最終話 そして世界の中心で全裸で歌うアホ




 一面真っ白で、空間がぐにゃぐにゃ動いてる感覚だけがあって。

 暫く耐えてたら、真っ白やった周りがだんだん晴れてきて。




 最初、目に入ったんは、どっかのオフィスっぽい、見馴れた現代的な風景すわ。

 ああ、帰って来たんやなぁ、って思て。そん時、まだ片膝付いた状態やったからね。ちっとふらつきながら立ちあがったら、体に違和感があって。

 よー見たら、何も着てへんかって。

 よーするに全裸ですわ。


 あれぇ? ゲートくぐって移動ん時、服だけどっか行ってもたんかな?っと。


 でそん時、なんか視線感じて。前見たら、覆面姿のヤツが銃構えてるって、あんまし見慣れん光景ですわ。


 ん? と思て、グルッと辺り見たら、おんなじよーな覆面が3人ほどおって、

俺の背後の壁際に、なんか縛られた人らが10人ほどおって、ってゆー。


 ああ、そうか、と。


 わりとすぐ理解しましたね。

 銀行強盗か、テロかの現場に出たんやな、って。


 不思議とね、焦ったり、恐怖感じたり、っての無かったす。

 アイツのセリフ借りるなら、


 あぁ、これは必然なんや、って。

 俺は、この場に出るべくして出たんや、って。


 なら、俺のやるべき事は1つだけっすわ。


 こう、両手広げてね、


 歌ったんす。

 アイツが作った歌を。

 心込めて。

 全力で。


 覆面のヤツが、固まるのわかりました。

 唖然とした感じで。なんやコイツ、って。何やっとるんや?、って。

 自分は何を見せられよるんや?って。


 まあ、たっぷり五分は稼げたんちゃいます?


 後は刑事さんも知ってるとおり、特殊部隊の人らが突入して来て。

 覆面の奴らは殆ど何も出来んと捕まって。誰1人、怪我もなくて。


 ほんで俺も拘束されてね。

 まあ、しゃーないすね。マッパやもんね。明らかに不審者やんね。

 

 で、捕まって…


 現在に至る、って話しですわ。


 ふぅ〜


 ……


 ……


 いや、まぁ頭かかえられてもね、ホンマの話しやし。


 他の人ら全員の証言と一致してるんすよね?


 映像ないんが残念すよねぇ。 

 まぁそりゃ、監視カメラとか真っ先に壊すわね。

 人質のスマホも取り上げるやろーし。


 んでも、誰かの証言がもうネットで話題になってるらしいですやん?


 変態ヒーロー参上とか?うわぁそれちょっと嫌っすね。

 リアルター○ネーター現る? あ、それ俺も思いましたね。

 マッパで片膝ついて現れるとか、まんまっすよねw


 あの時って外で生中継してたんすよね?

 武器もって、人質取っての立て籠もりやし、結構世界中が注目してたんちゃいます?


 まぁゆーたら、世界の中心があそこにあったよーなもんすよねw

 タイトル付けるとしたら、


「世界の中心で全裸で歌うアホ」


 ってトコすかねw?



 あ、ちよっと待って下さい。

 まだ、ゆーてない事あるんで。


 アイツがね、

 いっつもゆーてたんす。


 この世に偶然はない、あるのは必然だけや、って。



 せやからね、俺、思うんすわ。


 あの時、俺がアイツに出会ったんも、違う世界に飛ばされたんも、

 その世界で冒険したんも、帰ってきてテロ現場に現れたんも、

 今こうして刑事さんと話ししてるんも、

 すべては必然なんやって。


 せやから、刑事さんにこの大事な事、伝えれんのもまた必然なんやね。



「アンタの息子、むっちゃアホやったけど、最高のヤツでしたわ。」


って。



 えぇ、最初、刑事さんがここに入って来た時、アレ?って思て。


 1度だけ見ちゃったんすよね。


 アイツが死ぬほど大事にしてたギターのケースの底に、ちょっと昔の写真貼ってあったんをね。


 多分、刑事さんと子供の頃のアイツっしよ?


 あの古いギター、刑事さん…、親父さんが譲ったんすよね?

 アイツ、凄い大事にしてましたよ。


 うん、まぁそれだけやのうて、刑事さんの声聞いた時、確信しましたね。

 なんつーっても、俺が惚れ込んだええ声やからね。

 間違える訳ないすわw。


 ……


 ……


 そうすかw

 いや、刑事さんだけでも俺の話、信じてくれるんやったら

 もうなんもゆー事ないっすわw。



 ……



 そうっすね。

 アイツのこれからすか。



 たぶん、

 あの世界で、王様になって、

 皆んな笑顔にするんやないすかね?




 なんせアイツ、


 想像の斜め上行くアホやからw。













〜世界の中心で全裸で歌うアホ〜 


  完













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世界の中心で全裸で歌うアホ シロクマKun @minakuma

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