていると思う。それにエリーゼがいい感じに絡むのがいいですよね。

 最後を見るに、続きはバトルものになる(そしてバッドエンド感がすごくする)んだろうけど、バトルするキャラに感情移入するために最適な冒頭4000字だと思う。


8.竜菓子店シャルロッテへようこそ!

**

 序盤がすごく好きなんですよ。竜の涙の言い伝え(?)から、「お金が足りなーい!」に至るまでの流れが。この流れが綺麗なので、後半に対しての話の期待感が上がるというか、ああ後半もハイクオリティが来るんだろうなと安心して読めるんですよね。この作品は結局、最初から最後までずっと雰囲気が安定してて、すごく穏やかに読めました。雰囲気作りが非常にうまい。


9.慣れないダンスをニューゲームと共に

**

 ダンスってタイトルを見て、なんかほのぼのを想像してたんですが、すごく世界観がクールだった。男子二人の掛け合いがめっちゃ好き。個人的なツボをついてきた。しかもその世界観がずっとうまく維持されてるんですよね。

 内容のファンタジー感にふさわしいライトノベル的書き口が上手くて、読んでてドキドキするんですよね。


10.異世界三度笠無頼 ~凶状持ちの股旅者が精霊の異境へと旅立った~

**

 主人公の語り方が死ぬほど好みです。めっちゃうまい。なにこれ。才能。自分が江戸にいる気分になる。「江戸の雰囲気が最高」これを書くために3000字くらい感想書けそうなくらい好き。

 この雰囲気に異世界ぶち込んじゃうんだろうか、と思ってドキドキしてたんですが、うまかった。声出そうなくらいうまかった。悔しい。


11.架空未来怪異譚

**

 このタイトルから、まさか退廃系SFが来るとは思いもしなかったんだけど、うまいですね。文章もそうなんだけど、雰囲気作りが上手い。最初数行を読んで世界観がイメージできるし、その世界観と、親との確執の描写との絡みが上手い。

 ところどころの誤字にとある特徴があって、小説書くの初心者の方かなって思ったんですけど(違ったら本当にすみません)、この文章を初心者で書けたら天才ですよ。上級者でも相当うまいです。


12.ヒロインは全員ハーフアップにしろ。

**

 この作品、某方が作者だと死ぬほど言われてるのを知ってはいるんですが、それを除いてもタイトルがすごく好きなんですよ。たぶん書き出し祭りのタイトルの中で一番好き。

 これがただのタイトル芸だったらツラいな~と思ってたんですが、中身読んで安心しました。偉そうな言い方ですが。かなり文章が高くて、スルスル読める。テンポがいい。読みやすい。とにかく良かった。

 ハーフアップ愛がみしみし伝わってくるのがすべての良さですね。勢いがいい。最後の描写が、もうハーフアップ愛にほんと溢れてる。良さを直接語るのではなくて、ハーフアップが簡単にできるんですよってさりげなく示しているのがとても良い。好き。


13.好きな人に好きと言われたら死ぬ病と診断されたので、俺は君に告白させない

**

 えっ、このタイトルからこの冒頭来るんですか!? 笑うしかないでしょ。めっちゃ笑いました。だって、設定自体はすごく重いのに、ライトになっちゃうじゃないですか。めっちゃ面白いです。

 話は実は結構重くて、なんなら主人公死にかけてて、でも書き方は勢いが合ってハイテンポですごくライト。このギャップが最高なんですよ。あの一行で、この雰囲気を作り切っちゃったの死ぬほどうまくないですか? 悔しい。面白い。面白い。うん面白い。


14.ドナ☆ドナ物語~その実験は、伝説を生み出した~

**

 タイトルから絶対に勢いで突っ走ってくるんだろうと思ったら、それを裏切らない爆走! 非常に気持ちいい疾走感! 心地いい!!

 主人公が牛っていうのは、タイトルから考えられる範囲の中ではあるんだけど、結構衝撃的でした。疾走感はすごいんだけど、一方で勢いに頼らずに文章力もちゃんとあるのが好き。続きが気になるな~~。


15.秘密結社"国営"悪役代行係

**

 タイトルからはクール系の話かと思ったんですが、居酒屋でのんびり話すストーリーが来て驚きました。でもこういうの好きなんですよ。

 そもそもコンセプトがすごく良くて、普通の異世界もののアンチテーゼになっている。それだけでぐいぐい読めるんです。続きが気になる。


16.職業:探偵(クラス:ディテクティブ)

**

 ミステリと見せかけてファンタジーなんだろ~?

