幸福論

渋谷のあるファミレス

鉄道部4人と灯子はテーブルを囲んでドリンクバーを飲んでいた。

「先生、私達に話って?」

「あなた達、多分あの男にも聞かれたと思うけど、鉄道に乗るには何が必要?」

「そりぁ、乗車券。突き詰めれば金…」

「そう、鉄道に乗るには1にも2にも金よ!」

「だったら…」

「でも、それは真っ当な手段で稼いだ場合よ!私、愚かだったわ。そんなこと知らないで道を踏み外して…」

灯子の回想。

灯子は鉄道で乗り歩くための手段として10代の頃は様々な犯罪に手を染めていたと言う。

パパ活、カツアゲ、特殊詐欺etc

(金に糸目はつけないわ、グランクラスでもスイートでもなんでもOKよ!)

非合法な手段で得た金は鉄道旅行と言う名の豪遊に費やされていた。

しかしある時、

「上野〜上野〜ご乗車ありがとうございます」

当時走行していた寝台特急カシオペアから灯子が上野駅のホームに降り立った瞬間、何者かに手を抑えられた。

「警視庁です!生城山灯子さんですね?あなたに逮捕状が出ています」

灯子はとうとう引導を渡された。

この知らせは灯子の犯罪仲間にも知れ渡ったが、

「あいつは得た金を独り占めして自分の趣味にばっか使いやがる。俺らは地元の後輩に奢って還元していると言うのに。後輩に金を使わねェ女に用は無ェ!見捨ててサツのガサ入れが及ぶ前にズラかるぞ!」

「へェ」

とを切り捨ててしまった。

その後は家庭裁判所に送られ、判決を受けた。

「判決、少年刑務所送致3年!」

灯子は少年刑務所に3年間送られる事になった。

少年刑務所の中で、寝台特急北斗星のラストランのニュースを少年刑務所内に配られた新聞で知り、ラストランに立ち会うこともできない悲しみに涙がこぼれた。

「フルートレインのラストランにも立ち会えないなんて鉄オタ不良少女も大変ね」

刑務官の非情な一言が飛び出る。

―3年後

出所した灯子は今は北斗星が来ない上野駅13番線ホームに19:03かつて北斗星が発車していた時間に缶紅茶を飲みながら佇んでいた。

「気が付いた時には普通の人が当たり前に持っていたものをたくさん失っていたわ…」

「……」

「まぁ私の事はどうでもいいけど、真っ当な稼業アルバイトならウチは原則許可しているわ。なんだったら私は学校に来ている案件のいくつかを紹介するから」

「は…はぁ…」

こうして一連の偽装結婚の騒動は幕を引いた。

偽装結婚で得た金130万円については鉄道部の資金の事情を汲み、黙認することとなった。

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くろがねっ!? 京城香龍 @nahan7

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