【雑記】19時23分

「急な話で本当にごめんね、私としてもベストな物をそちらに提供したいんだ」浮かない顔をして、牧場の主人は言った。この間まで実験として八足牧場を経営したのだが、取引の契約を打ち切りたいと申し出たそうだ。

 外は暗くてよく見えない。応接室の周りには八足の女性が置物の如く飾られている。肋骨が僅かに浮揚するなら、生きているのだろう。

「失敗とはあの子達には言わないが、申し訳ないことをしてしまったよ」主人は変わらず気落ちする。より多くの人から其方の肉は安く多く食べられると定評があった。そう言うと少し気が晴れたか、主人から笑みが戻った。

「そういえばもう夕食だね、君は四足と二足、どちらが好きかな?」その気分ではなく、気紛れに八足の女性に目を遣る。その子は痩せていると、主人は苦笑した。

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