第3話「ちょっと待った 何がしたいんだ」

vividの医務室。vivid本社はオフィスビルでありながらマテリシステム装着者の為に高度な医療設備も少しだけある。そんな部屋のベッド。

比呂哉は目を覚ました。

「お、起きたか?」

隣のベッドに座っていた呉崎が声をかけた。

「ぼ、僕は?」

「軽い脳しんとうだってさ。」

「そうですか、、、ヒーロー失格ですね。」

「ヒーローか。面接の時もそんなこと言ってたな。」


回想。vivid入社面接。比呂哉が言う。

「僕は、ヒーローになりたくて、この会社を志望しました。人間の自由と平和を守る、そんなヒーローに。」


再び医務室。呉崎が言う。

「ヒーローか。でも、マテリシステムはそんな崇高なものじゃないよ。」


一方その頃、マテリシステム行使部。坂間と野木と白井が荒らされた部屋を片付けている。

野木が言う。

「あの二人、一体なんなのでしょう?」

「知らないよ。でもなんで、プロセスゲートシステムを盗んだんだろう。それにウチのビルにあんなに容易く侵入できるとも思えない。」

坂間がそう答えると、白井が言った。

「プロセスゲートシステムってマテリシステムの三要素の一つですよね?」

「ああ。あの人が作り上げた凄い技術だよ。」

坂間が諦めたような顔をして呟いた。


どこか。行使部に侵入した二人と謎の男。その元へ誰かがやってくる。

謎の男が言う。

「来てくれると思ってましたよ。社長。」

「こんなもの、置かれたらな。」

誰かが手紙のようなものを持っている。


マテリシステム行使部。部のメンバーが全員集まっている。

呉崎「スレートに関しては一日一体と決まっているから、幸い今日はもう出ない。問題は、あの二人組と、その一人が変身したマテリシステムに酷似したもの。」

白井「どうしたらいいんですかね?」

呉崎「マテリシステムを強化する。これしか手はないだろうな。」

野木「でも、上が許しますかね?」

呉崎「許しても許さなくてもやるしかないだろ」

坂間「、、、もしかして、呉崎さん、犯人の目星ついてるんですか?」

呉崎「なんで?」

坂間「呉崎さんが結論を急ぐ時は、だいたいなんかある時ですから。」

比呂哉「そうなんですか?」

白井、野木も呉崎の顔を見る。

呉崎「、、、犯人は知らないが、侵入してきた奴らの一人が着ていた服に見覚えがある。あれは、マスクドの原型に似ている。」

白井「マスクドって確か」

坂間「マテリシステムを構築する三要素の一つ。元々は介護現場などでの使用を目的とした肉体強化スーツ。」

野木「じゃあ、あれはこの会社の内部の?」

坂間「いや、マスクドは元々想定されていた使用現場のこともあってあんな運動能力はない。それが出来るとしたら、彼しかいない。」

呉崎「日比野。」


どこか。侵入した二人の男と謎の男。

謎の男が誰かに言う。

「できましたよ。社長。」

「早いな。」

「ええまあ。資源と技術がありますから。」

「もう行くんですか?」

「ああ、躊躇はもうし尽くした。」


車。vividの社長が移動している。すると、車の前に男が。

「ちょっと君!どきなさい!危ないよ!」

運転手が声をかけるが男は聞く耳を持たない。運転手は仕方なく、外に出て男の元に行くと、殴られその場に倒れてしまった。

「社長さん、会いたかったよ。変身」

男がそう言うと男の着けていたベルトから赤い光が飛び出し、その光が男をメタリックな姿に変えた。


行使部。サイレンが鳴る。「社長を謎の男が襲っています!」

「会議は後だ!木沢!白井!現場に急行!坂間は周囲に避難連絡、野木はサポート!」

「了解!」


比呂哉が駆けつけると社長が吹き飛ばされてくる。比呂哉が社長を受け止める。

「社長!大丈夫ですか!白井、社長を!」

白井が社長を避難させる。

「邪魔をするな」

謎の男が言う。

「この前とは、別?」

謎の男が比呂哉に襲いかかる。比呂哉が変身して立ち向かう。

「あなたは、誰だ!」

「答える義理はない。」

男は比呂哉のパンチを避けると、比呂哉にキックを食らわせた。すると、その脚は触手のように伸び始めた。

「何?」

その触手は比呂哉を地面に投げつけた。


行使部で戦いをモニターで見ている呉崎。

「あれは!やっぱりあいつか。比呂哉!一時撤退だ!」

「でも、ここで引いたら!」

「動機は分からんが、恐らく奴の目的は社長だ!破壊活動が目的なら、とっくにやっているはず!」

「でも!」

「大丈夫。これを使え。」

比呂哉と呉崎の通信に誰かが入ってくる。

「これを使え。」

比呂哉の前に、小さいドアのようなものが差し出される。

「プロセスゲートだ。ドライバーに差し替えろ。」

「次宮!なんでこんなところに!」

「呉崎だな?いいから俺の言うことを聞け。」

比呂哉が小さなドア、プロセスゲートを受け取り、ドライバーに差し替えた。

「やめろ比呂哉!」

比呂哉のベルト、マテリドライバーから音声が。

「マテリ!プロセス・トゥ・マグネット!」そして、エイトビートドラムが流れる。

比呂哉の身体はメタリックで青と赤のラインが入った姿になった。

「これは?」

「これはマテリプロセスマグネ。」

「でもあれは身体の一部だけの強化だったはず!」

「あれはプロトタイプだ。」

「プロトタイプ?」

「こんな話してる暇なんかないぞ。来るぞ!」

社長を連れて逃げている白井の元に触手が伸びてくる。するとそこに比呂哉が飛んでくる。

「これは?」

次宮が答える。

「磁石の反発を利用した高速移動だ。リニアモーターカーと同じ原理だな。」

比呂哉がキックを放ち、謎の男を吹っ飛ばす

「こんなところで邪魔されるわけには!」

「今だマテリ!プロセスゲートを裏返しにしてもう一度差せ!」

比呂哉が言われたとおりにすると、比呂哉の身体が光り、そこからビームのようなものが飛び出し、謎の男に命中した。

「マテリ!足を前に出せ!」

「何をするつもりなんですか?多分彼は人間ですよ?」

「迷ってる時間はない!足を出せ!奴のベルトなら、気絶程度だ。」

しかし比呂哉は迷っている。

すると、謎の男の前にマテリシステムと酷似したものが現れる。そして、それは謎の男を連れ、去った。


変身解除した比呂哉。次宮が比呂哉に言う。

「なぜ俺の言う通りにしなかった?」

「あなたは、誰なんですか?」

「木沢、そいつを連れて行使部に戻ってこい。」

「部長!この人は一体?」

「次宮弘治、プロセスゲートシステムの開発者だ。」


どこか、謎の男が変身を解除する。

「あなたは会社に戻らなくていいんですか?社長、いや株式会社vivid、技術開発部長。」




次回予告


vivid代表取締役社長、金野史登。入社以来、その類まれな行動力で会社に様々な改革を行い、10年前に社長に就任。既婚、二人の娘あり。昔は愛妻弁当が昼食だったが今は社食。


次回「飛び込むんだ 君は誰だ」

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