 などとタイトルを読んで穿っていたのが間違いでした。めちゃくちゃ面白かった。男のキャラが死ぬほど立ってる。大好き。アイデアもよければ文章もいいし、引きもめっちゃいい。めっちゃ主人公を応援したくなる。読んでてドキドキさせられる。もうミステリチックとか置いといて、とにかく面白い。

 あと偽名のセンスがクッッッソ好き。連載しますよね? しますよね? 続きを読ませろ。いいから読ませろ。書け。


17.魔法使いは正体を隠したい

**

 異世界転移をっていう冒頭がすごく惹かれるんですよ。異世界転移を経験し終えた人が主人公っていう作品、めちゃくちゃ珍しいんですもん。斬新。

 一つ言いたいのが、文章力めっちゃあるってこと。シンプルなんだけど文章がすっごく読みやすい。シンプルなのに他人を唸らせる文章を書くってすごく難しいですからね。プロですよって名乗られても、でしょうねって返すと思う。そのレベル。めっちゃレベル高い。

 個人的に好きなのが実は会社の描写で、会話がいちいち面白いんですよ。課長が主人公にめっちゃ嫌われてる描写がところどころにあるんですけど全部好き。


18.異世界で新装開店♪~イケメン黒猫と女子高生錬金術師の雑貨屋さん~

**

 女子高生らしい語り口がすごくうまいと思う。異世界に普通に転生するだけなんだけど、本当に女子高生が転生したらこう言うだろうな~って思わされる。

 あとイケメン描写がうまい。イケメンが単なるイケメンとして描かれているだけではなく、動作やシチュエーションでさらに映えているのがいい。つまりシーンが多いってことです。うまかった。


19.NTR息子、母の七光りで異世界の暴君となる

**

 全然関係ないんですけど、キャリア警察官が三十歳前にして警視っていう描写、ドンピシャなんですよ。作者の人、ミステリ界隈なのでは。あるいは、すごく調べ物をするタイプなのか。どちらにせよ、このような丁寧な描写によって続きを読むうえで安心感が出る。

 そしてその安心感が裏切られることがなく、読み応えのあるストーリーと満足感ある引き。まさかこのタイトルで、こんなミステリ風味のあるしっかりした面白い話が来るとは思いもしなかった。すごく面白い。


20.セブン・サークリッズ 〜アルファ・テストは現地にて〜

**

 これがいわゆる、三人称視点と一人称視点が交互に来るタイプか。噂には聞いていたものの実際に読むのは初めてだったんですが、作者の方の使い分けが上手いのか、ごっちゃにならずに読めますね。

 バトルシーンも、日常的なのどかなシーンもいいバランスだと思うし、引きもしっかりしているし、続きが読みたくなる。


21.生きてる探偵、死んでる助手、事件は夢の中で。

**

 ハイ冒頭なにこれ死ぬほどうますぎませんか?

 こういうのに弱いんですよ。ただのポエムとかじゃなくて、タイトルを読んで冒頭を見た瞬間にぐっと引き込まれる。これすごく強い。

 ミステリかなと思ったら、不思議系というかオカルト系というか(表現見つからなくてすみません)。それがほんとうまいんですよ。

 とにかく話の構成がいい。いいえのくだりの入れ方が最高。好き。


22.蚊の魔王に転生したのでスキル『コピー』で魔界を塗り替えていきます!

**

 ここで一句で死ぬほど笑いました。こういうのにほんと弱いんですよ。ギャグってセンスすごく問われるんですけど、めっちゃセンスが光ってる。福神漬けのセンスもいいよね。

 コピー系の能力って異能の定番だけど、主人公が持ってることは少ないし、うまくギャグに生かしているのが非常に面白い着眼点だと思う。ストーリーがハイテンポなのにも合っていて好き。

 

23.ダンジョンとヒモ

**

 ヤドカリ亭のアングラ感の描写がすごくいい。細かい描写表現が稚拙で申し訳ないんだけど、テーマパークの海賊のアトラクションに乗っているみたいというか、とにかく再現度が高いと思った。

