空悌写実

「空が見たい」って言うから

私は貴方の星になる

「空が遠い」って言うから

私は貴方の鳥になる

「空が冷たい」って言うから

私は貴方の太陽になる


もしそれが、両手で掴める大きさなら

私達の距離はゼロに迫る

もしそれが、触れただけで壊れてしまうなら

私の願いは遥か彼方


走って走って飛んでゆけたら

こんなにも泣かずに済むのに

叫んで叫んで燃やし尽くせたら

素肌に国境はいらないのに

寂しいけれど、ここは檻の中

踊るには狭く呼吸を持て余す

生きたまま死んでしまうだけ


「空が見たい」って言うから

私は貴方の瞳になる

「空が遠い」って言うから

私は貴方の脚になる

「空が冷たい」って言うから

私は貴方の掌になる


継ぎ接ぎの仮初で十二分じゅうにぶん

魂の旋律は毎分七十回

当たり前の二十四時間が果てしなく

一ペタバイトの記憶が私達を証明する

だから境界を越えよう

毎秒九.八メートルのデートをしよう


走って走って飛んでゆけたら

あんなにも泣かなくて済んだのに

叫んで叫んで燃やし尽くせたら

素肌に縫い目は刻まれないのに

寂しいけれど、ここは檻の中

踊るには狭く呼吸を持て余す

生きたまま死んでしまうだけ


願って願って叶うものなら

擦り切れるまで捧げたのに

恨んで恨んで呪い続けても

みんな知らん顔で壊れていく

寂しいけれど、ここは檻の中

笑うには昏く慟哭は響かない

生きたまま死んでしまうだけ

生きたまま死んでしまうだけ


生きたまま死んでしまうから

生きたまま生き切って墜ちるの


衝突までの四秒間

貴方にも空は見えただろうか。

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