第27話 お邪魔しました

「うぅん…ぁあ……?」


ふと目が覚めた。

あれ、ここはどこだっけ?

どうやら自分の部屋じゃないみたいだ。

ええと、たしか……

まだ寝ぼけている頭をなんとか覚醒させつつ、思い出す。

あぁ、そうだ。

たしかテストが終わって千堂さんの家に来て、それから部屋に……

それで、そこで寝ちゃったんだ。

どうにか今の状況を把握し、起き上がろうとして体をよじると、


「ひゃぅっ!」


という声が上から聞こえた。

……上?

不思議に思い上を向くと、そこには千堂さんの顔があった。


「うわっ!」


なんで千堂さんが⁉︎

僕の寝起きの脳がフルスピードで回り始めて大地を赤く染め上げた結果……


‘膝枕’


という結論を導き出した。

と同時に急いで起き上がる。


「せ、千堂さん、ごめん、大丈夫?重くなかった?」


「は、はい、大丈夫です!」


よりにもよって、なんで僕は寝るときにそこに倒れたのだろう?


「本当にごめんね……」


「ぜ、全然気にしなくていいですよ!私はいいですから!というかむしろこっちが……」


良かった……どうやら許してもらえたみたいだ。


「あぁ…そんな申し訳なくされるとこっちの罪悪感が……」


なにやら千堂さんが呟いているけど、何を言っているかは分からなかった。

はぁ……


申し訳なくてしゅんとなっていると


「そ、それじゃあ、こうしましょう!もう一度膝枕をします!」


「へ?」


「わ、私がいいと言ってるから大丈夫です!」


「え?」


ダメだ、何を言っているかさっぱりだ。

起きたばかりだからかな?


「いいですか、十宮くんはきっと、自分が知らない間にしてしまったことだから落ち込んでいるんです。それを今、私が大丈夫だと言ってからすれば大丈夫なんです!」


「な、なるほど」


千堂さんのよく分からない理論の勢いに押されて納得してしまう。


「さぁ、どうぞ!」


千堂さんが手を広げて待っている。

う〜ん、いいのかなぁ?これ。



「し、失礼します?」


結局、千堂さんの理論に従うことにする。


「つ、つまらないものですが……?」


千堂さんも何やらテンパっているみたいだ。


ゆっくりと横になり、そろ〜っと頭を乗せる。

なんか恥ずかしいな。

力を抜くと、頭が程よい柔らかさで包まれる。

あぁ、なんか気持ちいい。

油断するとまた眠ってしまいそうだ。

実際もう、うとうとしている。

ふと、頭を優しく撫でられるような感覚が。

あぁ、なんか安心するなぁ。

このままもう一度、眠りに落ちていって……




ガチャッ


「花音〜!いいかげんお昼済ませたら……あら?」


千堂母の一撃!


「お、お母さん⁉︎」


慌てる千堂さん。

千堂さんのお母さんの目の前には、遊びに来た友達(僕)に膝枕する娘(千堂さん)の姿が。


………これは。


「お邪魔だったみたいねぇ……どうぞごゆっくり〜♪」


「あ、こ、これは!」

急いで起き上がって何か言おうとするも……


ガチャッ


弁解の間も無く扉は閉じられた。

残された僕たち。

僕はもちろんすっかり目が覚めてしまった。

顔を見合わせる2人。


「ええと……」


「あの〜……」


………


「「お昼ごはんを!!」」


ほとんど同時だった。

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