第7話 サル顔

 あるホテルのパーティ会場。今日は、俺が通っていた小中学校の合同同窓会。会場は広い。小中一貫校だったからか、顔なじみの連中がいる。……が、俺を見てもみんな目をキョトンとさせて誰が来たのかわかっていない。


「よぉ、お前村沢だろ?」


 そう声をかけるが、「お前、誰だっけ?」と返される始末。確かに大人になったら顔つきは変わるが、一番変わったのは俺の身長が随分伸びたこと。


「俺だよ、増山要ますやまかなめ


 そう言うとみんな目を見開き一様に雄叫びのような声を挙げた。その雄叫びで、女性陣たちが俺の方に近く。みんな大人な女性へと変貌していた。その中に一人目を輝かせて近づく一人の女性。


「うわっカナブン大っきくなったね?わかる?私よ?財田優希さいだゆき


 一瞬戸惑いを見せた。あの小学生の頃、学級委員長を勤めていた頃のような男勝りな印象は全くなくなり、フリフリのスカートドレスだったからだ。「良ければ少し話さない?」と促され、俺は会場の外バルコニーへと財田優希を連れ出した。懐かしく話し込んでいると、後ろから声がかかる。振り向くと一瞬で俺の目が輝いた。


 うほお! この美人は、もっもしや!?


「わかる?私!金田朋美。見違えたわよ!増山要くんでしょ?」

「ああ、わかるんだ!ありがとう!そうだよ!」

「当たり前じゃない!私と中学の時仲良かったでしょう?」


 その金田の言葉の掛けように、金田に負けじと更に俺の話を引き出そうとする財田優希。何だこの展開は……。と不思議な気持ちになっていると、間を割るように、またもや聞き慣れた声。


「大きいくなったねぇ! カナブン!」スーツ姿の飯村佳子いいむらよしこと名乗るロングヘアの落ち着いた黒髪の美女だった。


 3人の女性に一気に囲まれたことにより、俺の鼓動は高鳴りの頂点に達した。この展開は一体何なんだ!神様は俺をちゃんと見てくれていたのか?一様にみんな背の高さを褒め称えて、俺に近づくこの女たち!何かが狂ってきたのか。それとも学生時代の復習再来か!?俺はまた恐怖のどん底に落とされるのではと、不安な心とは別に、鼻の下が10cm程伸びそうになっていた。


「こらこらっ! 伸びてる! サル顔してるぞ!」


 躊躇なくツッコミを入れるのは金田朋美だった。

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