陽声言夜

言語に至る色域の園で

有り触れた痛みが再生する

誰もが振り解いた敷居の外で

貴方だけの傘が花開く


異部を抱く私達の関係は

虚無と変動の狭間に立って

繰り返し齎してくる

鈍色の偏頭痛


雨が上がるまで此処にいて

雲が消えるまで名前を呼んで

どうしようもなくこの手には

人間性の最たる言葉しか遺らない

一バイトの連鎖が世界を呪うなら

二バイトの連歌で貴方を祝うから

最奥に揺蕩う祈りが叶うのなら

最果ての歩行が新たなる物語


戒律を装う不確かな円で

終わりの無い痛みが再開する

誰もが忘れてしまった原初の縁で

私達の朝が目を覚ます


憐を嫌う貴方だけの瞳孔は

灰と黎の追憶を裂いて

今も尚導いてゆく

藍色の微再動


雨が上がったら何処へ行くの

雲がいなくなったら忘れてしまうの

どうにもならないこの廃材には

普遍性の対なる歴史のみが赦される

一人きりの言葉が夜を彩るのなら

二人だけの空想を陽が染めてゆく

陽と夜の轍がやがて届くなら

血と世の証が新たなる白昼夢


私達を分かつもの

決して分かりあえないもの

それでもこの手を結ぶのは

もう一つ体温が欲しいから

もう一度貴方を知りたいから


私の天国に雨が降るのなら

貴方だけの傘が私にも花開く


雨が上がっても此処にいて

空が白むまで名前を呼んで

どうしようもなく私達の手には

人間性の最たる言葉しか遺らない

一人きりの連鎖が貴方を呪うなら

二人だけの星夜で私が祝うから

陽と夜の祈りを何度でも叶えよう

血と世の歩行が新たなる物語


私達の海辺は螺旋を描いて

命と名付けた階梯へと至る。

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