第十三話 理恵と流星

流星side

美海が、理恵と図書室に入っていくのを見て思わずついて来たけど...。

そっと、廊下の掃除ロッカー陰に身を潜める。


そういえば、同じクラスだったことあるのか…あの二人。


しばらく、二人の会話を聞いていると、美海が図書室を飛び出していった。


「水川さん…」


驚きを含んだ声が、図書室から聞こえてきた。


俺はそっと立ち去ろうと、立ち上がった。


「待って」


びくっとして肩を跳ね上がらせると、理恵が俺の手をつかんだ。


「さっきの会話、聞いてたでしょ」


攻めるふうでもなく、理恵は低い声で言った。


「誤魔化さなくていいよ、私のところから、芹沢君がいるの見えてたから」


クスッと笑った理恵は、ぱっとつかんでいた腕を離した。

急に改まったっ空気が理恵をまとった。


「私さ、まだ…、芹沢君のこと、好きなんだ」


どくんと、心臓が跳ねた。


「私はまた、芹沢君と…やり直したい」


顔を真っ赤にした理恵に、俺は前のような感情を抱くことはできなかった。


「ごめん…」


理恵の目に目にみるみるうちに涙がたまっていく。


「ごめん、君のことはもう、そういうふうには見れない。でも、ありがとう」


涙を流しながら理恵は涙を浮かべた。


「水川さんのことが好きなの?」


「うん、そうだよ」


「ならさ…ちゃんとそれ、伝えてあげなよ」


理恵は静かに、鞄を持って図書室を出て行った。


(ちゃんと伝える…か)


俺は握りしめた手を見つめた。

そして、覚悟を決めた。

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