SOL.10:我らコマンドワルキューレ!
「単子レールガン応戦!!」
「単子レールガンCIWS、左舷全機照準!
斉射!!」
マーシアの操作で、ガラティーン左舷側の本来はミサイル迎撃用の武器が火を噴く。
対空砲でもあるそれを、敵の新型───キャバリエは華麗に避けて行き、一気に左舷側に近づく。
「射程より内側に!?」
「まずい……!!」
外部カメラに映し出されたキャバリエが手をかざすと、背部から飛び出したドローンがシースルーウェポンを向ける。
そして…………
バイザーに隠されたセンサーが解放。
目標───その無駄にカッコいい姿をロックオン。
「火星へようこそ、クソッタレ!」
バシュゥゥゥゥゥッッッ!!!
放たれる一筋の光。
貫かれるキャバリエ、そして爆散!
「───ったくよぉ、みんな盛り上がってるのはいいけどな、」
格納庫から一歩踏み出す、重厚な陸戦機。
両腕で保持する長大な『シースルーエンチャントランチャー』、そして頭部の巨大なセンサーユニットを、重装甲なバイザーで隠すそれは、
「誰かさんを忘れちゃいませんかねぇ!?!」
ヴェロニカの操る、ダンデライオンだ。
『やった!直衛に残してて正解!!』
「だろ艦長!!やるときはやる女さ!!」
はっはー、と笑うヴェロニカ。
だが、直後に目の前の海が爆ぜ、再びあの顔がやってくる。
「げ!?あのやろ盾を!!」
見ると、シールドが貫かれ片腕が千切れかけている。
シースルーウェポンのエネルギーを弾丸にコーティングさせて打ち出すある意味最強の貫通力を誇るダンデライオンの武器を、これで防いだというわけだ。
「じゃこいつも食らいやがれ!!」
なのでヴェロニカは即座に両肩のミサイルポッドを展開して全弾叩き込む。
至近距離だ。避けられない。
だがなんと、展開したドローンのシースルーウェポンによって全てを撃ち落とす。
「そう来るかよ!?」
驚くヴェロニカに、無慈悲な銃口を向けるキャバリエ。
「────でもやっぱお前、
その背後に迫る、影一つ。
『───油断大敵でござるー』
気の抜けた声からは想像できない信じられない高速の動き。
『
『そして持ってけ、シュリケンスマッシャー!!』
まるで敵がドローンで反撃すると見越して、左腕の武装を起動。
シースルーウェポンのエネルギーを、名前通り手裏剣型の形にし、放つ。
空中を舞う十字のエネルギー刃は、次々とドローンを切り裂き、爆発させる。
『ほい、終わり!!』
ボン、とブースターを蒸して突撃し、ニンジャブレードでその胴を細切れにする。
「なんすか中尉〜、強いじゃないっすか!」
『レンジャー訓練で、初心者から叩き上げられたんでござりまするよ〜……嫌な覚え方でごぜぇます』
ともあれ、キャバリエ一機撃破。
ガラティーンの危機が去った。
***
ワイルドボア二機と交戦中だったキャバリエは、辺りを見回すが敵を発見できないでいた。
そして、クルリと振り向いた瞬間、
ザバァッ!!!
