第7話 「貴方が立てるのは、どんなスレ?」
「しかし、シャッターを閉め忘れていたのは迂闊だった」
この悪夢の世界での初めての勝利を得た僕がまずしたことは、玄関のシャッターを閉めることだった。操作スイッチを押し、シャッターを下ろしていく。
下りていくシャッターと床の間から外を覗くと、見える範囲だけでもゾンビが数体いるのが確認できた。
戦って倒しても良かったが、これ以上音を立てて他のゾンビや魔物が寄って来るのを避けるためと、さっきの戦闘で精神的に少し疲れてしまっていたでの止めておくことにした。
やれやれ。僕も随分と鈍ったもんだ。
けれど、なにも初日から無理をすることもない。
それに、ゾンビを薙ぎ払うよりも先にしなければいけないこともある。
「せっかく1千万dpもした10連ダイヤガチャで出したアイテム達をまだちゃんと見てないからな」
スマホの機能だってまだ試していないものがある。
結構、色々と忙しいな。
シャッターが完全に閉まったのを念入りに確認して、備蓄倉庫でクラッカーの箱を手に取ってから2Fへと向かうと、自分の机の周りに全てのアイテムを並べてみた。
「さて、一つずつ調べていくとしましょうか」
今あるアイテムは、
rank ゴールド(★)
category 武器
name 不可視のナイフ≪ジャック・ザ・リッパー≫
rank ゴールド(★)
category 武器
name 無限マシンガン≪ダンス・マカーブル≫
rank ゴールド(★)
category 武器
name 燼滅刀≪焔魔≫
rank シルバー(☆☆☆☆☆)
category 防具
name 戦闘用ビジネススーツ≪スーパー紳士≫
rank シルバー(☆☆☆☆☆)
category 魔法書
name 魔法書≪修復≫
rank ブロンズ(☆☆☆☆)
category 魔法書
name 魔法書≪魔物言語・初級≫
rank ブロンズ(☆☆☆☆)
category 魔法書
name 魔法書≪清潔≫
rank ブロンズ(☆☆☆☆)
category その他
name 超眠まくら≪三年寝太郎≫
rank コモン(☆☆)
category その他
name ロープ
rank バッド(☆)
category その他
name ひしゃげたブリキ缶
この10種類だ。
ひのきの棒とバターナイフは、もはやどうでも良いので省く。
まずは不可視のナイフ≪ジャック・ザ・リッパー≫からだ。
もはや伝説的と言ってもいい謎の連続殺人犯。その名が付けられたこのナイフは、見た目ではナイフだと判別できないだろう。
なにせ、ナイフの柄の部分しか無い、ように見える。
注意深く横から触ってみると、しっかりと刃があるのがわかるのだが。光に透かそうが何をしようが、視認する事はできない。
試しに床に刺してみると、なんの抵抗もなく、すとんと刃の根元まで入ってしまった。
「……うん、取り扱い注意だな」
切れ味の良い見えないナイフとか、持ち歩くのすら危ない。
次に無限マシンガン≪ダンス・マカーブル≫。これは確か『死の舞踏』という意味だったか。
昔にマフィア映画で見た、いわゆるシカゴタイプライターの見た目をしている。
威力はさっきのゾンビでお墨付き。おまけに弾数無限ときたもんだ。
「今の僕のメイン武器だな。長い付き合いになりそうだ」
武器カテゴリの最後は、燼滅刀≪焔魔≫。これは閻魔様と掛けているのか……?
飾り気の無い黒い鞘から引き抜くと、強い熱気が周囲に振り撒かれる。
赤く輝く刀身は、燃え盛る炎のようにギザギザと波打っている。少なくとも、こんな刀を僕は知らない。
試しにタバコをポケットから取り出し、刀身に擦り付けてみる。
「あ、点いた」
便利だなコレ。
まぁジッポ持ってるんですけどね。
武器として見た時には、かなり凶悪な代物だろう。
ゆっくりと煙をふかしながら一服して、次のアイテムに移る。
防具カテゴリだ。戦闘用ビジネススーツ≪スーパー紳士≫。
見た目はただのスーツで、どの程度の防御力があるかもわからないが、とりあえずこれに着替えている。
≪ジャック・ザ・リッパー≫や≪ダンス・マカーブル≫で試してみようかとも思ったが、穴が空くのも嫌なので止めておいた。
そもそもレア度のランクが違う。おそらくだが、シルバーレアの≪スーパー紳士≫ではゴールドレアの攻撃力には耐えられないのではないだろうか?
