第2話復讐1(おとり捜査)

「よう。久し振りだな」

「ほんと、ほんと。よく来たな」

「さて、昔みたいに貧乏で可哀想な俺達に金貸してくれよ」

「そう、そう。何も寄こせと言ってるわけじゃない。貸してくれと言ってるだけだ」

「まあ貧乏な俺達だから、何時返せるかわからないけどよ」

「ひゃひゃひゃひゃひゃ」


 相変わらずの連中だった。

 同窓会を装って、人数を集めて恐喝している。

 反社会組織でも幹部をしているようで、着てる服も金がかかっているようだ。

 趣味は最悪だが。

 周りにいる連中も、俺がカモにされるのを面白がっている。

 中学時代に無視して苛め抜いてくれた女達だ。

 俺を暴行して金をせびっていた、鬼見猛と金崎卓と今でも繋がっているそうだ。

 麻薬中毒になって、売人をしていると聞いた。

 少年院に収監されて、ろくに中学に来ていなかったが、同級生を食い物にしている。


「嫌だね。金が欲しければちゃんと働けよ」

「何だと、こら」

「昔みたいにしめられたいのか」


 声が振るえそうになる。

 手足は震えている。

 自分でも情けないが、臆病な性根は五十を過ぎても変わらない。

 痛いのは嫌だが、一発は殴られないといけない。

 ここで痛いのを我慢すれば、中学時代の暴行と恐喝、いじめの時代を払拭出来るかもしれない。

 どうせ断れない依頼だが、少しでも自分の利益にもしたい。

 四十年以上自分の人生に悪影響を与えて時代を、これで忘れられるのなら、痛いのを我慢する事も出来る。


「嫌だと言ったら嫌だ。御前らに渡す金などない」

「何だとコラ」

「御前が宝くじを当てたのは分かっているんだよ」

「当選金七億円。全部持ってこいや」

「可愛い養子を貰ったんだって」

「全部持ってこないと、子供を外国に売り払うぞ」


 ここで演技して、女達の罪を少しでも重くしないと、殴られ甲斐がない。


「助けてくれ。山下さん、浦島さん、喜住さん。こいつらの仲間じゃないのなら、助けてくれ」

「「「「「クスクスクス」」」」」

「馬鹿じゃないの」

「何で私達があんたを助けないといけないのよ」

「嫌われ者のあんたを助けるよりは、上前を貰うわ」

「そうよ、そうよ」


 やったね。

 何カ所も仕込んでおいた盗撮器が、上手く撮影してくれているだろう。


「そんな事を言わずに、御願だ。助けてくれ」

「嫌よ、さっさと昔みたいに殴っちゃいなよ」

「そうよ。金を巻き上げたら、薬をちょうだいよね」

「そうだな。殴った方が早そうだ」

「顔は殴るなよ」

「分かっているよ。昔先公に見つからないように、腹を殴ったな」

「今は警察に職務質問されたら面倒だ」

「そんな事にはならないよ。車に乗せて直接家に乗り込む」

「銀行で通報されるかもしれん。七億だと引き出す時に不審がられるぞ」

「分かっているよ。おらよ」


 痛い。

 相変わらず殴り慣れてやがる。

 石みたいな一撃だ。

 もう来てくれ。

 一発で十分だろう。

 糞。

 暴力で人の尊厳を奪う事を喜んでやがる。

 ここで倒れたら、起き上がれないくらい蹴られる。

 昔からやることは変わっていない。


「動くな。公安だ」


 遅いんだよ。

 おとり捜査をするなら、直ぐに来いよ。

 

「私達は関係ないわよ」

「そうよ、そうよ。同窓会に来ていただけよ」

「御前達の行動は、あの男が全部撮影している。言い逃れなど出来んぞ」

「何だと。この野郎」

「うるせぇ、鬼見、金崎。死ぬまでム所に入ってろ」

「何だとコラ」

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