第4話 僕は文明の利器で彼女を助ける

  次の朝、僕はアクビをしながら2-Bの教室に入る。


「おはよう、ハルアキ。いつも眠そうだな」

「うん、いつもの寝不足でね」


 友人とお決まりのあいさつをする。すると、友人が僕の肩を掴んだ。


「友よ、ゲームのやり過ぎは良くないぜ」

「え? ゲームなんかしてないけど」


 友人は僕の言葉に対し、首を横に振った。


「ハルアキ、とうとう現実とゲームの区別もつかなくなったのか?」

「なに、言ってるの?」


 僕は彼の言っている意味がさっぱりわからない。


「オイラ、見ちゃったんだよ。お前がスマホで二次元系の女の子の写真を見てニヤニヤしてるところ。いくらモテないからって現実から逃げるなって」

「いや、それはゲームキャラじゃなくて……」


 僕が眺めていたのは実はチヒロさんの写真だ。しかし、友人にそれを説明するのは難しい。僕が友人への言い訳を考えていると、


『汝、我が求めに応じ現れたまえ… …』


 突然、僕の頭の中に少女の声が響いてきた。また、今日もか… …僕はため息をついて席を立った。


「悪い、ちょっと便所に行ってくるよ」


 僕は急いで教室を出る。


『出でよ、ハルアキ!』


 教室を出た次の瞬間、僕は森の中にいた。チヒロさんに異世界へ召喚されたのだ。ただし、チヒロさんの姿が見当たらない。


「チヒロさん、どこ?」

「あ、ハルアキ。こっちこっち」


 茂みからチヒロさんの声が聞こえた。僕は茂みに近づく。


「朝から何の用?」

「ねぇ、ハルアキ、アレ持ってない? した後に拭くあの… …」

「用をたしたなら、葉っぱで拭けばいいんじゃない? たくさんあるでしょ」


 僕が素っ気なく応えると茂みが大きく揺れた。


「イヤだ! 葉っぱはかたいし、ザラザラするし。ハルアキがこの前持ってきたあの紙ちょうだい。なんだっけ、あの名前… …」

「『ティッシュ』?」

「そうそう、その『ティッシュ』ちょーだい」


 僕は駅前でもらったポケットティッシュを茂みに放り込んだ。シュッシュッとティッシュを取り出す音がしてから、数刻後。


「ああ、やっぱりこの柔らかさがたまんないわー」


 チヒロさんが至福の声を上げた。2分後、茂みから青い髪の少女が立ち上がった。


「ハルアキ、ありがとう。やっぱり召喚獣の中であなたが一番役に立つわ」

「どうもいたしまして」


 僕はワザとらしくお辞儀をする。


「僕、そろそろ授業だから帰っていい?」

「あ… …うん、わかった。おかげでスッキリしたよ。またね」


 チヒロさんは笑顔で手を振る。僕も手を振り返した瞬間、僕は光に包まれ森から姿を消した。


 次の瞬間、僕は学校の校庭にいた。どうやら授業には間に合いそうだ。僕は急いで教室に戻った。

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