 あと、ストーリーがはっきりしている点と、物語の中で時系列を丁寧に追っている点がわかりやすくて親切。やはり読者に親切じゃないと読みにくいのでほんと大事。


24.超常探偵ゼオ

**

 キラキラネームかよ! めっちゃ笑いました。何度も言いますが、こういうのにほんと弱いので。第二会場は全体的にギャグがクッソ強い。

 結構しっかりミステリしてて、すごくワクワクする。めっちゃ褒めてるんですけど、これもしオチがクソつまらなかったとしても、それまでが死ぬほど面白いのでオールオッケーになっちゃう系の作品。でもこれを書く力があったら、まず間違いなくオチは面白いのですごく期待できます。


25.ヤミ帝都事変・喫茶ハガクレ

**

 帝都系というか、あの時代を扱う作品は定番なんですけど、すごく世界観を作りこまなきゃいけないんですよ。ちょっとズレるだけで雰囲気が壊れちゃうので、ほんと注意が必要で。これはちゃんと世界観が作りこまれているので唸らされました。めちゃくちゃ細部まで凝ってるのがほんとすごい。これマニアが書いてるでしょ。

 あと何がいいって、これスパイ系なんですよね。スパイものめっちゃ好きなので、よだれ垂らして読んでましたよ。汚くてすみません。シーンがいちいちスパイもの好きのツボを突いてくる。すっごく本庄好み。


第三会場

1.異世界の勇者、武陽に立つ

**

 西暦2004年というのがすごく意外でした。普通の作品だとほぼ現代ですよね。この時期はweb小説なんかほとんどなかった時期ですし、2004年設定の転生ものの小説は史上初めてなのでは。

 という蛇足は置いといて、タイムトリップものと異世界ものを絡み合わせるという設定は非常にキャッチーだと思います。ところどころ江戸らしい表現が見られるのもすごく面白い。


2.ネームレス・フェアリーテイル

**

 文章力高いですね~。童話をテーマにした世界観というか、おじいさんの語りの雰囲気の完成度が非常に高い。そこから物語のメインにスムーズに入る技量も凄い。

 文章がすごく美しいんですけど、単にきれいな言葉を並べるのではなくて、すごく上品に丁寧に美しさをにじませてるのがめちゃくちゃ凄いです。


3.夜明け前の河川敷で僕は先輩と

**

 章分け(?)が初めて見るスタイルで面白い。

 僕と先輩のやり取りが、すごく細かく描かれているんだけど、その描写の一つ一つから先輩の人柄がわかるのがいいと思う。

 テーマもまたすごく特殊で、処女受胎というなんとも変わったものを扱うんだけど、それをあえて軽く扱っているのがコミカルで斬新だと思う。


4.勇者は何度でも立ち向かう

**

 勇者がカミーユであるという設定は新しいと思う。そして、転生ものだと神様は冒頭にしか出てこないとか、お助けキャラ的な感じになっていて、基本的に主人公たちとは別物になるんだけど、この作品では天使と勇者の絡みが多くて、これもまた斬新。書き出し祭りなので冒頭ではあるんだけど、これ単体でも楽しめるというテイストも好き。


5.傭兵、魔石、その使い道

**

 どうでもいいですが、シーハ・ナってすごく変わった名前だと思います笑

 コミカルな傭兵たち(しかもちゃんとキャラが立っているのがいい)の会話劇に、ヴィーラの苦悩をうまく混ぜ込んであると思う。その中に際立つシーハ・ナの決意、これがまたうまく書けてる。三つの要素を4000字でうまくまとめているというのはすごい。


6.たとえ人を殺してもバレない世界でも俺は人を死なせたくない ーグッド・ラッカーズー

**

 人間の不幸、また人間の生死、人を殺す殺さないという重いテーマに、グッドラッカーズのコメディなやり取りを混ぜていることで、重厚さとテンポを両立させているのがすごいと思った。

 あと引きもうまくて、殺人と自分の母親の生死を絡めることですごく自然にバトルシーンからラストに持って行ってるんですよね。これすごくうまい。


7.幾魔学地下都市の猛城セロは、斬殺探偵なのか。

**

 これかなり好きな作品でした。漫画チックというか、ダークファンタジー系バトルもので頭使う系の漫画っぽさを感じました。漫画っぽいというのはめっちゃ褒めてて、すごくいい感じのハイテンポなんですよね。スルスル読める。少年ガンガンに載ってそう。

 あと個人的にワトのキャラめっちゃ好きなんですよ。めちゃくちゃキャラ立ってる。


8.復讐者の再臨

**

 魔王城から始まるというのが面白い。しかもバトルシーンを書くんじゃなくて魔王の死体が転がっていて、さらに共に戦ってきた仲間に裏切られるという衝撃的なシーンが連続しているのでグイグイ読める。

 タイトルの通り復讐ものなんだけど、復讐に至るまでの過程が自然なのがとても良いと思った。


9.転生

**

 どうでもいいことですが、このタイトル、エゴサ死にませんか?

