11/9ポツンと「世界でたったひとり」

「生まれ変わったら何になりたい?」

 戯れに聞いたその質問に、彼女はポツリと「草」と答えた。

「なんで草?」

「草ってその場から動かないでずっとそこにいるじゃない。それがなんとなくいいなって」

 よくわからない。ただ動きたくないというわけではなさそうだし。

「植物ならなんでもいいの?」

「いや、その辺の草がいいの」

 今の彼女はその辺の草どころか、大輪の花を咲かせる白い薔薇のようなのに。誰にも顧みられない草になりたいと思うくらい彼女は人の注目を集める存在であることに疲れているんだろうか。

「なんか、世界が滅びて誰もいなくなって、綺麗な花も全て枯れてしまっても、その辺の草は生き残ってポツンとそこにいるんじゃないかなと思って」

「まあ、生命力はありそうだね。雑草って」

「それに草は折れたりしないし。結構強いんじゃないかと思って」

 そうか。彼女は強くなりたいのだ。少しの風くらいでは折れなくて、世界でたった一人になっても立っていられるような強さを求めている。それは孤独ではなく孤高と言うのだろう。

「……だったら私はその辺の石かな」

 強くなりたい彼女が私を求めているとは思えないけれど、でも私は世界が滅びてしまっても彼女を一人にしたくないのだ。

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