第3話ドローン配送

「英雄殿、ここが人間のアムラ王国と我が生命の森の境界だ」


「さっき見た場所とは違うのだな」


「あの帝国は、これから激烈な運命を辿るから危険だろう」


「どう言う事だい?」


「最精鋭の主力軍10万兵を一瞬で失ったのだ、国境防衛軍と首都近衛軍は残っているだろうが、今まで圧迫していた周辺国が報復戦争を仕掛ける可能性が高い。それに併合して圧政を敷いていた地方では反乱が多発するだろう、そんな国ではのんびりと旅するなど無理な話だ」


「2・3万だと思っていたが、10万も殺したのか?」


「そうだ、我と英雄殿がデュオで最上位の魔法を使えば、桁外(けたはず)れの破壊力(はかいりょく)があるのだ」


 本当にそれだけの人間を殺していたとしたら、精神的に病んでしまうだろうな。


「それで英雄殿、歩いて旅を始めるのか?」


「ああそれなんだけど、まずは腹ごしらえをしたいんだけど、食べる物はどうやって手に入れればいいんだい?」


「狩りをしてもいいし、英雄殿の固有魔法であるドローン配送を使って故国(ここく)の品物を取り寄せてもいい」


「ドローン配送て何なんだ?」


「英雄殿がいた世界の商品を、こちらの世界で購入出来ると言う魔法だ」


「ドローンと言う事は、元の世界から飛んでくると言う事か?」


「あくまでもイメージの問題だ、英雄殿が元の世界からこの世界に物を取り寄せるイメージが、ドローンで運んでくると言うものだったから、そのように具現化(ぐげんか)されたのだ」


 なるほど、もし転移のように商品を取り寄せるイメージが強ければそうなっていたのか。あの漫画みたいに、ポケットから取り寄せるイメージが強かったらそうなっていたのだろうな。俺があの漫画をほとんど読んでいなかったことと、ドローン配送のアイデアで小説を書き始めていたからこう言う結果になったのだな。


「そうだ、それと対価が必要になるのだが、それはこの世界の金銀銅貨を使う事になる」


「俺は金を持っていないのだが?」


「殺した10万の帝国兵の持ち物を回収してある、必要なだけ言ってくれ」


「具体的にはどう使うんだ? さっきのようにあなたと一緒に呪文を唱えるのか?」


「今回の魔法は英雄殿の固有魔法だから、1人でドローン配送と唱えればいい」


「分かった、ドローン配送」


 俺が呪文を唱えると、目の前にパソコンでネット購入する時の画面が映し出された。やはり俺のイメージが反映されているのだろう、使い慣れたR社の画面が映し出されている。働くのが嫌いで節約節約の食生活だったから、夢の中くらいは思いっきり贅沢(ぜいたく)したい!


「生命の大樹殿、御金が欲しい」


「他人行儀な言い方は止めてくれ、我と英雄殿はデュオではないか」


「そうか、じゃあ何と呼べばいいのだ?」


「デュオとして英雄殿が名前を付けてくれ」


「分かった、だったら生命の大樹からとってセイちゃんと呼ばせてもらおう。それと俺のことも英雄殿と呼ぶのを止めて、ミノルと呼んでくれ」


「そうか、ならばミノルちゃんと呼ばせてもらおう」


「それは止めてくれ! 五十路の男をちゃん付けで呼ぶなど気持ちが悪すぎる! ミノルと呼んでくれ」


「なれば我もちゃん付けは止めてセイと呼んでくれ」


「分かったセイ、早く金くれ」


「それを使ってくれ」


 不意に俺の目の前に金銀銅貨が現れた!


 だがその量が余りに多いのでどう使えばいいのか分からない?


「頭の中で何に使うか決めてくれれば、ミノルの魔力で勝手に振り分けられる。今回はドローン配送に半分使うとイメージしてくれればいい」


「なるほど、それとずっと言おうと思っていたんだが、俺が心の中で思った事を読み取るのは止めてくれ、読み取られたくないこともあるんだ」


「そうか、だが我とミノルはデュオだからこれはどうしようもないのだ」


「だが俺はセイの心の中を知ることが出来んぞ?」


「我は基本、心を無にしているからな、読みとるものが無ければ知ることはできん」


「何か不公平だな」


「ミノルも心を無にすれば、我に伝わらないぞ」


「そんなことが俺に出来るか!」


 まあいい、とにかく金の半分はドローン配送の支払口座に行け!


 おっと、金額欄がどんどん増えているぞ、いったいどれくらいの価値があるんだろう?


 無茶苦茶な設定だから、莫大な金額になるパターンと贋金(にせがね)で0てオチもありえるだろうな。だが出来れば夢の中くらいは酒池肉林してみたいな、下戸だけど。


 190億4578万9000


「残った金はアイテムボックスに納めるとイメージして呪文にしてくれ」


「分かった、アイテムボックス」


 190億4578万9000

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