 というのは置いといて、雰囲気作りが死ぬほどうまい作品。詩のような耽美な文章によって、深遠な世界観が作り上げられている。

 ARBEIT MACHT FREIって、アウシュビッツ収容所の入り口に書いてた言葉ですよね。そしてあの場所では、確か双子の非人道的な研究もされていましたね。それを直接表現せずにわかる人にだけわかるようにしている点が大好き。

 ドロドロのバッドエンドになりそうな気がしますが、それでもめっちゃ読みたい。好き。


10.宙へ翔ぶ日

**

 序盤から宇宙(というか他の星)という場所をきちんと提示しているので非常に読みやすい。その宇宙を舞台にした壮大な世界観に、日本やオーストラリアといった国の概念を混ぜ込んでいるのがとても好き。

 登場人物が、ほぼサオリ一人なのが、彼女だけに集中できるという点ですごくいいと思った。あと、最後の引きがすごく良くて、一見唐突に見えるんだけど、ちゃんと丁寧に誘導された上での引きなので、すごく自然にぐっと感情が掴まれる。


11.エンシェント・シャイン・プリズン 〜神と、人と、信仰と〜

**

 世界観の作り方が非常に丁寧な作品だと思います。

 いわゆる、なろうテンプレとは全く違った、王道系のファンタジーなんだけど、しっかり個性を混ぜ込んでいるのが非常にいいところだと思う。記憶喪失など、一つ一つは王道のテーマなんだけどうまく使っている。

 あと心情吐露の描写が上手くて、丁寧な世界観とマッチしていて好き。


12.へっぽこ勇者は魔王を倒したい!〜心配されすぎて強者が仲間になってくれてます〜

**

 これもとてもよかった。おねショタとして読んでも面白いし、主人公のへなちょこ具合のバランスも良くてスルスル読める。さらに、お姉さんの描写もすごくいいし、姉が魔王であり倒されるために主人公を強くする、というどう考えてもバッドエンドにしか行かない切なさも併せ持っている。とにかくそのバランスがすごくいいし、作風というか書き方も作品に非常にマッチしているのがいい。

 一話目としてだけではなく、この部分だけで十分楽しめるというのもまた魅力の一つ。


13.君がいなくなった世界で、僕はこのカレーライスをうどんだと信じて食べる

**

 姉のキャラめっちゃ濃いな。すっごく魅力的だし、

 何より具体的に姉の知識が披露されているのが良くて、これがなかったら単に設定をマシマシにしているだけのキャラになっちゃうんですよね。姉の言葉に重みがあるから、キャラに深みが出ているのがすごくいいと思う。

 あと序盤から姉はガラスの向こうにいるので、つまり姉は逮捕されているわけで、ここで読者の姉に対する気持ちに楔を打ち込んでるんですね。これがすごくいい。姉の話ばっかりしてすみません。めっちゃキャラ気に入ったので。


14.スタプリ!―舞台の上のスタァライトプリンセス

**

 全生徒がアイドルの学園! プレッシャーきつそうだなぁという野暮なツッコミは置いといて。その学園の入試時点から描くというのが新しいんですよね。しょっぱなから主人公に根本的な壁が立ちはだかるという展開がすごく好きなので、とてもいいと思います。

