(3)

 携帯電話Nフォンの通知音。でも、あたしのでも勇気のでもない。

「はい……あ……着いたの? どこだ?」

 荒木田さんの声。

「誰?」

 自分の携帯電話Nフォンを見ると朝の7時前。強化服パワード・スーツのセルフ・チェック・プログラムのログを送った後、いつの間にか4人とも寝ていた。

「味方だ……。2人……ただし、1人は『椅子の人』」

「昨日も言ってたけど『椅子の人』って?」

「後方支援要員。例えば、偵察用のドローンを操作したりとか……」

「もう1人は……?」

「前に出て喧嘩出来るヤツ。流石にライフルは無理だそうだが……拳銃弾や普通の刃物なら何とか防げる体の持ち主だ」

「へ?」

「はぁ?」

 同時に声を出すあたしと勇気。

「あ、もっとも、刃物や拳銃弾は防げるって言っても……変身前に不意打ちされると流石に無理みたいだけど、まぁ、怪我しても骨や内臓までいってなければ、すぐに治癒するらしいんで、それほどの違いは無いけどさ」

「へ……変身?」

「『本土』には、そんなヤツが結構居るんですか?」

「いや、この近所にだって、そこまで無茶苦茶なのは別だけど、そこそこの異能力を持ってるヤツが、その事を隠して住んでてもおかしくないだろ」

 まぁ、言われてみれば、あたしなんか、ご近所から見れば「規格外の化物が一般人のフリして近所に住んでた」だよなぁ……。

「どんなヤツなんですか、そいつら?」

「会った事有るけど、変な能力と経験を除いては……まぁ、普通だ」

 一方、ヒゥ君はモバイルPCを操作していた。

「修理の手順が届いてた。手順書を2部印刷して、2チームに分れて、片方が作業、もう片方がチェックをしろって。あと、光さんが言ってたのと別に、明日の朝、応援が2人来るって」

「え……もう、どこをどう修理すれば良いか判ったの?」

「徹夜したって。あと、欠けてる装甲の3Dプリンタ用のデータ。ただし、普通の3Dプリンタ用の素材だと、1回暴れる間、ギリギリ持つぐらいだから気を付けろ、って」

 そう言って、ヒゥ君は、USBメモリを勇気に渡す。

「あの中学生、一体何者だよ?」

「中学生じゃないよ、高校1年。で……あれの製造元の創業者の親類で、将来の夢は、あれの後継モデルの設計だって」

 ヒゥ君は、勇気のお父さんの形見、強化服パワード・スーツの「水城みずき」を指差していた。

「おい、味方でも下手に身元を明かすな」

「あ……」

「どっちみち、やっぱり、俺より年下じゃね〜か……」

「なに、しょ〜もない事でカッカしてんの? つか、年下って言っても、たった1学年でしょ」

「まぁ、いいや、朝飯のついでに今日来た仲間と打ち合わせをやるか」

「じゃあ、いい店知ってるから……」

「いや……向こうは、さっき、『銀座』の港に着いたばかりだってさ」

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