第16話 Mechanic

そうして僕は千葉のお店にお世話になるようになって、店のツーリングなどにも参加するようになった。今だったらわざわざ千葉の店を選ばなかったかも知れない。店までは外環自動車道、京葉自動車道、東金道路を経由して90分かかった。当時はトランポも持ってなかったし、車検等でバイクを預ける時は電車で帰らなければいけない。ある時、一度電車で帰ったら三時間かかった。だが、ショートツーリングだと思えば別に苦にならなかった。この時は僕もまだ若くて元気だった。


Lowrider の調子も良かったので、あまりメカ的にお世話になることはなく、ふらっと行って世間話をしたり飲み物を差し入れて油を売ったりしていた。


店には、店長とメカニックの二人がいて、二人とも仲良くさせてもらっていたが、僕はどちらかというとメカニックの人と気が合うようだった。店長はバイクはHarley、クルマはアメ車、音楽はStray Catsとアメリカ一辺倒の人だったが、元はドイツのスポーツカーのディーラーに勤めていたというメカニックは、けっこう好奇心旺盛だった。


彼はクルマはChevrolet Nova に乗っていたが、ある時、僕が当時乗っていたVWのPoloで店に行くと「ちょっと運転させてもらえませんか?」と言われた。彼はハンドルを握りながら、ふむふむと「ドイツ車も良いですねえ。」などと頷いた。次に店に行ったら同じドイツのOPEL Vitaに乗って来て、僕を驚かせたことがあった。


ちなみに僕も彼のChevrolet に試乗させてもらった。ハンドルの操作感があまりなくブレーキは効かなかったが、クルーザーの様な乗り心地の良さがあった。採光が良くて室内がすごく明るかったのを今でも覚えている。


僕が自分でレストアした1967 Truimph TR6 で行くとやはり試乗してみて

「同じツインでもHarley とは違った面白さがありますね。」と言って、しばらくすると500ccのTriumph T100R を買ったりしていた。


メカニックだけにクルマもバイクも目が利くし、自分で面倒を見れるから掘り出し物を安く買って乗り回せるのが、ちょっと羨ましかったな(笑)。


そんなふうに穏やかな時間を過ごしていたが、ある日、コーヒーを飲みながら店長とメカニックの人と駄弁っていると思い出したように言われた。


「沙魚人さん、Knuckleheadに興味ありませんか?」

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