 王道of王道なんだけど、王道の中でもクオリティが高いので物凄く魅力的。

 日曜朝にプリキュアの一つ後の枠で放送してほしい。女子の心わしづかみでしょ。


15.神の遊戯もしくは退屈した神の暇潰し~ボクの考えたサイキョウの主人公~

**

 創造神が最強の主人公を作るまでの流れが非常に自然でスルスル読める。しかも独創的ですごく面白い。序盤でこれを見せつけられると後への期待がすごく高まるんですよね。

 あと会話劇がハイテンポで、ギャグがふんだんに散りばめられているので読みやすい。とても面白い作品だと思う。


16.セーラー服を着た僕の恋愛奇襲戦 〜めざせミス(?)文化祭〜

**

 冒頭でめちゃんこ笑いました。知らずにセーラー服を着てしまって大恥をかく男の子という設定はずるいぜ笑

 まあ、このご時世だと、アイデンティティ的な意味で特殊な事情があるんだと腫れもの扱いされたりする方が多いかもしれないけど。

 ティラノサウルス(のスーツ)が出てくるのも破壊力が高いよね。最終的に全裸になるのも。ギャグにうまいこと振り切っている感じが好み。


17.乙女ゲームのヒロインに転生しましたが、なぜかタイムスリップしました。

**

 乙女ゲーのヒロイン転生に魔王討伐が出てくるだけでも既に興味深いのに、ゲームをクリアしたところからスタートするというのが面白いですよね。普通はクリアするまでの流れを小説にするものですし。

 全員に拒否されてしょぼくれていたらタイムスリップしたという流れで爆笑しました。タイトルをしっかり回収したのも凄いし、これすごく続きが気になる。


18.マガツキの夜 ~朧夜見奇譚~

**

 繁華街に街灯に公園という、モロ現代の世界観に、ホラーちっくというか、置かるティックな要素を混ぜ込むことで雰囲気がすごく出ている。洋風オカルトじゃなくて和風なのも個人的にポイントが高くて、すごく深みが出ていると思う。

 神と人のハーフというのもいいよね。その子が小学校に入学して、入学式には他にも神が出席するというところ、くすっと笑えるし面白い。とてもいい引きだと思います。


19.鎮☆ポコ~タヌキが異世界でいきなり最強!?~

**

 タイトルよ。深夜に読んだからめっちゃ笑ってしもたよ。

 ハイ絶対ギャグと思ってたら結構語り口が真面目でギャップを凄く感じた。世界観が和風なんだけど、ただの和風異世界じゃないのがすごい。異世界転生なのにここまで個性出るんだなぁ。あと表現の古めかしさがすごくいい感じに物語とマッチしていてよかった。

 このタイトルでここまで面白い、しかもこの方向に面白いとは……。予想をめっちゃ裏切られた……。悔しい……。


20.白黒イルカは弱肉強食の世界で今日も切り札をドローする

**

 海の世界が舞台というのがちょっと衝撃的でした。白黒イルカというのは、人間につけられた二つ名とかかな~と思っていたので笑

 海の動物がカードを使ってバトルするというのがすごく斬新で面白いと思います(斬新すぎて、タイトルだけだと自分は人間の話なんだと勘違いしたくらいには)。

 文字通りの弱肉強食をカードバトルの世界に持ち込むのがほんと面白い。アイデアがめちゃいい作品です。


21.魔女のお茶会にようこそ

**

 タイトルからしてファンタジーものかなと思ったら、まさかの現代ものだった。まあ途中からファンタジーになるんだけれども。このだんだんと移行していく描写がすごくうまくて好き。

 そこからこんなバトルになってこのような結末になるとは思わなかったけれども、期待を裏切られたとかではなく、ただただ驚いて感嘆した。引きもうまい。続きは切ない話になりそう。


22.不死と孤独とナイトウォーカー

**

 私と少年の不気味な関係にゾッとさせられたところで回想に入るのが上手い。そこから主人公の独白があって、ああこの人ミステリで言えば信頼できない語り手なんだなって思わされる。この流れが非常にうまいですね。ここまで読者の感想というか感情を思い通りに操れるのは才能だと思います。

 最後にまた不気味な関係の少年に戻る。あえてタイトルはほとんど回収していないんですけど、だからこそ続きが気になります。


23.歌姫オバケとの出会いから始まる、俺の非日常高校生活

**

 主人公のオバケさんへの憧れの描写から、その正体が大葉である衝撃までの流れがすごく自然で綺麗だと思う。これはかなり練られている。

 また、そこから文化祭で歌いたいと誘う流れも自然で、雰囲気が丁寧に作られている。繊細なボーイミーツガールを、全く傷つけずに表に出してくるのは難しいので、それをやすやすとこなせるのはすごいと思う。


24.Fランク冒険者、結婚したいので実力を解放します。ギルド? 十年は行ってないけど?

