(11)

「ねぇ、あれで良かったんですか?」

 望月君がそう聞いた。

 小型ドローンにモバイル型のルータを取り付け、通信機やドローンの設定を変更。全て、あたしの部屋で行なわれている。

「素人にドツキ合いさせる訳にはいかねぇだろ」

 今度は今村君。

「お前も素人みたいなモノだろ」

 今村君が溜息をつきながら言った。

「実は……残念ながら……ヤー公やってる俺の親父と色々有ってな……」

「色々?……おい、まさか……」

「高木も巻き込まれた……」

「ちょっと待て、聞いてないぞ」

「後で話す」

「あの……中継用のサーバに繋ったんだけど……」

 ヒゥ君が自分のモバイルPCを指差す。そのPCには増設モニタが2つ繋がれていた。そして、それに映っているのは……。

「ここ、一体どこ?」

 一見、漁港風だけど、良く良く見ると、周囲は妙に人工的な感じがする小さめの港の映像がいくつか。誰も居ない。少し離れた所には、直線的で、しっかりコンクリで舗装された海岸に沿って羽根無しファンレス型の風力発電機が並んでいる。

 そして、あたしはその光景に見覚えが有った。

「ここ、『九段』の港だ……」

「既にいくつか地上型のドローンを撒いてるそうだ」

 その時、ヒゥ君のモバイルPCでビデオ・チャットが立ち上がる。

『おい、何か私達の知らない所で、話がデカくなってる可能性が有るんだが、心当りは無いか?』

 画面に映ってるのは瀾って女の子だった。

「どうした?」

『そっちの「有楽町」の警察が街頭監視カメラの映像をWebで公開してるのは知ってるか?』

「えっ? それがどうした?」

『そのカメラに、とんでもないのが映ってた。そっちと関係の無い偶然だと思いたいが……』

「あ〜、夜中にカメラ目線の露出狂の変態が映ってたなら、良く有る話」

『違う。ちゃんと服を着てたし、ついさっきの話だ』

「何?」

台東区Site04の「自警団」の1つ「寛永寺僧伽」のメンバーらしき連中が「有楽町」の港に居た。少なくとも1人はヤクザで云うなら『二次団体の組長』クラスのヤツだ。二〜三〇人の部下を好きに動かせる権限を持ってる』

 Neo Tokyo Site 04……通称「台東区」。この「島」以外に3つ存在し、5つ目と6つ目が建設中の「東京」の中でも、この「島」に一番近い別の「東京」。壱岐と対馬の間に有る、かつて存在した「本当の台東区」内の地名にちなんだ名で呼ばれる4つの地区からなる「島」だ。

『今、そっちの「島」に来た「寛永寺」のリーダー格の画像を光に送った。そいつに注意しろ』

「待て、一緒に映ってるこの女は……」

 荒木田さんは、携帯電話Nフォンを見て、そう言った。

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