「まぁ、頑丈な服、くらいに考えておけばいいか」
次に、こいつらはその他カテゴリ。
超眠まくら≪三年寝太郎≫とロープ、ひしゃげたブリキ缶だ。
「……うん。まくらとロープとブリキ缶だ。それ以外の何者でもない」
レア度がバッドのブリキ缶はまぁゴミだとして、このコモンのロープもただの長さ2mほどのロープだ。強いて言うなら丈夫そうか。
この≪三年寝太郎≫はブロンズレアなのだが……、何か特別な効果とかあるまくらなのだろうか。
これで寝ると夢見が良いとか? 悪夢の世界で?
うん、考えてもわからん。次に行こう。
こいつらが難関だ。精神的に。
実に10個中3個を占める魔法関係の類。
魔法書≪修復≫、魔法書≪魔物言語・初級≫、魔法書≪清潔≫だ。
何故、僕には扱えなかったのか。
こんなに愛してやまないのに。
あんなにガチャから出たとき喜んだのに。
使えないのだ。
どうやっても。
「せめて何かヒントでもあれば……」
現実世界ならインターネットなり書物なりで知識を得ることもできたのだが。
「……いや待てよ? BBSなら何かわかるかもしれない」
急いでドリームBBSのアプリを起動する。
そこに表れたのは多様なスレだった。
―――――――――――――――――――――――――
・悪夢世界総合攻略スレ Part3
・雑談スレ Part2
・【武器・防具】ガチャ結果報告所 Part1【魔法・その他】
・【迷子】道に迷ったやつ集合【1人目】
・家族を探してます
・【合流】協力者募集スレ Part1【しようぜ!】
・魔法についてわかってることまとめ
・【プロの犯行】俺様がゾンビとガチ勝負【カバディ無双】 Part57
・妖精さん捕まえたったwwwww
・【悲報】今からガチで自殺する
・【誰か】救助要請 第1報目【助けて】
―――――――――――――――――――――――――
などなど。
攻略スレを1から読むのもアリだが、まずは魔法のスレを覗くことにする。
―――――――――――――――――――――――――
・魔法についてわかってることまとめ
1:悪夢世界の名無し
攻略スレから魔法についてわかったことまとめる
・魔法書を読めば、その魔法を覚えられる
・読んでも、消えたりしない。何回でも使える。
・上記を踏まえ、仲間内で回し読みしたり、いらなくなった物は売る
のがおススメ
2:悪夢世界の名無し
何度でも読めるって事か。これはありがたい
3:悪夢世界の名無し
いや、役に立つ情報それだけかよ! ほとんど何もわかってねーじゃん!
4:悪夢世界の名無し
>>3
しゃーねーだろ。そもそも魔法書持ってる奴なんて全然いないだろう
し。
5:悪夢世界の名無し
魔法書を手に入れて読みさえすれば、拙者でも魔法を使えるようになるで
ゴザルか?
6:悪夢世界の名無し
魔法覚えたいのにガチャするdpなんて無いよ……
7:悪夢世界の名無し
魔法書さえ……、魔法書さえあれば……
8:悪夢世界の名無し
誰か魔法書くださいお願いします何でもしますから
9:悪夢世界の名無し
>>5
多分大丈夫じゃね?
今の所、攻略スレでも「読んだのに使えなかった」なんて現象は報告され
てないみたいだし
10:悪夢世界の名無し
なんかウワサだと10連ダイヤガチャだと魔法書出やすいらしいぜ
11:悪夢世界の名無し
どうやって1千万dpも稼げと
12:悪夢世界の名無し
草
ウワサが本当にしろ、結局絶望的じゃねーか
13:悪夢世界の名無し
おk 魔法使いになる夢は諦めるわ
14:悪夢世界の名無し
俺はある意味既に魔法使いだけどな!
―――――――――――――――――――――――――
……成程、成程。
魔法書を読んでも魔法が使えないってのは、特殊なのか? こんな特別扱いは嫌だぞ。
しかし、それを裏付けようにも肝心の情報が無い。
クソッ、まだまだ情報が少なすぎるな。
なら、どうする?
……決まっているか。
「当面の行動方針が決まったな」
情報収集だ。
**********
?????のナイトメア☆ガゼット
第7回 『ドリームBBS』
ドリームフォンの中のアプリの一つ。探索者同士で様々な情報の交換がなされている。
賢明なる読者の皆様は、まさかこんな所の情報を鵜呑みにしないでしょうね?
こんなアプリを使っている暇があったらナイトメア☆ガゼットを読みなさい。いいから読みなさい。
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