**

 リルめっちゃかわいい。レベッカとの関係もすごくいい。さらっとその二人を助ける主人公のかっこよさが魅力。タイトルを見て、なろうテンプレ系かなと思っていたら、すごく文章に含みがあって読みごたえがあった。

 タイトルがそこでそういう回収がされるのかというのが驚き。最後でタイトルが出てくる展開はやっぱり燃えますね。

 

25.魔女と髑髏と

**

 ファンタジックな書き方がすごく好き。雰囲気作りが上手いので、メイルの魅力がすごく輝いている。メイルとアインの関係性がすごく個人的に好き。互いが互いの力になって戦うというのがすごく面白いと思う。

 最後に急にコメディになるんだけど、それもくすっとさせられて面白い。続きが気になる作品。


第四会場

1.はる

**

 関係ない話しますけど、これもエゴサ不可能なタイトルですよね……。

 タイトル自体はエゴサできないだけで超良くて、すごく含みがあって惹きつけられるタイトルなんですよ。

 実際文章を読んでみたら、しっとりした深い文章が来て、感激しました。この純文学的というか芸術点がすごく高いこの作品を、まさか書き出し祭りで読めるとは思いませんでした。めっちゃいい。


2.世界で一番カッコいい告白

**

 純粋な恋愛もの。あと青春感の圧倒的強さ。これも書き出し祭りに出てくるのはすごく意外なんだけれども、これをここで読めて良かった、というのが正直な気持ち。輝いてる。すごく輝いてる。自分はド陰キャだったので、こういうのには嫉妬をしちゃうタイプなんですが、それでもここまで晴れやかな青春だと、もはやすべてを投げ捨てて応援したくなります。それだけのパワーがこの作品にはある。


3.最初から始めますか? →はい いいえ

**

 タイトルをまるっきり放置して普通の物語が始まるところがすごくいい。タイトルが面白いだけに、読者は心が落ち着かなくなって次へ次へと読み進めてしまう。これ狙ってやってたら天才ですよ。でも男の不気味さがこれとマッチしているので恐らく狙ってやってるんだろうな。すごい。

 最後の方でやっとタイトルを回収に来るんだけどそれで終わりではなく、最後に凛香の願いで終わるところがいい後味してます。これはすごいな。

 

4.七大魔女会議

**

 今回、すごく魔女関係の作品多いですよね。基本的にすごくハイレベルなんですけど。これもそれに漏れずハイレベル。すごい。

 例えば、年月の単位がいちいち長いところとかクスッと来るし、大魔法使いの登場の仕方もいい。胸のメダリオンの使い方が最高に良い。アイテムとして完璧。

 これミステリであってほしいな。めっちゃ続きが読みたい。


5.蒼鷺と群青

**

 これめっちゃ面白い。老人ホームの老人が生き生きしている姿もいいし、狂言立てこもり事件にドキドキさせられる。そこに主人公の困惑がいいバランスで合わさってとても面白い。しかも単に金が欲しくて事件を起こそうとしているのではなく、長男への反抗として事件を起こしているのが、すごく深い。刑務所は最高の老人ホームという皮肉も最高。これを4000字で書けるとは。大好き。

 これめっちゃ続きが読みたいんですけど、連載しますよね?


6.我が子は魔王様 ~子供が静かな時ろくなことしてない~

**

 実はタイトルがめっちゃ好きなんですよ。子供が静かな時ろくなことしてない。これはほんとそう。悪ガキだった自分が言うんだから間違いないです。

 というのはおいといて。育児に慣れていない父親が子守をするという時点でハラハラさせられる。嫌な予感がする。シチュエーション選びが完璧すぎます。作者さん凄い。

 そこからこの最後の展開に持っていくという時点で脱帽。これはすごい。ほんっと面白い。


7.復讐少女は不死者と踊る ~UNDEAD MURDER TALE~

**

 細かいところなんですけど、銃の描写がめっちゃ濃い。自分はこういうのに弱いので、これだけで10000点差し上げます。

 話は物語に戻りますが、大男のキャラ立ちがすごくいい。復讐少女より、正直こっちの方がキャラ立ってるんだけど、それでいいんですよ。物語としてその方が強い。これすごく面白い。


8.いづれ神々の終末戦争

**

 序盤がいい。二十歳で成人式やって短大出て、というこの希望コンボからの火事という絶望。しかも火元は自分の部屋。上げて落とすのがすごくうまい。

 そこからクウちゃん召喚の流れは急なんだけど、それをうまくコメディに落とし込んでるのですごく自然。かえって笑えるポイントにもなっている。

 あと祭壇とダンジョンを絡めるのも斬新ですごく面白かった。主人公、クウちゃん好きすぎでしょ。でもいい相棒になりそうだなぁ。


9.厨二詠唱はロマンだろうがっ!~契約相手は厄災級ばかりです~

**

 典型的な主人公無双なんだけど、ストレスなく読めた。多分かなり書き慣れてる人が書いたんだと思う。主人公のランクが低い理由もしっかりしていて、むしろランクが低い方が強い、という逆転現象をすごくスムーズに表現しているのが本当にすごいと思う。