「ネイビィィィィィィィィィ!!!!!」
突如、海を文字通り割って出てきたジャネット機の奇襲により、その脚と左半身を切り裂かれる。
「SEALsと名乗る者が海を使わずして、何するものぞ!!」
再びサムライソードを振り上げたワイルドボアへ、まだ生き残っているドローンを向ける。
「そしてっ!!」
ふ、とコックピットで笑うジャネットは、
敵の位置の水面下では、左腕だけ水から出し、シースルーヴァルカンを構えるシャルロッテ機がいた。
「この距離ならバリアは張れませんわね♪」
トリガーを引くシャルロッテ。
断続的な発砲音と共に、敵を真下から貫くシースルーウェポンの光の数々。
やがて、蜂の巣になったキャバリエの本体と、指揮系統を失ったドローンたちが落ちる。
「やはり、SPACE SEALsに入らないか?」
「素行に自信ありませんので」
そして、二機のワイルドボアは、人型兵器らしく勝利のハイタッチをする。
***
「うわぁぁぁぁぁ……ってあれ!?」
真正面からやってきた敵機にシースルーアサルトライフルを放つ萌愛。
その弾は吸い込まれるように敵の頭を見事撃ち抜き、一瞬で撃墜したのだ。
「撃ち落としちゃった!?」
『ナイスよスルーズ2!!!当てるの上手いじゃない!?』
『グッジョブ。そしていよいよ私の出番』
その小さな身体に所狭しと爆走した百々目鬼が、急降下を始める。
目標は敵空母。シュバルツの機動兵器の母艦。
『対空砲は破壊されているか。
心苦しいが、半壊ぐらいにはなってもらう』
投下される、大量の爆弾。
同じく放たれる、右腕のシースガトリングキャノン。
まず、光の雨がその巨体を横切るよう斉射され、ややあって大量の爆弾が降り注ぐ。
ズドドドドドドドドドォォンッッッ!!!!
爆煙をあげ、中が見えるほどの大穴が開く。
『爆撃成功。中もぐちゃぐちゃだろう。
これで今より敵機が増えることも敵の帰還も不可能』
言葉通り、まず戦略的な勝利が確定する。
***
その様子を見たキャバリエが一機、驚いたようにそちらを見る。
『よそ見なんて余裕じゃないのぉ!!!』
そこへジョアンナの砲戦型スターゴーストのシースルーバズーカの太い光が襲いかかる。
キャバリエの構えた盾から発生する対シースルーウェポン用Eシールド。
前に構えたそれで必死に耐える中、ザパァ、と背後の水が爆ぜ現れる影。
『はァァァァァァァァァァッ!!!!』
ヴァリアブルスライサー、近接モードが振り下ろされ、盾を腕から引き剥がす。
迎撃の為近接武装を振るう敵へ、素早く武器を射撃形態に変えたフェリシア。
『頂きました!!』
バシュゥゥゥゥゥ!!
放たれたシースルーウェポンの光、
しかし、それを右腕と武器を犠牲にして防いだ敵機から、ドローンの銃口が向けられる。
『しまっ!?』
とっさに展開したEシールド。
シースルーウェポンの雨の中を、必死に耐えるフェリシア機。
『ぐぅぅぅぅぅ……!?』
『フェリシアァーっ!?』
『こんにゃろぉぉぉ!!!フェリシアちゃんを離せぇぇぇぇぇぇ!!!!』
瞬間、真横からライフルを連射してやってくる志津のブライトウィング。
『オルトリンデ4、ダメぇ!?』
そちらへ目標を変え、ドローンのいくつかが照準を合わせブライトウィングを狙う。
『うわっ!?』
Eシールドを持たないブライトウィングは、ライフルを撃ち抜かれてしまう。
『『志津お姉ちゃん!?』』
『こ……
根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!』
殺到するシースルーウェポンの光、
その時、ブライトウィングは前傾姿勢になり、両腕を前に構えてゆらゆら動き始める。
なんと────シースルーウェポンの雨を最小の動きでステップを踏むように避け、一気に距離を詰めてくる。
『『えぇ!?』』
『よくもやってくれたなこんにゃろぉぉぉぉぉっっ!!!!!』
ほぼ懐に潜り込む志津機。
その左腕に備えられたHEATランチャーを、左腕ごと胴体に叩き込む。
バァン!!!
衝撃。
左ストレートと共に放たれたHEATランチャーが、キャバリエの胴体を穿つ。
衝撃で砕け散った左腕を抜くブライトウィングの目の前で、ズルリ、とキャバリエの体が力なく海中に没する。
『…………撃破しちゃった……!』
『すごーい、オルトリンデ4!!』
『共同撃破だよ、トドメはもちろんオルトリンデ4!!』
やったー、とスターゴーストで器用に喜びを表す二人に、志津は苦笑いと共に力が抜けそうになっていた。
ともあれ、これで三機撃破。
***
パシュウ!!パシュウ!!
