(ⅳ)

「何ですか……これっ⁉」

 メガネっ娘が恐怖の叫びを上げる。

「わ……わからん……」

 次は、「ニワトリ」男。

 レナがブチ切れて叫んだと同時に、俺達の周囲の地面を円形に炎が囲んだ。

「何か知ってるか、これ?」

「い……いや……もう1人から、色々と聞いたけど……何度、聞いてもよく判んない説明だった」

「もう1人?」

「あ……もう1人居る、『本土』から来た、こんな能力のヤツが……」

「はぁッ⁉」

「どうなってんですかッ⁉」

「えっと……もう1人の方は……熱量自体は……本人が言ってた所では……あいつより下らしいけど……」

 その時、レナ達に、また無線で連絡が入ったようで、何かを話している。

「よし……今だ……」

 メガネっ娘と「ニワトリ」男は呪文を唱えるが……。

 続いて、何発もの炎の弾丸が飛んで来た。

 警告のつもりらしく、わざと外しているようだが、ふと、背後うしろに有る俺達が乗って来たトラックを見ると、表面のあちこちが黒く焼け焦げている。

 そして、レナと、もう1人は、バイクで走り去った。

「どう云う事ですか? 何の魔力も……検知出来ませんでした」

「それ以前に……こんな『魔法』なんて……聞いた事が無い。有り得るとすれば……火薬や可燃性の液体・気体と『魔法』の併用だろうが……その手の臭いもしなかった」

 メガネっ娘と「ニワトリ」男は、俺の方を見る。

「すまん……後ででいいんで……その……『もう1人』とやらから聞いた話を、なるべく正確に、そいつが言った通りに教えてくれ」

「待ってくれ、思い出した。更に、もう1人居るかも知れない」

「おいおい、『待ってくれ』は、こっちのセリフだ……。どうなってる?」

「よく知らないが……『本土』から来た方の知り合いで……『ちょっとポカしただけで、この島ごと沈めてしまう』ようなヤツが居るらしい……」

「一体、どうなってる? そんなヤツ、本当に居たとしても、人間じゃなくて怪獣だろ」

「あの……『本土』って……どんな地獄なんですか?」

「『靖国神社』が『本土』に進出しないのは正しかったのかもな……。ああ……そう言や、昔のマンガで『北斗の拳』って知ってるか?」

「それが?」

「そのマンガに『修羅の国』ってのが出て来てな……。俺達が知らない内に『本土』は『修羅の国』になってたのか?」

「そう言えば……3月にも……福岡の久留米で大騒動が有りましたね……」

「で……どうすんだ、作戦続行か?」

 俺達を囲んでいた炎の輪は消えていた。

 俺は、トラックに刺さった「斧」を抜きながらそう言った。

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