 こういう地道な積み重ねが世界観を構築するんだなぁ。これは連載化したらめちゃくちゃ人気出そう。


10.世界かキミか、なんて言われても

**

 タイトル通りのないようなんだけど、すごく切ない。あえてコメディタッチで書いていて、重い雰囲気は和らいでいるんだけど、世界とミリアの二択という厳しい現実にはちゃんと向き合っている。この絶妙なバランスのおかげで、かえって切なさが際立っている。これ狙ってやってますよね。すごい。

 どう転んでもバッドエンドにしかならない気がするんだけど、ちゃんと結末に向かうまでに物語はめちゃくちゃ深くなっているに違いない。自分はセカイ系に弱いんで、こういう話大好きです。


11.天才剣士と見習い天使〜不幸だなんて言わせません!〜

**

 イリアかわいいなぁぁあああ!!!

 可愛いキャラを可愛く書く、それは実はすごく難しい事なんですよ。外見描写がどうこうではなく、行動で可愛さを示す。めっちゃすごい。イリアほんとかわいい。

 互いを信じる、という簡単に見えて難しい条件をこの物語に持ってくるのがすごい。こんなの出されたら、絶対に物語が深くなるに決まってるじゃん。


12.読する文学、毒する少女

**

 最初の三行で死ぬほど笑いました。ええ、こんなのありなん?

 あと先輩のキャラが猛烈に濃くて大好き。美人お姉さんで、かわいくて、お上品で、でも紙を食べちゃって病院に運ばれる残念な人。最高かよ。

 でも紙を食べるという行動はギャグじゃなくてすごくシリアスな事情があるというのを知った瞬間、物語に深みがグッと出ますね。文乃と読下さんの関係もすごくいいし、本当にこれはめちゃくちゃ強い。勢いで引っ張るんだけど、勢いだけじゃないのが強さ。面白い。


13.ダメOLから始まる、男子大学生のおねーさん攻略記

**

 ダメOLのダメ感がツボ。このOL、だいぶダメですよね。めーっちゃ好き。おねーさんを書くのが上手い作品が連続するなんて思いもしなかったけど、読んでて幸せな気分になる。

 これは心を癒す作品ですね。第一話だけなのにすごく癒されたもん。週に一度更新とかだったら、更新日に起きた瞬間読むのが楽しみになる系の。

 最後なんか修羅場っぽくなってて笑っちゃった。それを含めても好き。面白い。


14.呪われシンデレラ

**

 一気読みした。めっちゃ面白い。指輪が取れない、から始まって、事態がどんどん重くなるという展開が素晴らしすぎた。どうあがいても絶望なんだけど、それをテンポよく書いているので、先を読むのが止まらない。

 終わり方が唐突なんだけどそれがめっちゃいい。えっここで終わっちゃうの、続きを!! ってなるから。これ面白いな。好き。


15.「私に、人の殺し方を教えてくださる?」

**

 主人公二人の会話劇が面白い。タイトルからして、絶対にお嬢様が出てくるファンタジーだと思っていて、ふたを開けたら男二人だったので驚いたと言えば驚いたんだけど、その男二人の会話があまりにも面白すぎた。

 この話の一番すごいところは最後ですよね。まさかこのような手法を使うとは全く思わなかった。タイトルで惹きつけて、ずっと最後まで読者の心の中にタイトルを残して、ここで落としてくる。これはすごい。


16.赤鬼、喜怒哀楽

**

 泣いた赤鬼を踏襲してるんですね。童話調の語り口調でありながら、ストーリーはすごくリアル。赤鬼の気持ちにはすごく共感できるし、向かっちゃいけない方向に向かっちゃう気持ちもわかる。読者をすごく切ない気持ちにさせるのが上手い。