降り注ぐシースルーウェポンの雨。
凄まじい機動でそれらを避ける白い機体は、冷静にそれの元となるドローンを撃ち落とす。
「コイツの攻略法……分かった!」
ルルは、一機ずつ、一機ずつ、ドローンを潰していく
堪らず、敵機のキャバリエは剣型シースルーウェポンで攻撃を放つ。
避けた拍子に海面に当たった影響で水煙が発生し、その中からブライトウィングのライフルが現れる。
キャバリエの振るう剣の一閃。
────切ったのは、ライフルのみ。
間髪入れず背後へ回ったルルのブライトウィングが、SEブレードを振り下ろす。
両断され吹き飛ぶキャバリエの上半身。
力なく落ちていくドローンを見て、ようやく安堵のため息をつくルル。
「撃破……!」
こうして、全ての新型を落とした502の面々だった。
***
「敵機動兵器群、壊滅!」
「敵空母も沈黙しました!」
ガラティーンのCICにもたらされた知らせに、ふぅ、という安堵が漏れる。
「ひとまずね、艦長?」
「ええ…………とりあえず、出せる水兵に連絡して、
空母を拿捕して曳航しちゃいましょうか」
「了解。
出せる人員に連絡!
あの空母を拿捕する!」
了解、という声に続いてオペレーター3人が支持を飛ばす。
すぐに屈強な水兵たちが空母へボートで向かい、空母を拿捕するだろう。
「502にも、護衛をお願いしましょう」
吹雪の指示は、すぐに通信に乗せられた。
***
ボートは穴の空いた空母へと向かう。
ブライトウィング一機、スターゴースト二機、ワイルドボア二機が見守る中、空母へと武装した水兵たちがやってくる。
穴の部分へ向かえるようロープ梯子を垂らすルルのブライトウィングにより、水兵たちは登り、中へ入って行く。
「全員入った。
今回は、ピコちゃん以外いるかな……?」
『大尉、ピコちゃん、って?』
「あ……ジョアンナちゃん達は見たことないっけ」
『あー、大尉とジョアンナちゃーん!
こっち手伝ってー!』
『曳航用ロープを装着してくれ!』
そう言われてガラティーンにつながれた大きなロープが渡され、二人はマニピュレーターを器用に動かして先端の磁石ユニットを外壁につける。
と、
『ヘイ!『コマンドワルキューレ』!!ちょっとコイツらをガラティーンに送ってくれ!!』
そんな通信を聞き、中へ視線を向けるルルのブライトウィング。
「コマンド……何?」
『あんたらのコールサイン、全部北欧神話の戦乙女だろ!
かっこいいじゃねーか、コマンドワルキューレ!』
『というわけで、コマンドワルキューレ!
コイツらを先に運んでくれ!』
と、網状の物で上を覆ったコンテナが渡される。
「軍隊のみんなってそういう名前付け大好きだよね……」
一番近くにいたルルがコンテナをマニピュレータで掴み、持ち上げる。
『大尉、それって……?』
「ピコピコちゃん」
そのコンテナの中には…………
「ピコ?」
「ピコピコ」
何やら、丸い自動掃除機に似た機械達がひしめいていた。
『わぁ……!!』
『何これ可愛い!』
「シュバルツの自動ロボットだと思うんだけど……毎回シュバルツ本体じゃなくってこの子達がいるの」
籠の中で小さな4つの脚をバタつかせ、尻尾のようなアンテナを動かすそれらは、まぁ意外と可愛い姿だった。
『こんな子達と戦って……?』
『ああ、敵機動兵器の中にもいるぞ』
と、いつの間にかやってきたジャネットのワイルドボアが三機に近づく。
『三機はそれを持って帰投してくれ!
推進剤も心もとないだろう?』
「助かる!
じゃあ、『コマンドワルキューレ』オルトリンデ隊、引き上げるよ!」
『『了解!!』』
そんな訳で三機は帰投する。
***
「守衛の水兵チームと、護衛のため飛んだスルーズ隊以外の帰投が完了しました」
「了解。じゃあガラティーンを再び目的地向かわせましょう!!」
そうして、大戦果をあげたガラティーンは目的の基地へ再び進め始めた。
曳航する敵空母と共に。
***
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