フェイル10 赤坂王国
数日後、94階の執務室にてセレスらと香川組の会議が始まる。会議メンバーには、セレスら8人と香川、若頭の永山、若頭補佐、そしてリモートで出席しているセレス達の両親も加わる。
「初めまして! ご両親。香川と言います」
『初めまして、うちの娘達をよろしくお願いしますよ?』
「もちろんですわ! ライラとシェリーは、若々しくて知性と美貌と理性もある娘さん達と仕事できるなんて光栄ですわ。姉さんババアと違って」
「このやろうぉぉぉ!」
セレスとレベッカとミクリオは、香川を殴ろうとするが、ルカ、シング、イクスに止められる。
「で? その人が、香川君の若頭?」
「そうや。自己紹介せい」
「はい。俺は、香川組若頭の永山と申します」
「お前が、汚らわしい手でハッキングした永山ですか? 今回の件で目を瞑ることを感謝しろ」
「ババアのアンタに言われても、なんとも無いね」
セレスは、殺そうとしたがグッとこらえた。
「で? 捕らえた警察さんはどこや?」
「今、牢屋はいます。騎士団員によって詳しく話してくれましてね。どうやら、赤坂との繋がりがあるみたいですね」
「そうか。詳しく聞かせろ」
「貴方、準備を」
「はい」
セレスは、騎士団員を呼び出し、ホワイトボードを用意し幾つかの写真を貼り、マーカーで書きながら説明することに
「説明しなさい」
「はい。奴の噂の続きでは、赤坂の後輩かつ後任とされた日本銀行の総裁である千賀とも関わりがあるらしいです。千賀が神田の私兵であり、赤坂が就任した10年前に創設された警視庁特別警護達を使って強盗を働き、赤坂に資金源を提供しているらしいです」
「で? 裏どりは取れたの?」
「はい。調べた結果、この噂は本当みたいです。詳しいルートなどは分かりませんが」
「そうですか」
「でも、君? なんで、赤坂君は資金を貰ってるの? 総理大臣のほうが良いのでは?」
「総理大臣は、議員の中で選ばれるものや。確かに、国のリーダーとして力はあるが、国会議員の力も無視できへんから、予算は上手いこと使えないからや。それに比べて東京都知事は、東京都民から選ばれる存在のうえにヨーロッパの1国の予算を扱える。それにな、東京都議員の力は、そこまででも弱くないけど、国民の人気を考慮して自由気ままに口出し出来ないやからな」
「つまり、人気を利用して裏で資金を貰うことが出来ることか」
騎士団員は、続けて赤坂の説明する。
「それだけでは、ありません。奴は、偽札も作っています。造幣局で秘密裏に製造している工場があるらしいです。恐らく、保険代わりと足りなくなった時の継ぎ足しでしょう」
「まるで、赤坂王国だな。よほど、金と権力に執着していることが分かる」
『それに、いずれかは近しい人を総理大臣するかもしれない。たとえ、非難されても、国民の人気と奴らを黙らせる賄賂を渡せば、何も文句が無いからな』
「それに、赤坂は阿修羅会の会長である吉井を使って、お前らと龍神会を壊滅させようと千楽町を攻めるやろう。赤坂は、どうせ用済みで吉井を殺して、「ヤクザを壊滅させたヒーロー」として絶対的な支持率を得て万々歳やな」
「愚かな。そんな如きで、成り上がろうとは甘すぎますね。我々、フェイル薔薇騎士団が教えなければなりませんね」
セレスが赤坂への見下しの言葉を発したあと、永山が今後について尋ねる。
「で? どう対処する? いきなり赤坂のところへ行くわけではないだろう?」
「もちろんです。とりあえずは、あの加藤の仲間は何処かにいるはずです。そいつらを見つけようと思います。ライラ、見当はついてますか?」
「はい。加藤が提出した住所は偽物で分かってます。アジトは、この千楽町のテンプル通りだと思われます。あそこの通りは、見通しが悪いゆえに隠れ場所は最適です」
「確かに、あそこなら目立たないし会議するなら最適ですね。ライラ様、僕とミクリオ兄さんに任せてくれませんか?」
「えぇー!? ずるいよ! イクス兄さん!」
「そうだよ! 僕とルカ兄ちゃんでやらせて!」
「ルカ、シング。今回は、龍神会の動きを見てなさい。その代わりにたっぷり暴れせてやります」
ルカとシングは、頬を膨らまして仕方なく承諾した。
「それで、ライラ。あたしらは?」
「そうですね。とりあえず香川組の皆さんと護衛してもらいながら、今村一家のシマで偵察でもしましょう。香川さん、彼らの居場所は?」
「裏千楽北大通りに面している今村興業というビルですわ。それに、向かい側の千楽ヒルズでよく若衆が話しております」
「そうですか。分かりました」
『娘達、それとミクリオ君達。くれぐれも気をつけろ。そろそろ、仕事に戻るから』
「分かったわ。父さん」
両親は、通信を切った。
「ところで、あの警察さんは、どないするんや?」
「そうですね。その件関しては、彼を洗礼を受けて貰います。シング、頼みましたよ?」
「かしこまりました。セレス様」
「ほぉ? 面白いことするんやな! はははは!」
そして、会議が終わった後、ルカとシングは、牢屋にいる加藤の元へ向かう。
「ごめん? 待たせた?」
「待つわけないだろう! この化け物シング!」
加藤の挑発の言葉にルカが顔面キックを繰り出し、ドスの聞いた声でこう言った。
「立場分かってるか? 君は捕虜の身だよ? それを分かってくれないと困るぞ?」
「くっ!」
「それにさ、加藤。君には、このシングの騎士として働いてもらうよ」
「騎士だと!? 誰が、あんたみたいに死んでも嫌だ!」
シングは、嫌がる加藤の耳に囁く。
「大丈夫だよ。君は、生まれ変わるんだから」
その時、シングが加藤の腹を掴んだ!その左手から黄色の液体があふれ出し、加藤を包もうとする。
「嫌だぁぁ! 仲間になりたくないぃぃぃぃぃ!」
絶望の表情で抵抗する加藤を見て、狂気に満ちた笑いをする2人。
「あははは! 良いね! 最高だよ!」
「さぁ!? 受け入れろ! フェイルの騎士としてぇ! あははは!」
加藤の全身に包み込む2秒前の加藤の表情は、死人のそのものになっていた。
そして、この世から加藤は消え、新たなフェイルの騎士が1人生まれた。
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