僕と不良と校庭で - 山崎まさよし
秦さんと高校生ときたら、まさよしさんが出てきますね。オーガスタ繋がりでも、「女は上書き保存、男は名前を付けて保存」というネット上の迷言を強烈に高校生に意識させた新海誠監督の作品「秒速5センチメートル」の繋がりもありますから。中学生と高校生の時は良く聞いていました。まぁ、一番有名な歌はどうしたって名曲な前掲映画の主題歌ですが……。
でもね、誰もが知っているからこそ、もう僕が紹介する意味ってないよね!
皆、知ってんだもんね!
それにひねくれを貫く僕としては、あまりにも知名度がある曲は敬遠したくなるのです。秦さんだって一番良い曲は「ひまわりの約束」じゃないと思うよ。個人的にはね。ひまわり――は個人的ベスト10にも入らないでしょう。他に良い曲多いもの。
そんな僕の性癖が爆発した結果、まさよしさんからは「僕と不良と校庭で」が選出されました。
前置きが長くなったのですが、この曲を一言で言うと「ノスタルジックとセンチメンタルの結晶」です。「その二つがこの一粒に?!」という、ぎゅっとセサミン40もびっくりの濃縮具合です。
もはや曲名からノスタルジックですから。
僕と不良と校庭で――ですよ。それだけで様々な妄想が花を咲かせそうです。やはり、小説や楽曲に関わらず良い題名はぐっとくるものがありますね。
この曲は囁くようなハーモニクスから始まります。
フィルム撮影されたMVはレトロチックに花々と街角を映します。
――――――――――
突然の君の便りは懐かしい不器用な文字と
どこか遠い国の空の絵葉書
あの頃やがて僕らも大人になると思ってたけど
はっきりとした未来は描けずに過ごしていた
――――――――――
まるで映画の始まりのよう。僕はこのような導入が好きです。回想録が好きとでも言うのでしょうか。ふとした手紙から、今ではもう戻れない日々を雑多なアパートで思い出す。そんな情景が。
このイマと過去の痛ましいほどの断絶がやるせなくて。
変わってしまった関係と、あの時の記憶がじくじくと痛んで。
そんな感傷がふつふつと沸き上がってきますね。
僕は今でも後悔をいくつも抱えて生きています。家族のことであったり、友達のことであったり、自分のことであったり……。僕は幸せに生きて来ましたが、その途中でどれだけの厚意を素通りし、人を傷つけ、にもかかわらず支えてもらったのでしょうか。
誰もがそんな記憶を抱えて、大人としてこの社会で生きているのでしょう。そして、何気ない時間と風景が、ふと、土の底の郷愁と痛みを掘り起こすのでしょう。
自転車が走っていく細い路地、猫が歩く階段の前、日に照らされる団地、ブランコに乗る小学生たち、公園でおばあちゃんとするサッカー。
これらが映像の中に次々と差し込まれて、あの時感じていたワクワク感、夏の熱さ、遊んでくれた人たち、ブランコで揺れる世界に想いを馳せるのです。今、こうしてこの文章を書いている僕では、もう二度と持てない感覚に想いを馳せるのです。
成長することは嬉しいことでもありますが、抗えない時の流れでもあります。だから、僕たちは過ぎていった過去を見返し、手にしたと思ったら消えてゆくイマの感情を流していくのでしょう。全部、時間を惜しんでいるんですね。
だからと言って、過去だけを見る必要はありませんよね。当たり前です。誰もがそのように感じているし、表現しているし、理解しているんです。
でも、時々忘れちゃう時があるんです。
そんな時、ちょっと立ち止まって、この歌に耳を傾けて下さい。
――――――――――
手にしたものはいくつか色褪せてたけど
おぼつかない指先で憶えた唄は今もまだ歌ってる
――――――――――
どこかで忘れていた「当たり前」がほろりと口から零れ落ちてくるかもしれません。
そんな瞬間がどうしようもなく愛おしいです。
僕と不良と校庭で / 山崎まさよし
https://www.youtube.com/watch?v=HxlBRbaxj8A
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