変化(前半)

期末テストを1週間前に控え俺と片岡は勉強に本腰を入れ始めた、と言っても片岡に関しては自ら本腰を入れようなんて考えるわけもないので俺が強制的にやらせているに近い形となっていた。しかし片岡は前までと違い勉強することをそこまで嫌がらなくなっていた、本人に直接理由を聞いてみると。


「いやぁもうすぐ僕たち受験じゃん?しかも僕推薦だから9月に入学試験あるんだよねぇ、だから頑張ろうかなって」


だそうだ、正直俺は片岡が危機感を入学試験への危機感を持ってくれていて安心した。俺もセンター試験は受けない組で推薦試験を受けるので人の心配ばかりしてられないなと片岡に気づかされる意外な展開となった。


俺は片岡と勉強を終え帰ろうと思い駐輪場に向かいいつも通り帰ろうと自転車を動かすと ブニッ っという嫌な感触が手に伝わってきた。おそらくその原因だと思われるタイヤの方を見てみるとやはりパンクしていた。


「片岡すまん今日は電車で帰るから先帰ってくれ、自転車パンクしてる」


「マジで?最悪じゃ〜ん」


「朝はなんともなかったんだけどなぁ」


「んー、しゃーないなー今日は一人でおとなしく帰るよ」


「すまんな」


片岡は大げさに手を振り俺に バイバーイ と手を振った後帰っていった。普段電車通学じゃないので電車の時間は詳しくは知らないがとりあえずは駅に向かうことにした。駅までの下り坂を降りていると後ろから走る音が近づいてくる。


「た、小鳥遊さぁぁん!止めてぇぇぇ!!」


声の主は意外にも四十川だった。四十川は何があったのかものすごいスピード坂を走り降りてくる、そして発言から考えるにおそらく坂でスピードが付き過ぎてしまい自分で止めることが出来ないのだろう。それとなんだろう何というか何とは言わないがすごい揺れてる...


それは今どうでもいい、今は四十川をどう止めるかだ、真正面から受け止めたのではただ衝突しに行くだけの形になるし、後ろに下がりながら衝撃を和らげようとも坂道なので逆に怪我をする可能性が上がる。どうする俺...


そうだ!


「四十川!すまん!」


「っ!?」


俺は四十川を抱きしめる形で怪我をしないように守り道路脇あった草を刈ったまま放置されていたちょっとした山のような所に飛び込んだ。俺は背中から着地する形になり背中に重い衝撃が走る。


「いってぇ...四十川、大丈夫か?」


「あ、はい!あ、ありがとうございました」


四十川はもじもじしながらそう言った、そして立ち上がろうとするが立ち上がれない。


「こ、腰が抜けちゃいました」


へへへと恥ずかしそうに四十川は頭を搔く。あれだけの事があれば仕方ないか...


「仕方ない、ほら乗れよおぶってやる」


四十川は少しの間ポカンとした顔でこちらを見ていたが見る見るうちに顔が真っ赤になっていく。


「い、いや申し訳ないですよ!私は大丈夫ですから」


四十川は無理やり立とうとしてふらふらしている、このまま坂道を降りるのは正直危険だ。


「いいから、気にすんなそれにこれなら恥ずかしくないだろ?」


「ふぇ?」


少し強引だが肩を組む形に四十川の腕を取った、おぶるのは嫌でもこれなら別に問題ないはずだ。


その後、無事電車に乗ることが出来、終始顔が真っ赤な四十川を家まで送ったのだが...


「家ちっか...」


「さ、最近ここに越してきたんです、小鳥遊なんて名字珍しいからもしかしてと思ったんですけど、やっぱり小鳥遊さんだったんですね」


四十川の家は俺の家の真ん前で国道を挟むように立っていた。最近越してきたとはいえ、よく今まで気付かなかったな、俺。


その後少し談笑し、家に帰った。俺は自転車のことをいつも利用している自転車屋に相談したが予約が入っており修理には時間がかかるとの事だ、どうやら遠分は電車通学になりそうだ。


次の日の朝、駅のホームに向かうと四十川が電車を待っていた。学校に7時に着く電車なので人は少なく学生は俺と四十川だけだった。


「よ、早いんだな」


「あ、小鳥遊さん、おはようございます昨日はどうも」


四十川は小さくお辞儀する。始めと比べれば四十川は大分喋るようになったがまだ緊張しているのか俺相手でも敬語やお辞儀を欠かせない、そして俺はそれが少し苦手だ。


「なぁ四十川」


「はい?」


「別に俺や片岡にも東雲と話す時みたいにタメ語でいいし、軽い感じで話してくれていいんだぞ?」


「で、でも男の子と話す時は緊張しちゃってつい癖でなっちゃうんです」


「まぁ少しずつでいいからさ、俺あんまり敬語とか使われるの慣れてないからむず痒いんだよ」


「そ、そうだったんですね...」


四十川はしょんぼりして俯いてしまったが何かを思い出し、顔を上げて首を振るり俺の方に向き直ると。


「が、頑張ります!」


耳を真っ赤にしてそう答えた。

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