 最後がすごくいいんですよね。この引きはうますぎる。思わず感嘆の声が出ました。続きがめちゃくちゃ読みたくなる。ハッピーエンドだといいなぁ……。


17.罅だらけの晩餐を

**

 癖が強い文なんだけど、これがすごくいい味を出している。世界観の重厚さを強調しているし、その世界観も丁寧に作られているし。

 主人公側が科学を否定するというのがすごく斬新な設定だと思う。普通はなんだかんだ言って主人公が科学側につくことが非常に多いので。

 せりふ回しの雰囲気もすごくいいんですよね。これ、ハマる人は死ぬほどハマる作品だと思う。

 


18.少女ふたりたび異世界

**

 リズムの凄くいいタイトルで興味を惹かれていた作品。実際読んでみたら、タイトルの期待を裏切らない、すごく雰囲気が良くできている作品でした。

 異世界に修学旅行に行く福岡県の高校があまりない、というのがすごくミスマッチ感を出しているんだけど、それが却ってめちゃくちゃリアルになっていて、イチオシの文章です。まさにふたりたびで、これはすごく少女を応援したくなる名作。


19.酒姫しゅき、それは神殺しの酵母をその身に宿す乙女たちの呼称である

**

 自分は生物系の大学生で生化学もやってるので、ああアルコール発酵ね~って感じでタイトル読んでたんですが、冒頭の注意で笑いました。こう来るか。これずるいわ。ガイドラインをギャグに落とし込む一芸には、本当に舌を巻いた。めちゃくちゃ笑った。死ぬほど笑った。

 そもそも主人公二人の掛け合いがすごく面白いんですよね。それに笑っていたら最後に意表をつかれて、続きが気になったところで終わり。これはすごい。


20.花嫁無双ー獅子と魔王と新郎とー

**

 神が出てくるまでの展開が怒涛なんだけど凄く惹かれた。笑ってしまった。神父がガチ硬直とか本当に面白すぎてずっと笑ってた。

 神のはっちゃけ具合がおもしろい。はっちゃけってズレると死ぬほど寒いんだけど、これはめちゃくちゃ面白い。才能。

 茉莉亜ちゃんすごく頑張って……。これは茉莉亜ちゃんを応援する小説になるやつだと勝手に思ってます笑


21.捨てられ孤竜のヴェインリカバリング

**

 タイトルを見返したら普通のことなんだけど、まさか竜が語り手になるとは思いもせず。びっくりしたけど面白い設定で引き込まれた。

 勇者クソやな~、ラヴィかわいいな~という読者感情の誘導がすごくうまいと思う。純粋にラヴィかわいいし。あと主人公の竜とのコンビがすごく愛称よさそうなのもいい。


22.ロストマン・レクイエム

**

 学校の怪談的な話から、最後急に話の作りが変わるんだけど、全然違和感なかった。最後すごい勢いでびっくりしたのはしたけど。

 学校の怪談的な雰囲気の作り方がとてもうまい。怪奇現象を周囲に話すも、信じてもらえない描写や、ひとはが遠出して、透明人間を探していたら暗くなっちゃって、という描写はまさにそれ。ショッキングな怖さを作るのではなく、ほんのりじわじわ怖くなっていくのがジャパニーズホラーって感じでうまいと思う。


23.カメレオンは透明人間に恋をする

**

 カメレオンに対して「かわいそう」という強烈な概念を読者に投げるところから始まって、南雲のシーンに入るところがすごくうまいと思う。

 そこから一気読みしてしまった。透明人間が転校生なんだなと序盤で分からせておきつつも、主人公の感情の吐露が上手いのでグイグイ引き込まれて、最後の透明な声で読者を一気に落とす。これはすごい。


24.WEb小説から始まる恋

**

 主人公の両親の幸せそうなできちゃった結婚、すごくその描写が上手くて、思わず読者を羨ましがらせる。これすごく難しいことだと思います。

 web小説の話は物語途中に出てくるのにタイトルがWEb小説なのはそういうことですよね。web小説から深まっていく仲というのが面白い着眼点だと思う。

 続きを読んでみたい。


25.再生のギルド。上司一人でここまで組織が変わるなんて

**

 書き出し祭り、第四会場の最後にふさわしい作品だったと思う。

 ギルドの受付嬢という、誰もが知っているけれども決して目を向けられることのなかった人が主人公になっているのが面白い。

 上司の悪辣さと、主人公たちの苦悩の描写がすごくうまいので、読者がすごく共感できる。文章力が高いと思う。

 タイトルと最後あたりの少ない描写で、アレンの敏腕さが分かり、あえて直接的に描写しないという選択を取ったのも凄い。面白かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る