終章――禍中の青年期

0話――キッカケ



「ねぇ、アリアちゃん」


「ん? どしたの、エレナちゃん」


「エレナね、お兄ちゃんのことが好きなんだ」


「うんっ分かるよ? だってウィルかっこいいもんね」


「うん、そう、すごくかっこいいし、やさしいよね。だからエレナね、やっぱりお兄ちゃんと結婚したいなっ、て思うのっ!」


「……えっ? だって、あれ? ウィルは……」


「うん……この前、お兄ちゃんにね、エレナとは結婚したくないって言われちゃった。……でもね、それはお兄ちゃんがエレナのことを嫌いっていうわけじゃないんだって。えへへ、お兄ちゃん、エレナこと好きだって言ってた。好きだって。それでね、お兄ちゃんはエレナがエレナのやりたいようにやるのが一番嬉しいって言ってた」


「……エレナちゃん?」


「エレナはまだ小さいから、よく分かってないことも多いから。だからね、色々、お母さんとか、村のおばさんとかに聞いてみたの。それでね、エレナ分かったんだ。結婚ってフクザツなものだけど、好きな人がいるんだったら、その人と結婚するのが、やっぱり一番の幸せで、良いことなんだってっ。……お兄ちゃんは、、エレナと、結婚したくない、って言ってたけど、ね? ……たぶん、多分きっとそれはケッコンのこととか、なにも分かんないエレナのために言ってくれたことだと思うの、。、だってお兄ちゃんやさしいから……っ」


「エレナちゃん……」


「なに? アリアちゃんっ」


「残念だけど、ウィルがエレナちゃんと結婚することは、ないと思うの」


「……なんで? お兄ちゃん、エレナのこと好きって言ってたよ?」


「うん、でもねエレナちゃん、好きって色んな種類があってね、ソレが全部結婚したいって意味じゃないんだよ?」


「……それはお兄ちゃんも言ってけど、でもっ」


「あとウィルはね、あたしのことも好きって言ってたんだ」


「……エレナのことも好きって言ってたもん。絶対に嫌いにならないって、、、だからお兄ちゃんが好きなのはエレナなんだよ?」


「……でも、エレナちゃんはウィルとちゅーとかしたりしたことはないでしょ?」


「……あるよ」


「え?」


「この前、おでこにしてもらったもん」


「おでこ……。ふぅ、……なんだ、、ふふ」


「アリアちゃん、……なんで笑ってるの?」


「ううん、何でもない。あっ、でもね、あたしはウィルとキスしたことあるんだよ?――――」

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